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怪異実話(7) -槐の木の瘤のこと- ●

#00291 2014.5.2

 昔、唐土(もろこし)のある所に彫物師がおり、ある地方に行く山道で大きな槐(えんじゅ)の木の根の上に瘤(こぶ)のように木肉が張り出しているのを見つけました。その人は「この木の瘤を取って彫物を作れば厚利を得ることができる」と思いましたが、人夫もなく斧も鋸(のこぎり)もないため、どうすることもできませんでした。
 そこで、「このまま放置しておけば誰かに取られてしまう。どうしたものか」と考え、不図(ふと)気付いて懐中より紙を取り出し、銭の形を作って木の枝に吊り下げてその瘤の上に掛けたのですが、それは神木に賽銭を奉ったようにして、他の人に切り取られないようにするという策でした。

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