相振り土居矢倉のすすめ①
土居矢倉とは
図１
土居矢倉（図１ 先手側）は土居市太郎名誉名人が用いた囲いであり、
近年相矢倉において
・通常の矢倉より短手数で組める
・バランスが良く角交換に強い
といった点から再評価されている。
そこで、相振り飛車においても土居矢倉を採用できないか検討を行ったので
本記事にて報告する。
他の矢倉囲いの特徴と比較
図２
矢倉（図２ 先手側）
固いが、角の打ち込む隙が多い。
片矢倉（天野矢倉）（図２ 後手側）
下段飛車に弱く、矢倉ほど堅くないが、金銀の連結が良くバランスが良い。
図３
土居矢倉（図３ 先手側）
バランスが良く、角の打ち込む隙が少ないが５八の金が浮いていて、堅くはない。
平矢倉（へこみ矢倉）（図３ 後手側）
横からの攻めに強く、へこんでいるので４筋に争点がないが、銀の頭が弱い。
土居矢倉の長所
１ 中央が手厚い
図４
図４後手陣は矢倉崩しと呼ばれる形の一つ。
図４以下△４五歩▲同歩△同銀▲同銀△同桂▲４六銀△同角▲同金
△５七桂成（図５）で５筋を突破されてしまう。
図５
そこで、５筋を突破されないためには４八玉型（参考図１）で待機する必要があるが、土居矢倉（参考図２）や片矢倉のように、金で５筋を守る方が玉で顔面受けするより安全である。
参考図１
参考図２
２ ６七銀のＢ面攻撃がない
図６
図６のように６六角と、角で５七の地点を受ければ前述の５筋突破はないが、別の攻め筋が発生する。
図６以下の指し手
△４五歩 ▲同 歩 △同 銀（図７）
図７
図７以下▲同銀△同桂▲４六銀は△同角▲同金△５七桂成▲同角△６六銀（参考図４）の攻めが気になる。
参考図４
参考図４以下▲７九角には△６八歩が打てれば攻めは成立しそうだ。
図７
図７以下の指し手②
▲４六歩（図８）
図８
前述の攻めを避けたい場合、図７から▲４六歩（図８）が受けの形の一つである。図８以下△同銀▲同銀△同角▲同金△同飛（参考図５）は▲４七銀打△４三飛▲２一角（参考図６）以下飛車をいじめて桂香を拾っていけば先手が良くなる。
参考図５
参考図６
図８
図８以下の指し手
△５六銀 ▲同 金 △６七銀（図１０）
△５六銀に対して▲同歩は後手の角筋が通り、△４五歩（参考図７）と
攻められる手が気になる。
参考図７
したがって▲同金と取る形が有力なのだが、今度は△６七銀（図９）と打つ手が発生する。
図９
図９は次に△５六銀成と金をはがす手や、△７六銀成と角をいじめる手があり、
受けにくい。
一方土居矢倉（参考図８）であれば、△６七銀と打つ手は発生しないため、
この点で矢倉や片矢倉より優れている。
参考図８
なお、図９で先手が６六角型ではなく７七角型であれば、△６六金と寄って打ったばかりの銀が死ぬため、受けきれそうだ。
３ 片矢倉より柔軟性がある
片矢倉より優れている点として、△４六歩と叩かれた際に▲４八金引と金を
引くことができる点が挙げられる。
図10
図10以下の指し手
△４五歩 ▲同 歩 △４六歩（図11）
図11
片矢倉や金矢倉４八玉型の場合、図11のように以下△４五歩～△４六歩と
攻められた際に、▲５六金と上がるしかなく、金銀交換を許してしまう。
図11以下の指し手
▲５六金 △同 銀 ▲同 歩△４五飛（図12）
図12
一方で土居矢倉（参考図９）であれば、△４六歩に▲４八金引と引いて、当たりを避けることができる点で片矢倉より優る。
参考図９
次回から具体的な指し方をみていきます。
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