#74 親しみやすさを大切に【日本語教師・大門東陽 先生・日本】
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みなさん、こんにちは。『うれしい たのしい 日本語 さいちゃんねる』日本語教師の さいとう あきひと です。この番組は日本語を勉強している人と日本に関わるすべての人にお送りしています。
はい、今回も前半に引き続いて日本語教師の大門東陽(おおかど はるひ)先生に来ていただいています。大門先生、よろしくお願いします。
はい、よろしくお願いします。
前半のほうでは、なんと簡単だと思ったフランス語から フランス研修に行き、そこから日本語教師になるきっかけが繋(つな)がったということで、いろいろお話を伺いました。前半のほうも聞いてみてください。
はい、じゃ今回後半なので、ちょっと日本語教師になってからのことを中心に聞いていきたいと思うんですけれども、日本語教師として3年目になるということで、今まで日本語教師として、こうやってきて、この仕事の魅力(みりょく)とか、魅力に感じることとかおもしろいなって感じることってありますか。
そうですね、やっぱこうあの、学習者の皆さんと顔を付き合わせて、あの日々授業をしているので、あの、自分が放(はな)った日本語たちが学習者の皆さんに伝わって、自分の視界にいる学生のみんなが「うん、うん」みたいな感じでうなずいたりとか、わかったみたいな顔をしてくれたりするのがやっぱ一番、達成感(たっせいかん)というか、心が 充実(じゅうじつ)しているなぁと思う瞬間ですかね。
大門先生って、あの、コロナウイルスがはやってた時は日本語の先生にはまだなってなかったって ことですよね?
そうですね、私が4月に日本語教師になってから5月に、あの、インフルエンザと同じ位置づけに、五類に落ちたので私が日本語教師になってから、あの、学生の数が、あの、学校さんでも増えたかな っていう。
なるほど。じゃ、ちょっと戻ってきた時に大門先生が日本語の先生になった ので、だからオンラインでの授業はないってことですよね、今まで。
そうですね。あの、日本語教師の育成講座の時に、あの、教育実習という形で、あの、生活者として日本にいらっしゃる方々に協力していただいて、こう日本語の授業をやってみようみたいな形でなら、オンラインでやったことはあるんですけど、ただ、あの、本番というかは全部対面で、はい。
そうなんですね、じゃ、もうその対面でこうダイレクトに学生からの反応が くるという、そういうご経験で今までされてきたっていうことですよね。
逆に、その学生の反応が「あれ?」っていう時ありますか、やってて。
いやもう、最初の時はよくありましたね。特にやっぱ名詞だとか動詞っていうものは すぐパッと日本語訳、あ、自分の母国語訳で理解できる学生が多いので特に問題はないのかなと思うんですけど、ただそのやっぱ副詞(ふくし)とか、ああいうものだと、なんかこう例文ありきで教えないと難しいものもあったりして、その説明をしたりする時に、「は?」みたいな顔になったりすることが、あの、ちょくちょくあったので。
その例文が学生にフィットしてないっていう感じですか。
そうですね。あの、学生の生活に寄り添(そ)えて ないものだったりとか、そういうのがあったりして。そうですね、それでうまく伝えるにはどうしたらいいかなぁと 試行錯誤(さくご)してっていう、最初。
授業でそうなっちゃった時って、どんなふうにされてるんですか。
授業でそうなったときは、うなずくまで離さないっていう感じです。
え?うなずく、学生が?
学生がわかったっていうふうな雰囲気になるまで 逃がさないという。
ああ、そういう離さないね。
「ああ、もういいよ」っていうぐらい 説明したり、もう言葉がない状態で何秒ぐらいかこうジェスチャーを頑張って してみたりっていう感じですかね。 ご経験を重ねるにしたがって、そういう学生の「ん」とか、はてなマーク、「あれ?」みたいな、そういうのって減ってきました?
そうですね。学生スキーマというか、みたいなものが僕の中にだんだんと入ってきて、なんとなくこれを言えば、学生が今持っている知識から説明がつくかな、とかっていうのは、それとなく、はい、つかめてきてるのかなと思った、はい。
じゃ、感覚としてわかってきたところもあるんですかね。
そうですね。
そうですか。
じゃ、その、今学生とのお話も聞いたんですけど、この日本語教師というお仕事をされる中で 大門先生が大切にしていることって何ですか?
そうですね。
やっぱり人と人で作っていくものなので、授業がやっぱ一番大事かなっていうふうにはもちろん思っていて、その中で大事なことってなんだろうと思った時に、やっぱこう、親しみやすさかなぁっていうふうに思って。なんか質問しにくかったりとか、なんかこう、その先生に対して自分の日本語を投げることが怖いと思われてしまったら、もう終わりだなっていうふうに思うので、やっぱこう、ある程度のほがらかさとかいうのは、あの雰囲気でも伝わるように、 あの、なるべくこう、口角(こうかく)は緩(ゆる)めに…
表情から。
はい、…は心がけてるかなと思います。
大門先生、話しやすい、実際話しやすいし、話しやすそうだから、初めましての時からね。学生にも伝わってるはずですよね、そういうのって。
なら、いいです。
よかったです。
今、専任の先生されてるので、学生とのこの人間関係以外にも、同じ専任の先生との関係とか、 あと非常勤講師の先生もたくさんいるじゃないですか。 そういう同じ教員として働いている先生との関係で、なんか大切にされていることってありますか。
そうですね、やっぱりこう 言葉づかいとか、言葉の感覚は、こう自分がいいと思うものを選んで、 言葉にしてるかなっていうのはすごく思いますね。
自分がいいと思うものっていうのはどういうことですか。
例えば、「何々してください」というよりは「何々していただいてもいいですか」。
ああ、日本語的な。
「 何々していただいてもいいですか?」っていうよりは、「 何々していただいてもいいですか~…」みたいな感じで。
はい、言い方ですね。
そうですね。自分をこう、弱く見せることを心がけているかもしれないです。
ああ、そうなんですね。弱く見せちゃうと、なんか逆になんか「こいついける」と思って強く来たりする人いないんですか。そんな、あ、そんな悪い人いないか。
そうですね、そんな。
問題発言しちゃった。
やっぱなんか先生という職業を選ばれている方々なので、 ある程度はやっぱあの優しい心をお持ちなので、 そういう弱い大門を見せても、そんなにこう、それにかこつけて、 すごくワーってなる先生はいらっしゃらないですかね。
それはあれですか、あえて弱い感じで見せてるんですか。
そうですね。
そうなんですね。
なんか弱いほうが、なんかこう自分としてもやりやすいというか、 弱くあるほうが動きやすい感じがすごいしてて、 なんか何でもできますとか、すごい、 あのそういうスタンスでこう、仕事をしていると、どうしても相手に伝わってしまって、 やっぱ経験が浅いのもあるので、なんじゃこいつ?みたいな感じになっても困るなぁっていうので、 私なりの処生術(しょせいじゅつ)というか。
処生術(しょせいじゅつ)はね、大事ですよね。 でもあれですかね、弱いっていうか、こう謙遜(けんそん)するっていう感じですかね。
そうですね。
謙虚(けんきょ)にいくっていう。
はい。
ね、なんか弱いって言うとさ、こう強弱関係みたいに感じちゃうけど。 ね、なんか主人と下部(しもべ)みたいになっちゃうけど。
学生に対してやってることと同じなような気もしますね。 なんか、とっつきやすさというか、あの、この先生に話してもいいって学生に思ってもらえるようなことを、 他の先生にも思ってもらえるようにっていう側面(そくめん)が強いかなと。
別に大門先生、なんか僕、そのままでも全然いいような気がしますけどね。 本当ですか?
え、今弱く見せてるんですか??
今、全然、何の意識もないですけど。
何の意識もないっていうのは。
何の、この言葉のコントロールもないような感じで。
なんかそれでもいいような気がしますけどね、私は。
本当に?
うんうんうん。
なんか全然嫌味(いやみ)じゃないし。
本当ですか?
あの、「こいつ」っていうのも別にないから。
なんか自分よりも明(あき)らかにこう立場も年齢も上でっていう先生とかに時々、 あいづちで「うん、うん」って言ってしまうことがあるんです。 それもう言葉に出た瞬間に、自分の言葉を自分で聞いて「あ、しまった」って思うんですよ。 なので、「あ、はい、はい」っていうふうに変えたりとか。
えらいですね。 えらいですねって。
出ちゃうから、 気をつけなきゃなって思います。
けっこう僕、なんか「うん、うん」とか言ってる。 昔から言ってるかもしれないけど。
でも、キャラクターがあるから、 あの、さいとう先生が「うんうんうん」とおっしゃるのと、私が「うんうんうん」と言うのとではちょっと伝わり方が違う。
えー、そうかな。でも大門先生、許されるキャラクターじゃないですか?
なんか最近やっとそういうふうに思ってもらえてて、なんかいじってもらえることも多くなったというか。
やっぱりなんか、それって素(す)を、ある程度、素を出してきてるからですかね、前より。
ですかね。
なんかそのほうがいい気がしますね。
本当ですか。
うん。
うん、そうですね。
でもね、なんかその、ちょっと謙遜っていうか弱く見せるって、さっき言われてましたけど、その感覚はなんかわかる気がする。
本当ですか?
本当ですかって。そんな時代もあったんですよ。
これ、なかなかわかっていただける人そんなにいなくて。
ああ、でもすごいわかります。
でもそれをやってると、どんどんなんかしんどくなってきて、で、自分の年齢も上がってくるじゃないですか。
はい、はいはい。
じゃ、ちょっとこうだんだん神経(しんけい)が太くなってくるでしょ。それにともなって…
なるほど。
…なんか、そんなことしなくてもいいかみたいな。だんだんそうなってきた 。反比例していったかも、そういうの。比例なのか反比例なのかわかんないけど。
なるほど。
そう、「したがって」です。年をとるにしたがって。
そうですね。僕もその道をたどることになるかもしれないです。
うん、なんかわかる気がします。ま、なんか人に対して、学生に対してでも 同じ、先生同士でも、やっぱりこう、謙虚にいるっていう気持ちはすごく大切かなと思いますよね。
はい、そうです。
私も自分自身への自省(じせい)もこめて話を聞かせていただきました。
じゃ、あの、今のことをいろいろ伺ったんですけど、今後、これから大門先生が日本語教師としてやってみたいことって何かありますか。
そうですね、やっぱまずは、より上のレベルを教えられるように、日本語教師でやっぱ一番大事なのは授業力だと思うので、授業の力だと思うので、そこが伸ばせるように、皆さんのお姿を見て…
言葉を選んでいますね。
…いろいろ勉強させていただきながらではあるんですけど、そこを伸ばすのがまず一番だと思っているし、一番したいことでもあるかなと思います。
じゃ、以前の学校でも初級、初中級だったんですか。
前の学校は初級だけをやっていて。
あ、はい。
そうですね。
じゃ、中級以上はこれから経験を積んでいくっていうところですかね。
はい。
そうですか。じゃ、今後は中級から上級も教えていきたいということで。
日本語のお仕事以外でこれからやってみたいことってあるんですか。
そうですね。スポーツを定期的に休みの日とかにしたいなと思っていて、なんか基本的には出不精(でぶしょう)なので、ときどきは散歩に行ったりはするんですけど、それでもやっぱり休日は家で過ごすことのほうが圧倒的(あっとうてき)に多いので。
そうなんですか、けっこうすごく出かけてるのかと思ってました。
見たい映画があったりすると、映画館で見るほうが好きなので、足を運んだりとかはあるんですけど、まあなかなか「これだ」という目的がないと、あまり出かけないので、そういったところをスポーツの力を借りて実現できればなと思ってます。
例えば、やりたいものはあるんですか。
バスケットボールですかね。
今までされてたんですか、昔。
そうですね。高校の時だけなんですけど、あ、大学でもちょっとやってました。一番動くし、地域のそういったものがあれば参加したいなと思ったり。
ああ、そうですか。それでまた体力がつくと、お仕事にもいかせるかもしれないですもんね。
そうですね。
日本語教師って体力勝負(しょうぶ)なところもあるから。
そうですね。最近は授業が終わって自分の席に戻って、いすに座ると、どうしてもこう、大きい呼吸(こきゅう)をしてしまうので。
どういうことですか、大きい呼吸って。深呼吸(しんこきゅう)?ためいき?
ためいきとはまたちょっと違いますけど「ほう…」みたいな感じの声がどうしても出てしまう。
ちょっと一旦(いったん)落ち着いた、みたいな感じですかね。
もうちょっと体力つけなきゃなと思います。
わかります。午前中4時間授業やったらすごい、すごいこうね、もう1日終わった感じの、体の感じがしますよね。
はい。
わかりました、ありがとうございます。
じゃ、後半(こうはん)のほうでいつもゲストの方に聞いている質問なんですが 日本語の中で大門先生が好きな言葉(ことば)とか表現とか、そういうものを教えていただきたいんですけど。
はい。私が好きな日本語の表現になるんですけど『舌鼓(したつづみ)を打(う)つ』という言葉ですかね。
日本語を勉強している人の中には これはなんだ?って思う人がいるかもしれないですけど、「舌鼓(したつづみ)」、 「鼓(つづみ)」は太鼓(たいこ)ですよね、日本のね、昔の太鼓ですけど。どういう意味か、ちょっとだけ言ってもらってもいいですか?。
はい、「舌鼓を打つ」っていうのは、「主(おも)においしいものを食べたときに『ああ、おいしい』って、おいしさを強く感じること」ですけど、僕はラーメンがとても好きなので、特に健康に悪ければ悪いほどおいしいと思って。
ジャンキーですね。
そうですね。油がいっぱい入ってたりするものが一番おいしいと思っているので、そういうものを食べたときに疲れが飛んでいくというか、「ああ、おいしい」って、僕の口の中で太鼓をポンポンと叩(たた)きたくなるような 瞬間があるので、そういったときに『舌鼓(したつづみ)を打(う)つ』っていうふうに使う言葉で、はい。そういう「おいしい」って言えばいいと思うんですけど、わざと『舌鼓(したつづみ)を打(う)つ』っていうことに、日本語のきれいさがあると思っていて、言いたいことを直接伝えるんじゃなくて、少し遠い道を歩いて、言いたいことを伝えるっていうのがすごくすばらしいなと思って。言った本人もそうだし、それを相手に言って、相手がわかるっていうのがすごくいいなと思ってて。その中でもいちばん日本っぽい『舌鼓(したつづみ)を打(う)つ』を選ばせていただきました
へえ。最初聞いたとき、どうしてこれなんだろう?ってすごい思って。おもしろいけど、なんか岡田先生らしいなとも思ったんですけど。授業の中でもそういうお話されることもあるんですか。日本語の表現とか。
学生がわかりそうなものであれば、ちょっと説明してみてっていうところは、あの、よくありますかね。
楽しそう。自分が外国語を勉強するとしてもね、そういうお話って、してくれるとおもしろく感じますよね。
そうですね。
うん。最近、舌鼓(したつづみ)を打ったものは何ですか。
最近、舌鼓(したつづみ)を打ったものは、そうですね、この正月に「おせち料理」をちょっと取り寄せて食べまして。で、そこに入っていた黒豆(くろまめ)がすごくおいしくて。舌鼓が10回ほどなりましたかね。
数えたんですか?
心の中で10回ほど鳴らしました。
それは多いのか、少ないのか、ちょっとわかんないですけど。比較(ひかく)対象がないから。
そうですか。
はい。
じゃ、黒豆たくさん食べたんですね、じゃ。
そうですね、黒豆がすごく好きで。
ああ、おいしいですよね。いいものはすごくおいしい、黒豆ってね。
じゃ、今年はまめに働くということですね。
おっしゃるとおりです。
まめに毎日コツコツ一生懸命働いていくという年になるということで。
そうしたいなと思います。
なるほど、はい、ありがとうございます。
はい、じゃ大門先生、後半のほうもいろいろなお話、聞かせてくださって、ありがとうございました。
こちらこそ、ありがとうございました。
今、大門先生と私が話した言葉を文字で「note」というウェブサイトに書いていますので、日本語を勉強している人はそちらも見ながらもう一度でも聞いてみてください。あと「日本語さいちゃんねる」のインスタグラムのアカウントがありますので、そちらもぜひチェックしてみてください。
じゃ、大門先生、前半と後半、長い時間になりましたけど、お忙しいところ、ありがとうございました。
いえいえ、とんでもないです。ありがとうございました。
ぜひまた来てください。
ぜひぜひ。
上級になった時にまたお話を聞かせてください。
お願いします。
はい。皆さんに、うれしい・たのしいことがたくさんありますように、心からお祈りしております。じゃ、体に気をつけて過ごしてください。
さようなら。
さようなら。
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