『仙境異聞』の研究(3) -山人の霊徳- ●
#00138 2011.11.10
平田先生「摂津国の大阪に俗謡を唄う声がとても美しい者がいたが、ある時路上で異人に出会い、お前の声を三十日借りたいので許してくれるかといわれた。その者は何も考えずに承諾したのだが、その翌日から声が潰れて謡うことができなくなった。
しかし、異人に借りられたためとは気づかず、産土神(うぶすなのかみ)である住吉神に祈ろうと思って出かけたところ、途中で例の異人がやって来て、お前は頼み甲斐のない者だ。この度我に声を貸したではないか。にも関わらず、わずか三十日を待たずに住吉神に祈るとはとても憎らしいことだ。お前がそのことを神に祈れば我は必ずお咎めを受けることになる。ならば我もお前をただではおかない。わずか三十日のことだ。約束したように貸してくれ。そうすれば声を返す時に良い呪禁(まじない)法を教えてやろうといった。男はとても恐ろしく思ってすぐに承諾して別れた。
その後三十日ほど声が潰れていたのだが、例の異人がやって来て、今日からお前の声を返し、約束の呪禁法を授けるといった。その法はどんな病気にも良く効験があり、男は謡曲をやめてこの法を行うだけで安らかに世を送ることになったという話を聞いている。
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