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【超短編】絵馬


神社

太陽が名残惜しそうに光だけ残して姿を隠したあと、普段は隠れていたみたに見覚えのない神社を見つけて、鳥居をくぐりぬけて手水舎を覗くとよれよれのラミネートが時間がたったのか白くぼやけてる。うっすらと木の看板のような絵が見えるラミネートは手水鉢の上に貼られているようで、きっと普段はたっぷり水を湛えてたであろうが空んなっているのを見ると、なんだか自分は汚れてるような気がして少しだけ厭な感じがした。

よれて汚れたラミネートが一緒だって言ってくれているようだった。

生まれて初めて清めをせずに境内に入ると急に悪いことをしている気分になり、ふとどうせならと悪戯心のままいつもなら参拝するところを拝殿に向かわず、何だったら参道のど真ん中を通って境内を見て回っていると、なんとなく視線を感じて振り返った先に、暗くなってきた中で朱い絵馬掛け所が妙に明るく見える。

参拝もせずに絵馬を見に行くととますます自分が悪いことをしているような気になって、ふと周りを見渡しても暗い一面には誰がいる気配もない。
ひゅっ~とした変に冷たい風が白んだラミネートをさわざわとならすばかり、絵馬掛け所を見ると紐の繋がれたマジックペンと絵馬が4つかかっていた。

その一つに目を向けると震えた字で「奉納」という字と馬がかかれており、興味のまま裏をめくってしまう。

絵馬

「お願いします 助けてください」
相当切実だったのか奉納以上に崩れていたその字は、絵馬を斜めに書かれており、なんだったら「ください」のいの字が端のぎりぎりに残っているそれをみていると自分の背中がぞわついてくる。

どんなに必死な願いなんだろうか?自分が最後にお願い事をいたのはいつだろうか?そんなに必死になって何かを願ったことはあっただろうか?思い出せないな・・・。なんとなく懐かしい気持ちになりながらも、普段とは違うことをしていると、取り留めもないようなことも考えるようになるなと思っていた。ますます辺りは闇に落ちてくる。

「逃げてしまいたいです!」
今度は綺麗な字で「奉納」と書かれた絵馬を裏返すと、そんな願いが書かれていてなんだか懐かしいような気持ちになり、人間誰しも、逃げ出したいときはあるよな、と思いながら絵馬を戻しながら、一枚二枚とめくった自分にとっては、もうそれをするのが当たり前かのように次の絵馬に手を伸ばす。少し歪んだ「奉納」をめくる。
「ここから出してください」
ここから?という言葉に違和感を覚えるが、突然風が強くなり、ごぅと風に吹かれ木々の葉がこすれる音がじゃっと鳴る中、さっきまでさわざわとなっていたラミネートがここまで飛んできた。

明らかに異様な雰囲気の中、悪寒に冷や汗を流しながら最後の「奉納」に手を伸ばすも、なんだか恐ろしい気がしてめくる勇気が出ず、体感でいえば数分以上は固まっていたが、風がふと止まった瞬間に勢いにまかせ裏をめくるとそこには懐かしさを感じる字で「お願いします 頭がおかしくなりそうです ここはどこですか 出してください」。

あきらかにおかしい。

暗闇

辺りは異様に暗く、あれだけ強く吹いていた風も今やその欠片さえ感じず、ほほを伝う冷や汗の冷たさだけが夢ではないと実感を与えてくれる静寂と闇の中、飛んできた真っ新なラミネートが目に映る。

そこには見慣れない字で「ずっと一緒」と書かれた絵馬が描かれていた。

自分の字で書かれたその絵馬を戻しながら、あなたは新しい絵馬とマジックを手に取る。


神社

太陽が名残惜しそうに光だけ残して姿を隠したあと、普段は隠れていたみたに見覚えのない神社を見つけて、鳥居をくぐりぬけて手水舎を覗くとよれよれのラミネートが時間がたったのか白くぼやけてる。完全に白んで真っ白になったラミネートは手水鉢の上に貼られているようで、きっと普段はたっぷり水を湛えてたであろうが空んなっているのを見ると、なんだか自分は汚れてるような気がして少しだけ厭な感じがした。

よれて汚れたラミネートが一緒だって言ってくれているようだった。

生まれて初めて清めをせずに境内に入ると急に悪いことをしている気分になり、ふとどうせならと悪戯心のままいつもなら参拝するところを拝殿に向かわず、何だったら参道のど真ん中を通って境内を見て回っていると、なんとなく視線を感じて振り返った先に、暗くなってきた中で朱い絵馬掛け所が妙に明るく見える。

参拝もせずに絵馬を見に行くととますます自分が悪いことをしているような気になって、ふと周りを見渡しても暗い一面には誰がいる気配もない。
ひゅっ~とした変に冷たい風が白んだラミネートをさわざわとならすばかり、絵馬掛け所を見ると紐の繋がれたマジックペンと絵馬が数えきれないくらいかかっていた。



あとがき

夏なので、さらっとした2000文字くらいちょっとしたホラーを描きたかっただけです。
暑い日々がつづきますので少しでも涼んでくれたらうれしいです。





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