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超売れっ子美容師とクラウドCRMについて語り合った話

みなさん、「面貸し」って知ってますか?
今、自分の所属店舗を持たないフリーランスの美容師が増えていて、その人たちのために店舗が時間単位でお店の設備(カット台やシャンプー台や備品・消耗品など)を貸すことを言うそうで、都内では面貸し専用のサロンもあるそうです。
今回は、そんなフリーランスの超売れっ子美容師とクラウドCRMの話です。

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こんにちは。
ベンチャー、スタートアップ、中小企業専門に、ZOHOやSalesforceの運用支援をしている虹雲ワークスです。

この仕事をしていると、本当にさまざまな業種業態の方からクラウドCRMの活用について相談をお受けします。
世の中には、こんなにもたくさんのビジネスと、それぞれの顧客とのつながり方があるんだな、と仕事を超えた驚きや尊さを感じることもしばしばです。
そんな経験を、システム開発技術の話ではなく、ストーリーとして伝えられたらと思い、noteをはじめました。
(この話は実体験を基にしていますが、あくまでフィクションですのでそのつもりで読み物として楽しんでもらえたら幸いです。)

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美容師って髪を切ることが仕事じゃないんです。男性だったらちょっとイケてる自分、女性だったらちょっと可愛い、キレイな自分に会わせてあげることが仕事なんです。

私がいつもお願いしているフリーランスの美容師さんとの他愛もない会話から、クラウドCRMの話をすることになりました。

美容師の世界にも顧客カルテとか、会員情報アプリみたいなものはあるそうですが、基本的にはとてもアナログで、昔の「会員カード」と大差ないようです。来店回数、前回来店日、カルテの番号程度が書いてあって、カルテも住所とか電話番号などの基本情報以外は書き方や粒度も担当者ごとにバラバラ。
美容師の世界には(店に客が付くというより美容師に付くので)基本的にあまり「引き継ぐ」という概念が少ないこともあり、この程度でもなんとかなっているそうです。

でもさすが売れっ子は違います。
その美容師さんはフリーランスで、お店からカルテなどを強制されない分、自分で工夫して客一人ずつにノートを付けてSNSでの発信や来店時の会話と合わせて演出しているんだそう。

住所とか電話番号なんて極論どうでもいいんです。
むしろお客さんのツイッターとかインスタのアカウントの方が大事。
もちろん許可取った上でフォローして、いいねしたりしてます。
異性だとコメントとかは控えたりしますけど。

あと、毎回必ずBefore/Afterの写真は撮ります。
許可が取れれば自分のインスタで紹介させてもらったり、本人が自分のSNSに載せることも多いですよね。もちろんSNSに公開しなくてもちゃんと撮ってノートに保管してます。

必ず記録しているのは会話のキーワードとその人の価値観に関すること。
美味しいお店、ファッションやコスメの好み、よくいく街、好きなタレント、職種、生活スタイル、仕事や恋人の話は触れてほしいのかそうじゃないのか、自分のルックスの好き嫌い…

美容院にはもちろん髪を切りに来るんだけど、突き詰めていくと、新しい自分に会いに来てるんです。
インスタで見た可愛いモデルさん、自分がこんな風になりたいな、とか、人からこんな感じに見られたいな、みたいな。
だから、そこを丁寧に話をして、それをちゃんと受け止めること。
承認欲求と言うと言い過ぎかもしれないけど、前回こんなこと言ってたけどその後どう?とか、仕事の大変な話を聞いてあげたり、彼氏彼女に対する不満とかノロケとかもあります。
あともちろん特に女性は素敵なカフェとか教えてあげると喜びますし、コスメとかファッション褒めたりすると、やっぱり嬉しいんですよね。

自分が「売れっ子」だっていう自覚はないんですが、カット技術と同じくらい会話の心地よさとか、美容院に来てくれたことで「アガる」感じは演出してるつもりですし、ノートは宝物です。

さすがです。
アナログであれデジタルであれ、CRMの本質を突いている言葉でした。

つい私たちは「システム開発論」としてCRMを語りがちです。
やれリードがどうの、商談フェーズがどうの、要件定義は、PMは、データモデルは...

しかし、根本的に大切なのは、自分たちが顧客とどう付き合って、情報を蓄積したり利用したりすることによって、顧客にどんな価値を提供したいのかという純粋な思いの部分なんだなと改めて気づかされます。

そして、今の時代、企業主導でシステムを使わせるやり方だけでなく、個人レベルでもCRMを有効に活用して、自分の顧客とのつながりや価値を作っていくことをナチュラルにできる世代が出てきているんだな、とも感じます。

この美容師さんにお願いしてから毎回写真撮ってもらっていて、自分が少しずつ変わっていくのを定点観測みたいに見てもらっていて、話もだんだん価値観が合ってきた(合わせてもらってきた)感じがしてます。

あぁ、CRMで顧客体験がよくなるってこういうことなんだな、と改めて実感しながら、原宿の面貸しサロンに少し新しい自分に会いに行くのでした。



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