はじめての自己紹介
羽生さくる文章教室の生徒さんには「自分について書いてみましょう」とお勧めしておきながら、わたし自身のことって、ほとんど書いたことがなかったな、といまさらながらに気づいた。
エッセイっていうのはお題があって書くものだという頭があったり、わたしの場合はとくに誰かに話を聞いて書くことが多かったから、発想自体がなかったように思う。
でも、わたしが生徒さんだったとしたら、自分について書きなさいといっている先生はいったいどんな人なのか、先に知りたくなるのではないだろうか。
ということで、これから少し、思いつくままに自分のことを書いてみよう。
まず身の上の話をすると、離婚して10年の一人暮らし、長男長女は成人してそれぞれ仕事を持っている。
父は15年前、母は8年前に見送った。
母の介護経験が4年ほどある。
行動範囲はきわめて狭く、自宅にいるか、もより駅周辺のカフェにいるか、たまにとなり街まで出かけるか。
それがとても楽しく、満足できている。
仕事は文章を書くこと、インタビューすること、文章教室で生徒さんと推敲をすること、編集や企画をすること。
表向きはそうなのだけれども、近年明らかになってきたことは、わたしはインタビューをしたり、教室で生徒さんの話を聞いたり推敲したりすることで、その人をキュアまたはケアしているらしいということだ。
インタビュー歴といったら40年以上になるが、わたしは自分が聞きたいことを聞くのではなくて、インタビュイーが話したいことを聞く。
もっと話してもらうためには質問もするけれども、わたしにとっては相槌のうちだ。
インタビュイーや生徒さんはそれが心地よく感じられるらしく、こんなに自分を肯定されたことは初めてだといってくれた人もいた。
肯定しようと意識して場に臨んでいるわけではない。
ただ、この人が話したいことはなんだろう、といつも考えている。
プライベートでも同じように人と接していて、ともだちはみんなよく話してくれる。
もちろん、わたしの話をよく聞いてくれるのも彼らだ。
わたしは文章を書くことより前に、言葉を選ぶことがなにより好きなのだと思ってきたけれども、人と人との間を結ぶ役割を持っているもののなかで、わたしがもっぱら遣ってきたのが言葉だったということなのだろう。
言葉について書きはじめるときりがなくなるので、きょうはこれくらいに。
つぎになにを書くかは、つぎのわたしに任せるとしよう。