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88_日本で流行している5大TRPG ~ 2023年TRPG人気調査

さまざなTRPGがある中で、日本で人気のあるTRGシステムは何だろうか。遊ぶコミュニティによって異なり、1つの結論を出せません。「TRPGはどのくらい大人気なんだろうか?」を書いた2022年頃から気になっていました。X(旧・ツィッター)には様々が情報が流れています。どれもネットの噂であり、発信者の個人的意見です。信頼性のある客観的データを見たい。そう思っていると、幸運にもイエローサブマリンが2023年の販売数ランキングを公開していました。

調査結果を示す前に、この記事の趣旨を再説明します。過去の記事「74_CoC冬の時代 ~ 2004年TRPG人気調査」に書いたように、TRPG人気調査の方法は5通り考えられます。私は特に「(2)ビジネス視点」「(3)TRPGを遊ぶユーザ視点」に着目しています。

(1)中立な第三者機関による統計調査(調査実績が見つからない)
(2)ビジネス視点
(3)TRPGを遊ぶユーザ視点
(4)同人作家の視点
(5)動画視聴者・動画配信者の視点

(2)ビジネス視点
TRPG売り上げ数字や発売される新製品の数です。ユーザが実数を知る機会は少ないです。2023年のイエローサブマリン販売ランキングが公開されたのは幸運でした。

(3)TRPGを遊ぶユーザ視点
私はTRPGを「ゲーム」であり、遊びの1種類と捉えています。すなわち「(3)TRPGを遊ぶユーザ視点」が最も人気調査として最も妥当だと考えます。身内卓やオンラインセッション野良卓は数えようがありません。しかし、web検索すれば、2件のコミュニティでの集計報告が見つかります。テーブルトークカフェDay dream は「遊ばれたTRPGシステムの年別のランキング集計結果」を2010年から公開しています。京都大学RPG研究会は活動報告を2000年度から公開しています。

■シノビガミが人気No.1

まずは、2023年のイエローサブマリン販売数実績ランキングを見ます。『シノビガミ』サプリメントが1位と2位を独占しています。TOP10を占める5種類のシステムを並べると、下表の順位になります。

TOP30を見ると、10位までの延長線と言えそうです。『ソード・ワールド2.5』関連製品が7件。『ダブルクロス The 3rd Edition』関連製品が6件。『ダンジョンズ&ドラゴンズ』関連製品が6件。『シノビガミ』関連製品が4件。それぞれの基本ルールブックもランク入りしています。この4点と、7位『新クトゥルフ神話TRPG』をあわせて、5大人気システムと言えるでしょう。その他にTOP30ランク入りしたシステムは6件。そのうち『東方Project二次創作TRPG 幻想ナラトグラフ』『ELDEN RING TRPG』『ニンジャスレイヤーTRPG コアルールブック』『マモノスクランブル』は2023年発売の新作です。『メタリックガーディアン コンペンディウム』は久々の新作サプリメント。ただ一つ『永い後日談のネクロニカ』(2011年発売)だけは、ランク入りした理由がわかりません。
2023年の『ダンジョンズ&ドラゴンズ』人気には、3月公開の映画『ダンジョンズ&ドラゴンズ/アウトローたちの誇り』の影響もあったかと思います。ところで、柳田真坂樹氏は興味深い記事を書いています。英語圏での人気と比較すると「マイナー」かもしれませんが、2020年代の日本における1万部は良いほうだと思います。

しかし、このすばらしいスタートにも関わらずD&Dの勢いは急速に退歩し、今日、日本のTRPG界隈において『ダンジョンズ&ドラゴンズ』はマイナーな存在になっている。英語版の『Player's Handbook 5th Edition』は150万部以上売れたが、日本語版の『Player's Handbook第五版』の出荷数は2021年の時点で1万部に満たない。

柳田真坂樹「日本D&D興亡史」より

■『ダンジョンズ&ドラゴンズ』の人気度

テーブルトークカフェ Day dream は2010年からランキングを公開しています(urlが変更されたので、過去記事に貼ったリンクは注意)。公式サイトによると、1日の利用料は一般2,000円から6,000円。統計調査の母集団としては偏りがあります。良い環境、良いGMに対価を支払って遊びたい層のデータとなります。

1位:D&D(版問わず)(332)
2位:シャドウラン(版問わず)(174)
3位:ウォーハンマー(版問わず)(82)
4位:ソードワールド(版問わず)(80)
5位:クトゥルフ神話(版問わず)(77)
6位:パスファインダー(76)
7位:ダブルクロス(71)
8位:トラベラー(54)
9位:インセイン(49)
10位:アリアンロッド(26)
15位:シノビガミ(8)

2023年より

『シノビガミ』よりも『インセイン』のほうが人気が高い点が面白いです。『シャドウラン』『ウォーハンマー』『トラベラー』などは、年齢層が高いユーザに人気が高いのではないかと推測します。

■学生サークルの場合

ほかのデータ源として2023年度の京都大学RPG研究会活動報告を下記に引用します。大学サークルのため、集計が4月-翌年3月の年度締めである点を留意してください。

1位:新クトゥルフ神話TRPG (CoC7版)(73)
2位:ソード・ワールド2.5(68)
3位:シノビガミ(50)
4位:クトゥルフ神話TRPG (CoC6版)(18)
5位:マウ連合君主国(10)

京都大学RPG研究会 2023年度活動報告より

なお、2022年度のランキングもほぼ同じ。1位と2位が入れ替わっていました。3位『シノビガミ』と4位『クトゥルフ神話TRPG (CoC6版)』は同じでした。『神我狩』が5位(15)、6位『ダブルクロス3rd』『永い後日談のネクロニカ』(11)。最初に示したイエローサブマリン2023年販売実績とほぼ似たような傾向が見られます。ただ一つ、大きく異なる点は『ダンジョンズ&ドラゴンズ』が大学生に遊ばれていないことです。

■とあるアンケート結果

2024年7月頃に、Xで下記アンケート記事「TRPG好きは20代女性が最多 半数以上がリプレイ動画や実況配信きっかけ」の紹介を見ました。ネット上でのアンケートで、かつ、主に動画視聴者層を対象にしたアンケート調査ということなので、全般的な信頼性には疑問を持っています。

【調査概要】
調査期間:2024年6月3日(月)~2024年6月9日(日)
調査方法:インターネット上でのアンケート調査有効回答数:487人(男性221人、女性243人、その他11人、未回答12人)

一方で「見る専なので遊ばない」という層も一定数存在(90人、10.8%)することがわかります。
リプレイ動画や実況配信の台頭により、TRPGという遊びの楽しみ方も変化していることをうかがわせます。

信頼性が低い調査結果と言っても、「見る専なので遊ばない」層を浮き彫りにしたことに価値があります。1990年代、安田均先生は(書籍)リプレイ読むだけのファン層を指摘していました。それでも、こういう受動的ファン層をTRPGセッションに参加させるキッカケ作りをできれば、ユーザー層拡大につながると思います。

参考文献
イエローサブマリン販売数ランキング2023年
https://twitter.com/YS_RPGSHOP/status/1743929395642016112
世界最初のRPG「ダンジョンズ&ドラゴンズ」はなぜ2018年に歴代最高の売上を記録できたのか?
https://gigazine.net/news/20190110-dungeons-and-dragons-best-seller/

日本D&D興亡史
https://note.com/d16/n/n55da80519277

「TRPG好きは20代女性が最多 半数以上がリプレイ動画や実況配信きっかけ」
https://kai-you.net/article/89977

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