#66 手話コミュニティにおける「情報格差」
音声の情報格差
インターネットで検索すると、「情報通信技術を使える人と使えない人の間にもたらされる格差」と出てきますが、ここで言いたいのはその意味ではありません。
ここで取り上げる情報格差とは、「受け取る情報量の差」のことです。
例えば聴者は、電車の中でのアナウンスやキッチンでお皿が割れる音など様々な音を意識的に、時には無意識に聞いて、それをもとに判断や行動をしています。しかしろう者は、その音声情報を得られません。
そのため、ここに音声の情報格差が生まれるのです。
にいまーるで働くうえで意識していること
私は、にいまーるで働くうえで、「音声の情報格差を埋める」ことを意識しています。言い換えれば、耳で得た情報をろう者に伝えるということです。
一般的な会社であれば、わざわざ意識しなくとも自然と伝わるようなことであっても、にいまーるでは意識的に情報を共有する必要があります。
特に電話対応は、聞こえる職員にしかできない仕事であり、重要度・緊急度の高い内容を扱うことが多いので、情報共有が不可欠です。
聴者の場合は、同じ空間で誰かが電話をしていると、聞こうとしなくともやり取りが聞こえ、電話の相手が誰でどんな内容であるか、なんとなくつかめます。ろう者の場合は、その「なんとなくつかめる」がないため、そこに音声の情報格差が生まれます。
職場における音声の情報格差を埋めることは、ろう者と一緒に働く聴者の重要な役割の一つだと考えています。
手話の情報格差
そしてこの「情報格差を埋める」意識は、音声の情報格差に限った話ではなく、手話の情報格差においても同様に大切だと考えています。
例えば、手話のわかるコミュニティで全員が手話で話すような場面です。
手話学習者のレベルによっては、手話を読み取れなかったり、自分の知らない話が出てきたりなど、話の理解が追い付かないことがあり、ここに情報格差が生まれます。そんな時、話を理解できた人が、話についていけていない人をサポートすることで、情報格差を埋めることができると思います。
手話コミュニティでは情報格差が生まれやすい
手話コミュニティでは、情報格差が生まれやすいと私は感じています。
ろう者と聴者が一緒にいる場合、聴者は聞こえてろう者には聞こえないという音声情報の格差が常に存在します。ろう者によっても聞こえの程度がまちまちで、ろう者同士で音声情報の格差が生まれることもあります。
また、個々人の手話の習熟レベルには差があります。そのため、手話が読み取れず、話についていけないということが起こりうると思います。ろう者同士であっても、年代や地域によって使う手話が違うことにより、手話の情報格差が生まれることもあるのではないでしょうか。
このように、手話コミュニティには、情報格差が生まれる要因が多く存在しています。それが悪いということではなく、それがコミュニティとしての特徴なのだと私は考えています。情報格差が生まれやすいという特徴を認識しておくことで、「もしかしたらあの人わかっていないんじゃ…」という気付きにも繋がります。情報格差を埋めるためには、まず格差があることに気付くのが第一歩です。
今後も、取り残される人に目を向け、声をかけられる人になれるよう、日々精進していきます。
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