電気料金が高騰する理由
「なんだか、この冬は電気代が高いな」そんな風に感じた方は多いのではないでしょうか。また、去年と大して生活習慣を変えていないし、それほど電気の無駄使いをしているような気がしないのに高くなった電気代に不満と不安を抱く方は少なくないはず。
これを書いている私も、2021年1月と2022年1月とでは電気の使用量が2022年の方が少なかったのにも関わらず、電気料金が1万円ほど高くなってしまいました。
では、なぜ、電気代にここまで違いが出てきてしまうのでしょうか。
大手電力会社の電力料金が過去5年で最も高い水準
2022年3月、大手電力会社10社が請求する3月分の電気料金が過去5年間で最も高い水準となります。急に高くなったわけではないものの、東北電力エリアのに限らず大手電力会社10社は2021年1月から12月にかけて値上げをおこなっており、過去10年間でも高いレベルの値上げをおこなっています。
電気料金は、燃料輸入価格を自動的に反映させる「燃料費調整制度」を踏まえて決められています。
この制度は、電力会社の経営努力だけではどうしようもない燃料価格の上昇を生活者の電気料金に転嫁することで電力会社自体の経営安定化と電力の安定供給を図ろうというものです。
ただし、大幅な値上げによる消費者負担を避けるため燃料費調整制度で生活者側に転嫁できるのは電力会社があらかじめ設定している基準価格の1.5倍までとされ、1.5倍を超過したものに関しては電力会社が負担しなければなりません。
上記で電力料金が高まっていることを伝えましたが、2022年2月には北陸電力が、2022年3月には関西電力と中国電力が値上がりしすぎた結果、経済産業省に値上げ申請をしない限り燃料費が上がっても電気料金をできなくなっている状態です。
現状はまさに、生活者側でも電気を提供する電力会社としても困ってしまうような状況になっているといえるのです。
冬は電気の消費量が多くなる
なぜ、ここまで電気料金が高くなってしまうのでしょうか。
端的にいってしまえばエネルギー価格高騰の影響を受けているからで、これは原油価格が高騰しているだけでなく、天然ガスの価格も高騰していることが大きな理由だとされています。
2011年の東日本大震災によって発生した津波による福島原発の稼働停止以降、日本では原子力発電の稼働は減少し火力発電への依存度が高い状態となっており、日本の発電量に占める火力発電の割合は以下の図からもわかる通り2019年度で76%と非常に高いのです。
中でも石油などが7%、石炭が31%、天然ガスが37%と出ているように、天然ガスと石炭の比率が高いのですが、日本の電力会社は天然ガスを液化したLNG(=液化天然ガス)で輸入しているものの、輸入するLNGのうち、8割程度が10年間など長期契約を結んでいます。
東北電力でも長期保有と同時に不足分を短期契約で確保しようとする動きが出ているものの(東北電力2月定例社長記者会見概要より)、そもそもLNGの長期契約は3ヶ月分の原油価格を基準に変動する仕組みとなっているため、原油価格が上昇すれば長期で契約しているLNG価格も上昇することになるのです。
これが電気料金の値上げにつながっています。
燃料需要が高まっていることも要因
原油価格が高騰するのも世界各地の経済活動が再開され需要が高まっていることが無関係ではありません。下図のように2020年3月には随分と価格が低下していたものの、徐々に経済活動が活発になってくるに従って価格が上昇しており、2018年10月の基準を上回っています。
さらに、最近の中東における石油施設の爆発や火災などが相次いだことに加え、ウクライナをめぐるロシアと欧米との緊張状態が続いていることから供給への懸念が強まっており、価格の上昇傾向はしばらく止まりそうにありません。
では、長期契約ではない短期契約を結んで輸入しているLNGはどうか。こちらは天然ガスの需要と供給によって価格が変動するものですが、2021年10月には2020年の同じ時期と比べて10倍以上の価格がつけられており、今も高い水準で推移しています。
こちらの原因はさまざまありますが、中国が環境シフトを急速に進めており、石炭から二酸化炭素の排出が少ない液化天然ガス火力へ移行していることから、LNGの輸入量が増えていることと、ロシア・ウクライナ情勢が大きく影響していると言えます。
特にロシアが欧州側に圧力をかけるためにガス供給量を絞り込んでいるのではないかと思われており、欧州の天然ガスにおけるスポット価格が急騰していることから、アジア市場にも影響がでたために高騰しているのです。
冬は電気の消費量が増えてしまう
上記はみなさんが日常的に意識することのない情報だとは思いますが、把握しておくと今後の電気料金への対策が取れるようになるでしょう。
改めて、冬の電気料金が高くなるのはどうしてでしょうか。
特にこの冬、上記してきたように燃料価格が高くなったことにより電気利用の単価が上がることは理解できました。
しかし、冒頭で記載したように我が家の電気利用料は昨年よりも低下しているのに利用料金が高くなったのは、これらの理由によるものだと理解でき流もののどうして夏よりも冬の方が電気料金が高くなるのでしょう。
「夏でも冷房で電気使用量は多いでしょ?」と考えがちですが、重要なのは外気温と室内温度の差。
自宅で利用する空調の機能が高性能となり快適な室内空間を整えることが可能になりましたが、その分、室内温度と外気温との差が多ければ多いほど、差を埋めるためにエアコンは多くの電力を消費し続けて目標温度を達成しており、冬の電気利用料が高くなるのこれが原因だったのです。
一年の中で日照時間が短く気温が低いため、照明や暖房器具を利用する時間が長くなってしまうため、結果的に電力の使用総量が増えてしまうのです。
そこで、夏の外気温と冬の外気温でどれほどの差があるのかを考えてみます。
仮に夏の外気温が35℃だった場合と冬の外気温が3℃だった場合とでは、それぞれ下記のような差があることになります。これをみると明らかに夏季よりも冬季の方が室温と外気温の間に大きな隔たりがあることが一目瞭然で、それだけ多くの電力を消費することになるのです。
ここで具体的なエネルギー利用料の違いを見ていきます。ちなみに個人による分析ではあるものの、外気温が1℃低下するとエアコンの消費電力量が0.43kWh/増加すると試算されています。
つまり、外気温が3℃で室内温度を24℃に保とうとすれば差分は21℃となります。つまり、低い日は9.03kWh/日もエアコンだけで電力を消費することになりますから、それが30日間継続した場合、270kWh/月もエアコンで利用することになってしまいます。
試算するために東北電力の電気契約プランを参照してみましょう。これ以外にも基本料金と再生可能エネルギー発電促進賦課金や燃料費調整額といったものが加算されたものが電気料金として請求されます。
① 120kWhまでで 2,229円
② 120kWhから270kWhまで 3,799円
① + ② = 6,028円
※あくまでも単純計算するための用いているため、各世帯ごとの契約プランはご確認ください。
つまり、理由は冬の気温が低いだけですが、エアコンの消費電力を引き上げることには十分に貢献してくれてしまっているのです。
ご家庭でエアコンを利用することは生活を家庭で温かく生活をするためには不可欠なもの。ですが、各家庭や職場などでの「適温」を模索することが必要なことがわかります。
改めて、これまで記載してきたことを踏まえ、冬季間のエアコンなどをはじめとした温度を調節する電子機器との付き合い方を見つめ直すことが必要なように思えますので、ぜひ参考にしていただけたらと思います。