Saucy Dog『怪物たちよ』
寄り添う優しさはロックだ
映画『スクロール』の主題歌として配信された一曲。
フィンガーピッキングで弾いていると思われるゆったりとしたアルペジオ。歪んだハウリング音から、「いつか」を想起させるようなミドルテンポの力強いサウンドが広がる。
歪んだギターの低音が強調されたAメロのリフ。ドラムが力強く鳴り響き、消えて、ボーカルが突然浮かび上がるサビの緩急。3人の声が響き渡るクライマックスには、ライブでの大合唱を想像せざるを得ない。
「グッバイ」でも「ゴーストバスター」でも「Blue」でも、そして本曲でも歌っていること。それは、誰かの声がすぐに聞こえてしまう現在。手のひらで誰かを傷つけたり、傷つけられたりする現在。ジャケットの人の影が、手に持つものが燃えているように見えるのはそういうことだろう。自分がどうしたいのかわからなくなってしまう現在。そんな「現在を生きる」ことの難しさと素晴らしさだ。「怪物」は自分の心の中にだっている。「怪物達」にすら寄り添う優しさ。優しさは強さでロックだ。
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