【2023Word】インキャだからモブキャ
加藤 麻子
先日スクールで小6年女子の英語の授業をしていて、お決まりの What's New? を尋ねたところ、学芸会の練習をしていると言う。「何の役をするの?」と訊いたところ「風船売りの役。私ってインキャだからモブキャなんです。」と答えたので、「モブなんて難しい英語知ってるのね。すごい!」と褒めると、「えっ?モブって英語なんですか〜?」と言うので、「そうよ、群衆のこと」と説明すると、「へ〜、日本語だと思ってた。」「その単語、いつから知ってるの?」「えっ、生まれた時からだと思うけど。」と言われてしまった。「モブキャ」というれっきとした和製英語があったのだ。
「インキャ」(陰キャ)は生徒たちから時々耳にしていたが、念の為に解説すると、引っ込み思案で内気な、見た目も地味なオタク気質を言う。この反対が「ヨウキャ」(陽キャ)で、何事にも積極的で明るく、見た目も華やかなムードメーカー。まるで陰陽師のようだが全く無関係で、時代によって「ネクラ」(根暗)「ネアカ」(根明)、「イケテない」「イケテる」などから変遷して今に至るようだ。
「モブキャ」についてさらに小6女子に質問すると面白い答えが返ってきた。モブキャとは、モブキャラクターの省略形で、漫画やアニメでよく言うのだそうだ。テレビや映画などでは「エキストラ」と呼ばれる通行人や観客等その他大勢のことだ。「あの人って、モブっぽいよね。」という使い方をするのだが、人を「ディスる」(揶揄する、否定する)ときに使うそうだ。ややこしいのは、モブの中に偶にいる可愛くて目を引く人物を「モブかわ」と言うのだそうだ。いくつかアニメの例を挙げてもらったが、全く知らなかったので割愛する。
日々作られては忘れ去られるカタカナ語や略語、学生言葉などの隠語はいつの時代にも存在し、時代と共に変化していく。最近個人的に気になるのは、「タイパ」と「エネパ」。順にタイムパフォーマンス、エネルギーパフォーマンスの略だが、既に市民権を得ている「コスパ」(cost performance = 費用対効果) の類である。
「タイパ」は時間対効果のことで、費やした時間に対する成果を表す。例えば、ウェブ授業を倍速で見て短時間で多量の情報を得られたときに「タイパが良かった」と言う。「エネパ」は「かけたエネルギーに対する効果」で、マッチングアプリ等で理想の相手に短期間で出会って結婚した等、正にビッグデータとAIが生み出したカタカナ語である。仕事とプライベートのバランスを求めて限られた時間を効率的に使うことを優先するこの時代、この手のカタカナ語は今後も増えていくに違いない。
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