天陽くんが結婚するという報せを聞いた

『なつぞら』(6月29日放送:第78話)にて、天陽くん結婚フラグが立ちました。なつを待たないと宣言し、自らの心の整理をつけ始めたのが3週間前(6月8日放送)。僕はその切ない心情について以下の感想を述べています。

初恋が成就しないことは定石ですが、天陽くんにとってなつは想い人であり、真実の愛の対象でした。だからこそ夢を追うなつの背中を推し、自らの生き方と相容れないことに一人で決着をつけたのです。

しかし、なつにとっての天陽くんは大好きな相手ではありますが、いわゆる恋愛対象としての気持ちには転じませんでした。彼女にはやるべきことがあり、自分以外の物事に関心を置くことは良しとしませんでした。唯一、心を動かされたのは千遥の件ですが、それは家族としての愛であります。

これは、視聴者である私たちだけでなく、北海道に残った多くの関係者が同じ気持ちを感じていました。二人には結ばれてほしいが、生い立ちの複雑さもあるなつには自分の人生を精一杯生きてほしいという願いもあります。

なつは天陽くんの結婚の報せを聞いて少し動揺します。ほんの少しだけ。それは切なさではなく戸惑いです。少し穿ったものの言い方になりますが、なつは天陽くんが他の女性に恋をすることをまるで想像していなかったのでしょう。

それは、なつが「彼は自分のことを好きだから」と自惚れていたわけではありません。なつもまた、この二年の間に恋愛関係が生じておらず、打ち上げの中での女子トークの中でも、そもそもの関心ごととして優先度が低いことが見て取れます。ただ、単純に「誰ともそういう気持ちにならなかった」だけです。

この「誰とも」という部分が今日のコラムとしてはとても重要です。少なくともなつは天陽くんの気持ちを知っています。もちろんそれに応えられないことも知っています。しかし、それは「今は」です。

なつにとって天陽くんが大切な人であることは間違いありません。彼女が生きる時間のなかで「今は」応えられないが、応えられる日が来ることを彼女自身も少なからず心の片隅にはあったと思います。

しかし、天陽くんにとって離れている二年間は長すぎました。そして、彼はなつが東京から北海道には戻らないことも、自分が東京に行かないこともちゃんと理解していました。折り合いをつけるには十分すぎる時間が経ちました。失恋を癒すのは時間ですが、新たに前向きな気持ちを得るのは新しい恋であることもまた真実です。

次週、二人は再会するようです。
どうか、どうか天陽くんの人生が幸せでありますように。
僕は切にそれを願います。


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