
【読書】お人持ちの法則 八島哲郎
読書感「人の息づかい、体温を感じる本でした」
今日から二泊、札幌へ旅に出ます。といっても用事を足しに行くのですが、結婚後旅なんてしてないなあと思い。
旅に行くなら東北がいいと心に決めてます。
父の故郷岩手にかれこれ20年ほど行っていないので、行くなら岩手。「ヘラルボニー」に行きたい。
新しい故郷上川町の神社「大上川神社」に分祀された神様の故郷「太田神社」のある福島。
それから夫が若い頃過ごした塩竃のある、宮城。
そこにある丁度最近クラウドファンディングを支援した丸森町「いなか道の駅やしまや」も行ってみたいところに今加わっています。
「やしまや」は、130年の歴史を持つお店で、著者の八島哲郎さんは、4代目です。
表紙にどーんと笑顔が載っても何の嫌味もない、福の神のような笑顔です。
表紙にいる南三陸町のキャラクター「オクトパス君」には登米が故郷のお友達の里帰りに同行させていただいたときに会いました。
地震からたしか7年たち、
「3.11」の地震を題材にした物語の挿絵を
依頼されていた時期でした。
地震当時自身はOLで、札幌でも大きな揺れを感じてラジオで聞いたことのない数値のマグニチュードと震度を耳にして「おおごとではないのかこれ」と思いながら仕事をして、帰ってテレビをつけて青ざめた日でした。
札幌は大きな被害はなく、テレビの先の出来事がまるで嘘のように悲惨で目を覆いたくなりました。次の日に札幌の地下歩行空間が開通し、たくさんの買い物袋を持ってる若い女性をみながら、何とも言われぬ気持ちで落ち着かず町を徘徊をしていたという記憶が残ってます。
そんな自分が地震を、津波を描くことがおこがましく葛藤していました。何度も何度も動画で飲まれていく町を見ました。
作品づくりは終えたのですが、その気持ちの整理とその場所を見に行きたくてという気持ちを汲んでくれた友だちが里帰りに連れていってくれたのです。
その旅で南三陸町に行きました。綺麗すぎるほど綺麗になっていて、7年もたてば生々しい「爪痕」は見当たらないのですが、その「綺麗になりすぎていた」ことがまさに「爪痕」でした。かさ上げの工事でまっ更になっていたところに建て直した家。家族を波にさらわれた人もいたこたとと思います。
町があったはずだったところにまさに町を作っていて。それがとても印象的でした。
7年くらい後なので綺麗にはなっていたものの、全然復興は進んでいませんでした。
話がそれましたが、「オクトパス君」は商店街のお土産屋さんで会いました。sava缶が美味しかった思い出があります。また行きたいな。
オクトパス君は「復興」の象徴です。
「やしまや」について
「やしまや」もまた、地震の被害にあっていました。店はぐちゃぐちゃになるほどに揺れたそうです。そして、40年で10度も(!)の水害にあっています。
こちらではあまり報道されません。
主な被災地ばかりがピックアップされる
からです。
40年は丁度私の年齢と同じです。
この人生全体で水害に10回も合えば私なら逃げ出すかもしれません。地震だってやはり怖いです。札幌で経験しましたが、怖い。
しかし、今きっと生涯をここで過ごすだろう処に来て、ここを守るという気持ちが芽生えて、気持ちはわからなくもないなと思いました(こちらはほとんど災害のないところですが、強いて言えば水害。ダムに何かあれば町は水没すると言われています。)
こう書いたのですが、八島さんの著書からは「悲壮感」が全く感じられません。
「覚悟」って覚りと悟りって書くんだけど、逼迫した「覚悟」でなくて「さとり」と平仮名で書かれているかのようなゆるさ感なんです。
ここでいきると決めたら沢山覚悟してるはずなんだけど。
水害からもたくましい筍のように復活していくような、そんなまるで自然の一部ですとも言うように何度も立ち上がってきた姿が見えます。
というかこの表現もどうかと思うほど、飄々と、たんたんあっけらかんとしてます。
めちゃくちゃ大変だったろうに、
文中の「災害復興」を「イベント」と表現していたことが私はとても印象的でした。
時々笑ってしまうほど不謹慎なのですが、自虐的にも感じないしそれが何かそれでいいのかなと思わせる雰囲気があります。
ボランティアさんも義務や嫌々とかでやってるのではなく、「八島さんのためなら」とすぐに向かい、通れる道をアナウンスしたり、かき出した泥に大量のパンジー持ってきて花壇にして植えたりしてます。
(このシーンが何だかとても好きです)
このお節介は、まさにとても「昭和」らしくて泣けてきました。
様々なもののネーミングに滲み出る「昭和のおっさん」センスが飾り気なくて、好きです。随所に滲み出る人柄に嘘や繕いがなくて、真っ直ぐ生きてるんだなあと思いました。
文中に出てきた、「そこは故郷ではないけど嫁いできたからその町やら環境やらに振り回されるけど歯を食い縛って頑張る嫁」達が今の私の境遇に近いと言えば近いので(※ここまで大変ではありません)、ありがとうでないよ!ホントに!プンプンという感じもなくもなかったですが(笑)
「それでも、この人が好きだし!支えるし!貴方がこの町守るなら、私も守るし!」という文中にはない嫁たちの声を勝手に拾ってました。
水害のときに「責任とるから」と舅さんにいわれて、「いったい何の責任なんだか…」といっていた声が私にはとても残る言葉でした(笑)
奥さんたちご苦労様です!マジで。
「やし丸君」
今日家族にきてたアンケートを代筆してたのでホットなトピックだったのが「デマンドタクシー」で、
まさにこの導入に対してどう思うかということへのアンケートを書いてから出てきたのですが、
丸森町も「あし丸君」という「デマンドタクシー」を導入しています。足と、丸森の丸をとってのネーミングかと思います。
「やし丸君」とすかさず文字ってサービスにしてるのが、私めちゃくちゃ好きなんですが、
そのサービスには中々「郷に帰れない」けど親が住んでいる人への安否確認と「こんな晩御飯たべてましたよ」と家族にお知らせするなどほんと素敵なお節介を焼いていて、最高だなと思いました。
私も親二人故郷の施設に預けてましたが、お便りに親の姿があるとやはりほんっとに嬉しくて、母がご飯食べられなくなった今も、父が亡くなった今も、施設で夫婦仲良くご飯たべてる写真を切り抜いてノートに貼ってます。
私がそこにいてあげられなかった瞬間を、誰かが記録記憶してくれているのってね、本当にありがたいんです。
こういうことを自然と出来ることが昭和の人の作るコミュニティかもしれません。
プライバシーに縛られるんでなくて、人の幸せのために一歩踏み込むことに何のためらいもないこの気質です。
昭和の距離感ってちょっと嫌われがちだけど、煮すぎた煮物を喜んで分け合うような信頼感がとても懐かしいです。
編集 まきりかさん
この本を買おうと思ったのは、まきりかさんという編集を担当されたかたのご縁。
この人も面白い方で、出版社編集をしてますが、
ミュージカルの作曲脚本も書くし、元々はあの桃太郎◯鉄(伏せ字の意味w)の作曲をされてました。
知人のbarでたまたま居合わせたというだけのご縁(薄!)ですが、魅力的でこんな年の重ねかたをしたいと思わせる女性です。
彼女の企画で「まだ読んでない本の読書会」というのが面白そうで、参加したのがきっかけ。
読んでないけど、表紙だけコピーして何かの本に巻いて本みたいにして、架空読書会議をしたのです
「第四章の ◯頁、~~という文、これはこういう意味ですか?」「第二章の ~~という出来事、感動しました」と感想や質問をするのです。
その参加者の中にも本に出てくるような方々もいて、「ああ!あの時の話だ」と、何の前情報もないめっちゃアウェイな参加者の私は思いました。
ホームページとクラウドファンディングページをあわてて読んだものの、内容予習せてなさすぎて、パニックでしたが(笑)
生の八島さん(オンラインだけど)とお話しできたのが、私には誇らしい思い出にもなり、やはり会いに行きたいなと思う出来事でした。
とてもスタイリッシュでシャープかつ若くてエネルギッシュまちづくりをうちの町の若者達がしてくれてますが、
このゆるく、その人らしすぎるザ昭和のまちづくりもまた素敵だなと思いました。
町をつくるというテーマは何処に住んでいても耳にするテーマで私は構成員で特に音頭もとらずに過ごしていますが、改めて町とは?郷とは?と選択肢や視野を「ムリしなくていいよ」とくまのプーさんみたいなトーンで言ってもらえてるような、優しい気持ちになる本でした。