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【記者コラム】半導体投資が地方を変える、新潟は?

先週、プライベートで北海道を訪ねた。今年に入り1月に続き2度目の来訪。

北海道は昨年来、2030年の札幌五輪招致を断念したり、北海道新幹線の札幌延伸計画が延期になったりと、さぞ意気消沈ムードかと思いきや、そんなことは全くない。

2023年2月に最先端半導体ファウンドリー「ラピダス」の千歳市進出が決まり、9月には第一工場の起工式を行った。25年には工事が完了し、27年に本格生産をスタートさせるという。

ラピダスはトヨタ自動車、NTT、ソニーグループなど日本の超大手8社が中心となり約73億円を出資して設立した。かつて半導体市場では世界的イニシヤチブを握った時代もあった日本だが、近年は台湾、中国などに抜かれ、今や周回遅れとさえ言われる。そんな日本が起死回生で巻き返すべく、産業界を挙げて取り組んだのがラピダスで、ほとんど「国策」と言っても良い企業体だ。国からも既に3,300億円の補助金が投入され、この4月2日には経済産業省が、追加で最大5,900億円の支援を行うことを発表した。最終的な投資額は官民合わせて5兆円に上ると予想される。

半導体は今や、第二次世界大戦時の原油のように、国家間の「戦略物資」となっている。スマートフォン、EV等の普及により需要が高まったのはご存じ、ここ2年ほどは生成AIサービスの爆発的普及でさらに世界的需要が沸騰している。2024年の世界半導体市場は過去最高の5338億ドル(約87.5兆円)だが、「30年には1兆ドル(約149兆円)」という説もあるほど。

こうした半導体市場をめぐる「狂乱」を、創刊5,000号記念「週刊ダイヤモンド」で読みながら新潟から千歳までの空路を過ごした。

千歳に降り立つと、街の見え方がいやでも変わってくる。ラピダスの進出で北海道は世界的な半導体の集積地になる可能性があり、千歳市周辺はまさに「和製シリコンバレー」になるだろう。かつてはご多分に漏れない過疎の地方都市だった千歳市の人口は、今やどんどん増え続けている。今年1月に事務所を開設したラピダスも、毎月30人規模の入社式を行っているのだという。結局、「巨額投資が街を変える」というのはこの規模のことを言うのだ、と思い知らされる。「原発が再稼働するから街に活気が」という次元で一喜一憂するのがちょっと恥ずかしくなった。

ただこれは千歳だけにとどまる話ではない。前述したダイヤモンド誌によれば、日本列島には向こう3年間で10兆円程度の半導体投資が行われる観測だという。熊本に世界最大のファウンドリーである台湾TSMCが進出するほか、数千億円単位の投資が目白押し。まさに日本中が「シリコン列島化」する勢い。

残念ながら、新潟県には今のところ半導体関連の新たな大型投資の話は出ていない。そろそろガツガツしても良い頃ではないか、新潟も。

(編集部・伊藤直樹)

にいがた経済新聞 2024年4月28日 掲載


【にいがた経済新聞】


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