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【日本遺産ソムリエ寄稿文】『生まれかわりの旅』~樹齢300年を超える杉並木、2446段の石段、現在の幸せを祈る山=羽黒山へ~

日本遺産ソムリエ 川嶋 尚子

日本遺産検定を知る以前に、羽黒山に行って参りました。

当時の私は、仕事にプライベートに忙しく過ごしてきた20代・30代を経て、40代に突入。社内でのポジションや仕事のキャリアも順風満帆ではありましたが、この先の人生、いつまでこの環境下にいるべきなのか?今とは異なる環境下で、違った生き方もありなのか?など、自分自身を見つめ直し、客観視したい年代でもありました。

そんな中、『生まれかわりの旅』というキャッチーなタイトルに惹かれ、興味を持った場所が出羽三山でした。

また、西の伊勢神宮は「西の伊勢参り」、東の出羽三山は「東の奥参り」と呼ばれ、その双方を参拝することは『重要な人生儀礼の一つ』と本で読んだこともありました。西の伊勢参りはすでに経験していた私にとって、出羽三山はまさに訪れるべき場所だと感じたのです。

羽黒山の入り口、随神門から山頂までの約2kmの参道は、日本屈指の段数を誇る2446段の石段で、その両側には樹齢300~500年の杉並木が続いています。

杉並木

参道を進むと、最初に目を奪われたのは、開山当時から人々を見守り続けてきた樹齢1000年を超える「爺スギ」、その先には、素木造りの国宝「五重塔」が佇んでいます。ずっと見入ってしまうほどの威厳さを感じます。

爺スギ
国宝五重塔

石段を一歩一歩進み、途中の茶屋では力餅をいただき一服。その先にある宿坊が、今回の旅の宿でした。

力餅茶屋
宿坊

ここでは、普段聞けないような貴重な話を聞かせていただいたり、真っ暗闇の夜空に輝く月を眺めたり、羽黒山の静寂さを味わいながら、宿坊特製の精進料理も堪能しました。 ここでの精進料理は、神域である山で採れた山菜がふんだんに使われており、美味しいだけでなく、身も心も清められたように感じました。

精進料理

翌朝、山頂にある「三神合祭殿」へ。この祭殿は、豪雪に耐えるための厚さ2.1mの茅葺屋根が特徴です。

三神とは、羽黒山、月山、湯殿山の祭神のことで、雪深く冬になると参拝できない月山や湯殿山の祭神も、羽黒山山頂に合祀されています。

もちろん、三神すべて参拝することができれば良いのですが、なかなか厳しい方にとっては、ここを訪れることで三神を参拝したことになるとされています。

目の前にある鏡池には、銅鏡が埋納されていて、とても神秘的な雰囲気を醸し出していました。

三神合祭殿

また、出羽三山では、それぞれの山に「御縁年」と呼ばれる特別な暦が設けられており、羽黒山は午年、月山は卯年、湯殿山は丑年がそれにあたります。

中でも湯殿山が最後に開山されたため、これを以て出羽三山の全てが揃ったことから、『三山の御縁年』は丑年。この年に参拝すると、12年分の御利益を得られると伝えられています。私はと言うと、残念ながら違う干支でした。

私はヨガが趣味の1つですが、羽黒山(現在の山)から月山(過去の山)を目の前にし、大きく深呼吸。仲間たちとヨガを楽しめたことも貴重な体験でした。

ヨガ

圧倒的な自然の神秘を身体全身で感じられた旅。人生の分岐点に訪れたことで、その先のヒントをもらったように感じています。

※出羽三山 山形県の中央に位置する出羽三山は、羽黒山(414m)・月山(1984m)・湯殿山(1500m)の総称で、月山を主峰とし、羽黒山と湯殿山が連なる優美な稜線を誇っています。 羽黒山は、人々の現世利益を叶える「現在の山」、月山は、高く秀麗な姿から祖霊が鎮まる「過去の山」、湯殿山は、お湯の湧き出る赤色の巨岩が新しい生命の誕生を表すとして「未来の山」と考えられており、この三山を巡ることは、死と再生を辿る「生まれかわりの旅」として古くより信仰を集めてきました。


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