【インターセックス】他人の性器を大画面で見るオランダの大学の授業
はよにちばんは!Nijiです。
タイトルにびっくりしましたか?でも嘘でも誇張でもありません。オランダのアムステルダム大学2年の時、本当に他人の性器を、講義室の大きなスクリーンで見るという授業で受けました。
"Intersectionalities: Race, Gender, and Sexuality"
大きな画面で、みんなで赤の他人の性器を見るという驚きの体験をしたのは、3年間のアムステルダム大学社会学部生活の中で、最も好きだった授業の1つである"Intersectionalities: Race, Gender, and Sexuality"という授業ででした。コースの名前にあるように人種、ジェンダー、そしてセクシャリティーについて学べるという、私にとっては夢のようなコースでした。特に幅広い社会学の中でも、人種とジェンダーについて最も興味があるので、とても楽しんで授業を受けることができました。
どんな流れで?!
日本にいると、性器を大画面で見る、ましてやそれを授業でやるなんてなかなかないですよね。オランダの性に関してオープンなお国柄というのもあると思いますが、私が取っていたコースがジェンダーとセクシャリティーを扱っているということ、そしてよくタブー視されるトピックを扱う社会学部に属していたという要因もかなり大きいと思います。よく「社会学部って何を勉強するの?」と聞かれますが、社会問題を幅広く勉強・研究する学問だと言えば間違いないと思います。ホームレス問題、人種差別、薬物、依存、性などさまざまなタブーについて触れていくことが多い学問です。
その授業では、「インターセックス」という女性と男性どちらにも当てはまらない身体的・生物学的特徴を持って生まれた人々について学習していました。恥ずかしながら、その授業を受けるまで「インターセックス」という言葉は聞いたことがありませんでした。日本では特に知られていない言葉だと思います。ウィキペディアのページもとても短いです。https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%82%BB%E3%83%83%E3%82%AF%E3%82%B9
「インターセックス」とは簡単に何?
社会学部出身、そして社会学研究者志望として、世に知られていないマイノリティーの認知を、少しでも広めていくという宿命がある気がしています。折角なので、この機会に「インターセックス」について、軽くでもいいので知ってもらえたらなと思います。
「インターセックス」とは、文字通り男女という二つの生物学的性別(セックス)の間(インター)にある人々のことです。DSDsとも呼ばれているようです(大学でこの言葉は取り扱いませんでした)。トランスジェンダーのように「男性から女性に移ること」や「女性から男性に移ること」ではなく、生まれ持った身体的特徴(性器や声など)が、男性にも女性にも当てはまらないという意味です。
見る必要あるの?「百聞は一見に如かず」
今ここで私がしているように、言葉だけで説明してもなかなか想像できないですよね。男性か女性というはっきりした二つの生物学的な性の存在にしか馴染みがない私たちには、ただ「生まれ持った身体的特徴が男性にも女性にも当てはまらない」と聞いただけでは理解し難いと思います。だからこそ、実際に写真を見るということが必要なのだと私は思います。日本だと、授業で性器の写真を取り扱うなんて「教育現場にふさわしくない」とか「不適切だ」という声が聞こえてきそうですが、私は「百聞は一見に如かず」だと思います。教授の話を聞いたり、書物を読むことに加えて、写真を見るということで理解が深められると思います。
インターセックス、なぜ問題?
一般的に考えられる「男か女」の性に当てはまらないという観点において、インターセックスの人たちはマイノリティーだと言えるでしょう。マイノリティーであるが故、インターセックスについて認知が充分広まっていないという問題がありますが、それだけが問題なのではありません。一番の問題は、インターセックスの人々が、社会で一般的とされている「男か女」という性のあり方を強要されていることです。どういうことかというと、インターセックスとして生まれてきた際、産婦人科のスタッフに「この性器は"普通"ではない(普通=男性器か女性器)」とみなされ、男性器か女性器のどちらかになるように手術されるということです。この手術の問題点は主に二つ。
本人の同意を得ていない
インターセックスというありのままの状態を受け入れず、「男か女」という一般的とされる性のあり方を押し付けている
本人の同意を得ていない
インターセックスの新生児に対する性器の手術は、主に意思疎通ができない赤ん坊のころに行われます。すなわち、インターセックスの人本人の同意を得ていないということになるのです。「男性器にするか女性器にするか」ということを本人と話し合わない以前に、「手術をするかしないか」ということさえも本人の同意を取らないという現状は、大きな問題と言えます。
「男か女」という一般的とされる性のあり方を押し付けている
インターセックスの人々特有の、男性器と女性器のどちらにもあてはまらないユニークな性器を持っていることで、日常生活に支障をきたすということは少ないです。それなのにもかかわらず、「男か女のどちらかであればならない」という社会的圧力のせいで、同意なく手術をするのは問題であると私は考えます。下のドキュメンタリーで明らかになっていますが、私だけでなく、インターセックスの当事者の方々の中にも同じように考えている人が多いようです。
付け加え:インターセックスの「男と女」という概念
この記事のリンクを私のTwitterで共有したところ、「ネクスDSDジャパン日本性分化疾患患者家族会連絡会【男女にある体の性の様々なカタチ】」様(Twitterアカウント:https://x.com/nexdsdJAPAN2)からご連絡をいただきました。「DSDsを、"男にも女にも当てはまらない性別"と考えるのではなく、"男や女にも多様な形がある"とお考えください」というご指摘でした。これを読んでくださっているみなさんには、このような考えもあるということを頭に入れておいてほしいと思います。
インターセックスについてもっと知ろう
まずはインターセックスについて認知を広めることが大切です。認知を広めるためには、広める側が正しい知識を持っていなければなりません。まだまだ情報は少ないですが、インターセックスについてぜひ調べてみてください。新しい情報やおもしろい発見があれば、コメント欄で教えてくださいね。インターセックスや当事者の思いについて知ることができる、私のおすすめのドキュメンタリーを下にはっておきますので、ぜひご覧ください(音声は英語ですが、字幕の自動翻訳で日本語を設定できます)。