【千葉Makers】vol.7 千葉県君津市 猟師工房ランド
千葉で近年人気のスポット、濃溝の滝(亀岩の洞窟)から鴨川方面へ1キロほどの所に「ジビエ肉販売」「猪バーガー」と書かれた看板や「狩猟ビジネス学校」「きみつジビエ」などの、のぼりがひときわ目立つスポットが現れます。 その名も【猟師工房ランド】!!
千葉で新しい風をおこそうと、頑張っている人を特集する【千葉Makers】第7回は、猟師工房の原田代表にお話しを伺いました。
猟師工房ランドとは?
駐車場に車を止めて、緑色の建物に一歩足を踏み入れると
広々とした空間に、猟師に仕留められた獲物のトロフィー(動物の頭部の骨標本)や動物のはく製、角や骨の工芸品、毛皮、ジビエ肉販売など、猟師の世界観にあっという間に引き込まれます。
-す、すごい迫力ですね!
「そうですね!みなさん驚かれます(笑) 自然の恵みを頂く立場として、動物たちのすべてを無駄にしたくないという想いから様々な商品開発を行っています。
全国的にも食用としてあまり流通しないアライグマやハクビシン、キョンなども駆除するだけでなく、きちんとした処理をして食用にしたり、骨なども工芸品として加工して販売しているんですよ」
キョントロフィーと角の工芸品
-なるほど、他にもクラフト体験コーナーからペットフード、アート作品の材料になるようなものまで、アイデア満載な商品がありますね!
ところでこの建物は以前なにかの施設だったのですか?
「そうなんです、実はここは昭和63年に廃校になってしまった君津市立香木原(かぎはら)小学校の跡地で、30年間利用されていなかった体育館をリノベーションして今年の7月20日にオープンしました。
鳥獣被害対策を条件に君津市が活用事業者の公募を行っていた為、『新たな狩猟文化の発信拠点』というコンセプトで、複合的な体験が出来るスポットとして新たに蘇ったわけです。
オープンまでにはこの小学校の卒業生の方々もボランティアで手伝って頂き、中には涙を流して またここに灯がともる事を喜んでくださる方もいて、とても想いの詰まった場所になっています」
‐とても素敵なエピソードですね。
複合的な体験が出来るスポットというと、どの様な事が出来るのでしょうか?
「はい、ジビエバーベキュー場やアダルトソロキャンプ場、ドッグランなどが常設で体験できます。その他にもプロ猟師になりたい方向けの講義、小規模解体処理施設、一般のお客様向けのサマーキャンプイベント開催など狩猟文化に楽しみながら触れられるコミュニティの場としてお使い頂いているんですよ」
手ぶらでどなたでも楽しめるお洒落なバーベキューブース
店内の受付で本格ジビエやジビエソーセージなども注文できます♫
アダルトソロキャンプは、名前のごとくお一人様限定のキャンプスペース。(フィールドエリアとブッシュエリアが選べます)
狩猟犬は狩猟にかかせないパートナー。そこで人間と犬が共に楽しめる空間をという事で設けた広々ドッグラン♪
体育館裏には実際に猟で活躍している人懐こい狩猟犬がお出迎え🐶
おでかけの途中に立ち寄った方には施設内に手軽にジビエを楽しめるショップも併設されています。
鹿バーガー
猪バーガー
ジビエパテは低温調理でじっくりと味をしみ込ませているので冷めても固くならず美味しく頂けます。
噛み締めるとヘルシーなジビエ肉の特徴があって大満足の逸品! それぞれの味の違いをぜひおためしあれ♫
簡易食肉加工施設ユニット「かいたい君」。 保健所認可に対応しているので、衛生的に食肉加工が行えます。
取材当日も猟師さんが解体作業をされていました。
猟師工房が目指す未来
-『新たな狩猟文化の発信拠点』というコンセプトでこの施設を開設されたと伺いましたが、まさに全国的に見てもここにしかないオリジナルなスポットですね!
猟師工房さんは他にも猟師さんの為の協会を立ち上げたり、ジビエ肉の物流会社なども運営されていらっしゃいますが、どんな未来を創造したいとお考えなのですか?
「はい、皆さんもニュースなどで野生鳥獣の被害を見聞きする事が増えてきていると思いますが、千葉県も獣害による農作物の被害が過去最高額の4億円規模になっています。
実は千葉県では約3万頭が駆除されていますが、そのうちの2%程度(約600頭)しか利活用されていないという実態があります。
これをまず10%に引き上げようという自治体目標がありますが、この問題を継続的に実現する為には、健全な狩猟知識を持った人を増やし、安心安全に食材として流通できる仕組みを作り、職業として十分に生計を立てられる形にする事で担い手を増やす、といった一連の取り組みが必要だと考えています。」
-なるほど、そうした構想から様々な機能を構築されていっているのですね。
「はい、私自身狩猟に携わって10数年経ちますが、狩猟の現場で上記のような課題は全国的なもので、なかなか根本的な解決に至っていない現状を見続けてきました。
そこで、この6月にここ君津市に移住しまして、想いに賛同して頂ける自治体の方や、猟友会の皆さんとも連携をとりながら、おかげさまで少しづつ形になってきています。
いまでは全国から「君津モデル」として視察に来られる方も多くいらっしゃいます。」
-ジビエ肉の流通拡大にはどのように取り組まれていらっしゃるのですか?
「現在、ジビエ肉を扱う腕のあるシェフがいる飲食店さん80店舗とお取引させて頂いております。ジビエ肉はヘルシーで栄養価も豊富ですので、食品メーカーと共同して量産商品を開発したり、大型飲食チェーンでジビエを扱った丼メニューなど開発されるとジビエマーケットが拡大するだけでなく、製造過程で出るゴミもバイオエタノール燃料として余さず利活用できると考えています。
将来はアスリート向けのサプリや栄養補助食品としても活用するなど、食材としてのポテンシャルは非常に高いと感じています。」
-原田代表のお話は狩猟文化が産業に進化する可能性を感じます!
「千葉県には貝塚が多いですが、その遺跡からはたくさんの鹿や猪の骨が発掘されています。 そう考えると、現代の牛・豚・鶏の食肉にジビエ肉が加わる事も全く不思議ではないですよね。この食文化が復活する事で、食の多様性が豊かになりつつ地域の課題も解決できますので、その仕組づくりに真剣に取り組んでいます!
また、現在使えていない本校舎が使えるようになったら、農業大学校や林業大学校のように狩猟大学校を創設して、プロの職業猟師を輩出したいと考えています。その卒業生達が全国で課題解決出来るようになっていってくれたらとても嬉しいです。」
-最後に読者の方にお伝えしたい事はありますか?
「千葉に移住してきまして、海の幸はもちろんですが山の幸も本当に豊かな土地だなぁとつくづく感じています。四季折々にキノコや山菜が採れ、ジビエ肉も安心・安全にご提供していますので、是非両方を多くの皆様に楽しんで頂きたいと思います。 また、ここでしか体験できないイベントも盛りだくさんのスポットですので、房総にお出かけの際はお気軽にお立ち寄りください(笑)」
全国で深刻化している害獣被害問題に真正面から取り組みつつ、豊富なアイデアで着実に課題解決の仕組みを構築し続けている原田代表。
なにより猟師工房の皆さんがとても明るく、楽しみながら活動を行っている姿に感銘を受けました。
猟師工房ランドは壮大なビジョンの一角に過ぎないという事が今回の取材でよく分かりましたが、猟師文化に触れるには最高のスポットを千葉に創って頂いた事に感謝です!
房総におでかけの際は初心者から本格派まで唯一の体験を楽しめる猟師工房ランド。ぜひ訪れてみてはいかがですか?
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