【日本遺産ソムリエ寄稿文】日本遺産 大谷石文化 ~いざ、地下迷宮の探検へ!!~
執筆:日本遺産ソムリエ 古橋 貴博
私の住む栃木県宇都宮市では、本市で採掘される大谷石にまつわるストーリーが評価され、平成30年に日本遺産として登録されました。そもそも皆さんは『大谷石』とは、どのような石なのかご存知でしょうか。
『大谷石』とは、宇都宮市大谷地域に分布する『大谷層軽石凝灰岩(おおやそうかるいしぎょうかいがん)』という石材の略称で、今から約1500万年前に起こった海底火山の噴火によってできた地層から採れる石なんです。その頃,栃木県は大部分が海に沈んでいたんですね。(実際に栃木県では古代のクジラの化石も発見されており...その話は別の機会にいたしましょう(笑))
また、大谷石の特性として①火に強く、熱を通しにくい、②柔らかく、加工がしやすいため、古くから建築材料としても使われています。
有名なところでは、フランク・ロイド・ライトが設定した帝国ホテルにも使われていますね。
フランク・ロイド・ライトというとグッゲンハイム美術館などの近代建築が世界遺産に登録されている近代建築家の巨匠の一人です。大谷石は日本遺産だけでなく世界遺産とも関りがあるんですね。
近年では、その特性に加えて、遠赤外線の放射による熟成効果や脱臭効果もあることから、ワインなどの熟成や食べ物の貯蔵、建物の内装に使われています。私も古い蔵や塀に使われているのは知っていましたが、ワインの貯蔵に適していることや脱臭効果があることまでは知りませんでした。大谷石は様々な可能性を秘めたすごい石なんですね!
そんな、すごい大谷石がいつ頃から使われるようになったか、ご存知でしょうか。なんと古墳時代まで遡ります。当時この大谷地域で横穴を掘って墓地として利用されたり、竪穴式住居のカマドに利用されたりと大谷石は当時の暮らしになくてはならない存在でした。また実際に埋葬されたミイラが発見されており、大谷寺の宝物館で見ることができますので、お越しの際は是非ご覧になってください。
その後、奈良・平安時代には日本最古の摩崖仏とされる大谷観音が彫りだされ信仰の場とされていました。
そして江戸時代頃から本格的な大谷石採掘が始まり、当時は農閑期の作業として行われていたそうです。
明治時代以降は採掘産業として本格化し、人車軌道や鉄道等の輸送手段の発達や採掘作業の機械化により出荷量は飛躍的に増加しました。(昭和48年には最盛期を迎え、年間89万トンも出荷していたそうです。)
しかし、機械が導入される昭和30年代までは採掘は手作業で行われ、わずか18㎝×30㎝×90㎝の石材1本を切り出すのに、約4,000回も鶴嘴を振るったそうです。私だったら40回でヘトヘトになりそうです。
そのようにして切り出された大谷石は市内だけに留まらず、東京や横浜にも運び出され、まちづくりに使われるようになったのです。また、途方もない数の石が石工の人たちの手によって切り出され、現在の地下迷宮は出来上がったのです。
ここで、代表的な大谷石建築物をご紹介します。
大谷コネクト(旧大谷公会堂)
もともと昭和4年に旧城山村の公会堂として建築されたものです。
道路拡幅工事に伴い、令和5年に市営駐車場に移築され、大谷地区の観光拠点『大谷コネクト』として利用されています。
カトリック松が峰教会
設計者のマックス・ヒンデル氏は故郷のグロスミュンスター大寺院(スイス)を想いながら教会の設計を行ったそうです。日本では数少ない双塔の教会です。
東武宇都宮線南宇都宮駅舎
2020年に改修工事が行われ、1932年の開業当時の姿が再現されました。腰壁より下が横方向、上が縦方向と石の張り方に違いがあります。
以上が代表的な大谷石建築ですが、宇都宮市内には9,000棟もの大谷石建築があります。
また、大谷石は時間が経つごとに風合いが増すことから使われなくなった建築物がカフェやギャラリーとしても生まれ変わり、市内各所で大谷石造りのお店を見ることが出来ます。
大谷地域で大谷資料館や大谷寺を訪れ、宇都宮市内で大谷建築探しの探検をしてみるのも面白いと思います。どの建物も同じ大谷石ですが表情が違うので比べてみるのも楽しいですよ。(その際は宇都宮餃子も食べていって下さいね。)
いかがでしたでしょうか。大谷石や大谷地域の魅力は伝わりましたでしょうか。ここでは大まかな歴史や建物の紹介をさせて頂きましたが、是非、大谷地域に足を運んでいただきたいと思います。
実際に見て・触れていただくことで、より大谷石の魅力を感じることができると思います。
最後に私自身日本遺産ソムリエであり、今年、大谷石文化ガイドの資格も取得いたしました。ガイドとしてはまだまだ勉強中ですので皆さんと一緒に大谷石や大谷地域の魅力を発見、発信していければと思いますので、一緒に大谷石文化を盛り上げて行きましょう!!皆さんのお越しをお待ちしております!
日本遺産ソムリエになろう
日本遺産ソムリエについて詳しく説明しています。興味がある方はこちらの記事を参照してください。
日本遺産検定のご案内
8/23(金)24(土)25(日)日本遺産検定を実施します。合格して日本遺産ソムリエになろう。
第4回3級検定について3級対策講座【無料】7/24(水)
第1回2級検定について2級対策講座【3,000円】7/12(金)、7/17(水)
日本遺産検定・3級公式テキストのご案内
日本遺産検定を受けるならぜひ読んでおきたい唯一の公式テキストです。受験に向けた知識のみならず、日本の文化遺産に興味のある方にぜひおすすめしたい1冊です。