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多様性を尊重する日本語レッスン

近年、多様性やインクルージョンへの意識が高まるなか、教育現場でもこれらの価値観をしっかりと反映することが求められています。日本語を教える際、私たちは無意識のうちにステレオタイプや偏見を取り入れてしまっていないでしょうか?特に言語教育では、使う教材や授業でのやり取りが、学習者にどのような影響を与えるかをよく考える必要があります。

多様性を考慮して質問する

たとえば、レッスンの中で年齢や国籍、家族構成などの個人的な情報を学習者に質問したりすることがよくあると思います。学習者のほうから言ってきた場合には、その情報を使うことは問題ないかもしれませんが、こちら側から質問する場合、その質問が学習者にどのような影響を与えるかを意識しなければなりません。
学習者の背景は多様であり、プライバシーや文化的な感受性に配慮することが重要です。たとえば、年齢や国籍、家族に関する情報のような、日本社会では許容可能な何気ない質問でも、学習者によっては不快に感じたり、答えたくないと感じることがあるかもしれません。そのため、レッスンではこうした質問を避けたり、どうしても必要であれば事前に了解を取るなどの対応が求められます。ただし、必ずしも、質問を避けることが多様性を尊重することではありません。質問自体は問題ない場合も多いですが、その質問が学習者にとって適切かどうか、またどのように聞くか、そして学習者からの回答に対して講師がどのように反応するかも重要です。
こうした配慮を実践するのは、最初は難しさを感じるかもしれません。とくに慣れないうちは、配慮をすることが面倒に思えることもあるでしょう。しかし、もしそのように感じるのであれば、それは学びの機会かもしれません。多様性への配慮を深めることは、講師としての成長にもつながります。多様性への配慮は不可欠です。具体的な解決策の一つとしては、ロールプレイで架空の場面や人物を設定し、学習者が自分の個人情報を言わなくてもよいように工夫することなどが考えられます。

ステレオタイプに注意した教材選び

また、教材あるいは自作の例文や練習問題などが、ジェンダーや民族、宗教などに関するステレオタイプを含んでいないかを確認することも大切です。たとえば「男性は仕事、女性は家庭」といった従来の役割分担を強調する内容があれば、それは現代の価値観にそぐわないといえます。こうした教材や例文をどうしても使わなければならないときは、学習者に対して「これは日本社会の一例であり、現代社会では多様な価値観が存在する」などと明確に伝えることで、ステレオタイプを是認するわけではないということを明言する必要があると思います。

多様性を尊重する授業の進め方

もし、どうしても社会的な常識や日本社会の現実を説明するためにステレオタイプに触れる必要がある場合は、その点について慎重に扱うことが求められます。たとえば、「これは一部の社会的背景を反映したものであり、すべての人に当てはまるわけではありません」といった説明を加えたりすることで、講師がそのステレオタイプを是認しているわけではないことを明確にすることができます。こうした配慮を示すことで、学習者が安心して学べる環境を提供することができると思います。

多様性を尊重するレッスンを行うことは、日本語を教える私たちにとって重要な責任です。SuikaTalkの講師には、多様性を尊重していただきたいと考えています。学習者はそれぞれ異なる背景や視点を持っています。そのため、すべての人が安心して学べる環境を提供することが重要です。こうした配慮を持つことで、より豊かな学びの場が生まれると私は信じています。

日本語講師向け説明資料は以下からダウンロードできます。
https://drive.google.com/drive/folders/1dVBfKojjMOgTx_jzcz7z2jkJUbzfGo4-


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