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必見!京都市観光協会外国語表記ガイドライン

鶴田知佳子

「日本の英語を考える会」として、とても嬉しいことは、日本の多くの方が、日本国内にあふれる「変な/不思議な」英語について考えをめぐらせて、改善点を考えてもらうことなのですが、その意味でまさに「わが意を得たり」と言いますか、大変嬉しく思ったのが先ごろ発表されたこの『京都市観光協会外国語表記ガイドライン』です。

https://www.kyokanko.or.jp/wp/wp-content/uploads/Kyoto-City-Tourism-Translation-Guideline.pdf

このガイドラインは、社団法人京都市観光協会(英語名はKyoto City Tourism Association、略称KTA。最近ではDMO Kyotoとも名乗っているようです。DMOはDestination Management/marketing Organizationの略で、「観光地域づくり法人」として国土交通省に登録することで名乗れるということです。
https://www.mlit.go.jp/kankocho/seisaku_seido/dmo/dmotoha.html )
が、2023年12月から2024年2月にかけて、京都市内の多言語対応を評価する調査を行ったところ、市内の観光施設で500近い翻訳上の問題点が見つかった、ということです。

〇意味の通らない文章や誤解を招く文章といった翻訳ミス
〇文字サイズが小さすぎるという文字サイズの問題
〇訪問者が必要とする配置場面にないという配置の問題
〇多言語表記が必要なのにないという無表記
〇失礼な言い回しになっている言葉づかいの問題
〇日本語や日本文化の知識を前提とした文章は補足がないと伝わらないという情報不足
〇表示が込み入っていて視認性や可読性が落ちるというレイアウトの問題
などの観点から(みんな普段私たちが指摘し続けていること!)、改善点をガイドラインで指摘し、他の自治体にとっても非常に有益な「多言語実例べからず集」になっています。

具体的な例として、施設などの掲示で、「只今の時間は使用できません」という日本語が、The current time is not available(現在時刻が入手できません) と表現されていたということです。これは、自動翻訳(Google翻訳など)をノーチェックで受け入れてしまった誤訳のようで、「只今の時間」が「The current time」、「使用できません」が「not available」と訳された結果と考えられますが、ガイドラインは「自動翻訳ツールは主語や文脈を読みとることができません」、と注意すべき点まで指摘しています。そしてその改善案として、「只今の時間は使用できません」は、ひとこと「CLOSED」とするように提案しています。

この他、「文字が小さすぎる」「適切な表示そのものがない」「表示があっても情報が足りない」などなど、様々な、笑えない(でも笑ってしまう)実例が豊富にあるだけでなく、「業種・施設別の表記方法とテンプレート案」も記載されており、営業時間の表示から購入方法、支払い方法(cash onlyなど)、トイレの場所などについて掲示例も実に豊富です。自治体関係者はもちろん、英語学習者にとっても、読むだけでも楽しく英語表記が学べるようになっています。

☆このガイドラインは、「日本の英語を考える会」アソシエイトメンバーのTim Odagiriさんが、インターネットのニュースサイト「ロケットニュース24」の英語バージョン「SoraNews24」の’Kyoto study finds nearly 500 translation errors for foreign tourists, new guidelines released’ というCasey Baseel氏執筆の2024年5月18日の記事から見つけてくれました。Timさん、ありがとうございます!)

https://soranews24.com/2024/05/18/kyoto-study-finds-nearly-500-translation-errors-for-foreign-tourists-new-guidelines-released/


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