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正しいえんぴつの持ち方を、子どもたちに伝えるには

「ウチの子鉛筆の持ち方が悪いんです」と、気にされる親御さんは多くいらっしゃるように感じます。実際に正しく持てる子は少ないようです。
ネットで検索すると、正しく持てるのはたったの2割などという情報もありました。

「子どもたちのえんぴつの持ち方をこれまで観察・研究してきましたが、意外と多くの子どもたちが間違った持ち方をしています。だいたい40人クラスで32人くらいの子どもが、正しい持ち方ができていないという印象です。

神奈川県立保健福祉大学 リハビリテーション学科学科長。作業療法学専攻 教授

初めて鉛筆を持った時から、正しい持ち方を伝えられていたらいいですが、今のお母さんたちはお忙しいこともあって、なかなかそこまで目が行き届かないのが現状だと思います。学校でも、持ち方の指導にかけられる時間は少ないそうです。

お子さんがある程度文字が書けるようになってきてから、「持ち方がおかしいよ」と伝えたとしても、なかなか変えることは難しいと思います。

だれにでもいろいろな癖があって、本人がさほど気にしていなかったり、不便を感じていなければ、急に「正しく!」と言われても「やりにくい」以外のなにものでもないですね。大人も子どもも同じだと思います。

子どもからすると、
習字教室に通って、きれいに字を書こうと頑張っているのに、急にえんぴつの持ち方を変えなさい!といわれても、書きにくくなるし、うまく書けないので、「なんで持ち方を変えなければいけないのか?」とネガティブな感情が沸いたり、最悪の場合「書きたくない!」となってしまう事もあります。

子どもたちに、正しい持ち方とはどういう持ち方か?正しく持つとどうなるのか?正しく持たないとどうなるのか?を伝えて理解してもらって、実際、違いを感じてもらったら、持ち方が変わることがあります。
逆にいうと、そこを伝えないで「正しく持って」というだけでは正しく持てないのではないかと思います。

そこで今回は私が子どもたちに伝えていることを、ご紹介します。
おうちでもそのように声掛けをしてもらえると嬉しいです。


1、悪い持ち方の多い例


①人差し指に、力が入りすぎ反っている
②親指と人差し指の付け根にえんぴつを挟み込んでいる
③親指が人差し指にかぶさっている
④中指が鉛筆の上にのっている


2、正しい持ち方とそのアシスト


・余計な力がはいっていない
・鉛筆を持つ角度は、人差し指のつけねにのっかるように
・親指と人差し指は重ならない
ポイント ☛ 掌の中に空間ができるようにふんわり持つ

そうなるように持つには、

ひとさしゆびと、おやゆびでつまんで、おにいさんゆびはかくれんぼ!

・まず人差し指と親指でつまむ
・中指をそえる 合言葉は「なか指(おにいさんゆび)かくれんぼ!」

年中さんの女の子は、意識しないと正しくない持ち方になってしまうけれど、声掛けをするとなおります。このくらいの年齢であれば、まだ、「かくれんぼ」という言葉で、さほどの抵抗なく正しくなることがあります。

3、文字を楽しく書けるようになった頃の声掛け(小学校低学年頃)

字を書くことが、まだ絵をかくような感覚であるような未就学児さんには、えんぴつの正しい持ち方を楽しく伝えれば、うけいれてもらえる時期だなと感じます。すんなりいくなと感じることもあります。
これが、小学生1年生くらいになってくると、文字を「書ける」ことが楽しくなります。書くこと自体が楽しかったり、お手紙交換などで、文字でコミュニケーションをとれることが楽しくなってきます。そういう時に、正しい持ち方を優先させてしまって、「書きたい」という欲求を奪う事はしたくないなと考えています。
また、もう少し大きくなると、「上手に書きたい」という欲も出るのに、ここで正しい持ち方を急に優先させると、「正しく持つと書きにくい!」というような「正しい持ち方」にネガティブな反応をする子が増えると感じます。
年齢で一概に言えませんが、1、2年生くらいの頃は、持ち方の話をして抵抗?ネガティブな反応をする場合は、音楽のように「もちかた~ただしく~」と誰に対して言うという感じではなく、洗脳のように?ささやき続ける程度にしています。

4、ある程度話が分かるようになってきたら(小学校3年生~)

先日、小学校3年生の女の子(入会初月)と、中学一年生の女の子(入会3か月目)が硬筆の練習をしている時、あら、同じ持ち方だわと気が付きました。(悪い持ち方の③でした)
これはチャンスと思いました。
自分もそうですが、自分だけ注意されると、恥ずかしかったり、ショックをうけたりするので、一緒に直そう!と楽しい感じで伝えられるチャンス!と思いました。

・すごく手が疲れてない?
・丁寧に書いていて素晴らしいけど、もう少し早く書けると字が安定するよ

悩んでいそうな声掛けをすると、「そうなの!」と聞く態勢をとってくれます。そうなったら、正しく持とう!と思えるようなお話をします

5、正しくないとどうなるのか?

①人差し指に、力が入りすぎ反っている
 力が入りすぎているので、すぐ疲れる。手が痛くなる。字を書くのが遅くなる。
②親指と人差し指の付け根にえんぴつを挟み込んでいる
 手首でしか鉛筆の動きをコントロールできない。文字を書くのに不要な力がいる。疲れや、手が痛くなる原因になる。
③親指が人差し指にかぶさっている
 これもえんぴつが固定されてしまう。手のひらの中の空間がなくなるので、可動域が狭まる。
④中指が鉛筆の上にのっている
 えんぴつが立ってしまうので(机に対して鉛筆が垂直に近づく)可動域が狭まる。細かい表現がしずらくなる。

6、正しいとどうなるのか?

①手が痛くなりにくい
 余分な力が入らないので、手や肩がいたくなったりしない
②早く書ける
 早く書ける・・・という表現よりも、極端に遅くなることはない
 力が入りすぎる、可動域が狭いと不要な動きが必要となり時間がかかる
 字がばらばらとしてしまい全体の安定感がない
③線の質が良くなる のびやかになる
 きれいな線がひけるようになる☛きれいな字がかけるようになる

7、中一と小三の女の子に体験してもらいました

正しくないとどうなる?正しいとどうなる?の話をした後に、二人に、正しい持ち方で、一本の線を書いてもらいました。
縦と横と一本ずつ書いてもらいました。普段お稽古で書いているより少し大きめに書いてもらいました。
すると「書きやすい!」との事でした。

総じて、正しくない持ち方は、余計な力が入りすぎていて、可動域が狭くなり、手で文字が見えにくくなるので、姿勢が悪くなる。と感じています。(持ち方と姿勢はセット)

正しい持ち方で、余計な力を入れなければ、姿勢も正しくなり、疲れないので練習もできます。そうすれば上手になります。

一度ついた癖は直すのは時間がかかるかもしれません。
でも、持ち方が変わり、姿勢が変わると、ぐんと字が変わる時があると思います。
お家で、鉛筆の持ち方について、楽しくお話ができる時間がもてるといいですね。


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