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【記者コラム】恩返し

東京での学生時代に、幸運にも何人かの著名なジャーナリストにお会いする機会に恵まれた。今から考えても非常に貴重な経験だったと思う。

まずは、故筑紫哲也さんだ。お会いしたのは今から25年前の品川区のあるパーティーで、当時はTBS系の「ニュース23」のキャスターを現役でされていた時だった。長身でダンディーな男性だった。少しだけ会話を交わしたが、私は緊張していたので、今となってはその内容はほとんど覚えていない。

実は私はその時、無謀にも筑紫さんに自分の書いたルポルタージュの原稿を読んで欲しいと渡したのだ。今から思えばまさに若気の至りだったが、無名の学生の原稿を読んでくれるはずもなく、当然ながら返事はなかった。しかし、「頑張ってください」という筑紫さんの言葉は新聞記者を目指していた当時の私には大きく勇気づけられるものだった。

次は、江川紹子さん。ちょうどオウム真理教の問題で、毎日のようにテレビのワイドショーに出演されていた頃である。私の恩師のジャーナリストと江川さんが知り合いで、たしか東京地裁のロビーでお会いしたと思う。その時もオウム信者の裁判傍聴だった。たいした会話はなかったが、一流ジャーナリストの佇まいを感じ取ることができた。

最後は、鎌田慧(さとし)さんだ。学園祭でゲストとして来校された時にシンポジウムを聞きに行ったのである。たしか、テーマは沖縄基地問題だったと思う。すぐ近くの席でお姿を拝見した。鎌田さんの代表作は、大手自動車メーカーに期間工として働いた記録の「自動車絶望工場」(講談社文庫)だが、近年では「ユニクロ」や「アマゾン」の本(横田増生著)で有名になった、「潜入取材」の先駆者と言われている人だ。

数々の一流ジャーナリストに会い、私は学生時代に記者になろうと心に決めた。現在記者として経験を積む中、これからは例えば講演など何らかの形で、取材・文章法のノウハウを話すことで、社会に恩返ししていきたいと考えている。

(編集部・梅川康輝)

にいがた経済新聞 2024年5月19日 掲載


【にいがた経済新聞】


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