みんなの日本語第1課・文型分析まとめ(パワポ画面PDFデータ付)お試し無料記事
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こんにちは【日本語教師になる】ももこです。
この動画は、日本語の授業をする人のための動画です。しばらくは、日本語の教科書「みんなの日本語」に沿って動画を作ります。「みんなの日本語」教材分析動画です。文型を分析し文型に関する知識、注意すべき点、などをまとめます。日本語教師養成講座420時間で模擬授業に臨んでいる方や、採用面接用の模擬授業を控えている方、採用されていよいよ授業を行っていこうとしている方におすすめの動画です。動画視聴後、適切な教案・教材を作る知識を得ている状態を目指します。
今回は、「みんなの日本語第1課」をまとめます。
今回の動画では
● 学習目標
● 文型
① ターゲットの文型を確認する。
② 各文型の解説
● この課でできる活動例
● 学習者には伝えないが、教師が知っておくべきこと
という内容でまとめていきます。
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みんなの日本語第1課
いよいよ、今回から本格的に教材分析し、まとめていきます。
この緑シリーズがどういうコンセプトで、どういうふうに進めていくかについては、過去の動画「「みんなの日本語・教材分析動画」のオリエンテーション」「みんなの日本語の注意点と教えるときのももこ的極意!」をご覧ください。
この課を教える全体像を掴みやすくするため、まずは「この課を勉強することでできるようになること=Can-doの確認=学習目標」を先にご紹介します。
こういう感じの学習目標になるんだな〜と思いながら教材分析の内容を聞くと、みなさんの頭の中で、教材分析後の活動(応用練習)や例文を考えるためのスキーマが活性化されるかな?と思います。
この第1課では、
● 学習目標:初対面の人と簡単な挨拶や自己紹介ができる。
自分の名前、国、仕事を相手に言ったり、聞いたりできる。
およそ、こんな感じになると思います。
第16回の動画「異文化適応」でお話ししましたが、異文化に適応するためには自己開示が必要で、自己開示をするには自分のことについて話したり、相手の自己開示を聞いたりする必要があります。この課の内容を学んだとしても、実際に自己開示するかどうかは本人次第です。しかし、自己開示したいのに方法を知らないのでは、ただの機会の損失。実際に使うかどうかは別にして、自己開示の方法として内容を理解してもらいましょう。
これは、私からの余計なお世話ですが…
第1課は日本語らしい文章を取り扱う、初めての課です。学習者は、きっとこの初めての課の授業を受けるにあたり、緊張と不安でいっぱいで授業に臨むのだと思います。ぜひ日本語を好きになってほしいですよね。それは授業をする、教師であるあなたにかかっています!ですから、この第1課に限っては学習目標の他に教師の特別授業目標として…
● 教師の特別目標:日本語を楽しいと感じてもらう!
そのために、
いっぱい笑って、いっぱい目を合わせて、いっぱい微笑む!
(具体的には、通常の3割り増し)
こんな教師の裏目標を設定してはいかがでしょうか?
● 文型
① ターゲットの文型を確認する。
この課で教える文型を確認します。「みんなの日本語、どんな教科書?使い方?」でも説明しましたが、教える文型は練習A(8ページ)にまとめられています。p.6にも「文型」はありますが、ももこ的には見出しみたいなものなので、参考にしつつ、動画の中では練習Aで確認します。
8ページを見ると、6番まで番号が振られています。学習項目一覧で軸にされているのはこの6つの文章です。
このターゲットの文型を文法説明風に書くとこうなります。
みんなの日本語第1課で教えることをざっとまとめるとこんな感じです。
・4番以外はN1に人を入れます。
・6番は⒈の亜種です。
「N1は○さいです。」という、N2=数字+歳(文法的にいうと数詞+助数詞)というパターンなのですが、助数詞(歳、冊、本など)のついた数字は読み方が特殊です。⒈番と一緒にやっちゃうと頭がパンクします。なので、「数字+歳(助数詞)」を取り出して学習できるよう、別にしてあります。洗剤と同じで「まぜるな危険」というわけです。
この「まぜるな危険」の⒍番はおいといて、1課では原則的には、この⒈〜⒌番の基本5パターンの文型を学習者にわかって貰えばO Kです。ただ、この基本5パターンの文形だけで自然なやりとりまでできるか、と言われると…残念ながら答えは「NO」です。既習項目のない1課の場合、特に無理です。ですから、教えてはいないものの、自然な会話にするために、まだ教えていない動詞文を一部使用します。使用する動詞文は、特に文法説明などはせず、さらっと入れ込みます。前回の動画「3つの注意点」でお話しした「ターゲットではない文章をさらっと入れ込む」っていうやつです。
後ほどターゲットではない文が出てきますので、ぜひチェックしてください。
② 各文型の解説
では、ターゲットの文型を一つずつ説明します。
⒈ N1はN2です。
N1に「わたし」「人の名前」
N2に「名前、身分職業」 を挿入し、
この文型を覚えると、自分や人について説明できるようになります。
例えば、
・わたしは (名前) です。
・わたしは (身分職業) です。
この文章の(空欄)を埋められれば自分のことを紹介できます。
「みんなの日本語」p.8練習Aを見てください。こんなふうに書いてありますよね。
ここに間が空いているのには意味があります。(➡️のところ)
上がN1=私
下がN1=私以外 という違いです。
上から説明します。
上は「N1=わたし」になっていて、「N2=名前、身分職業」を入れます。ここで挿入されているのは「名前=マイク・ミラー」と「職業=かいしゃいん」です。この2つの名詞は特にN1に何が入ろうと問題なくN2に当てはめることができます。
次に下を説明します。
下は「N1=ワンさん=私以外」になっています。そして、「N2=国名+じん、いしゃ」が挿入されています。実は、このN2に入る2つの名詞「国名+じん、いしゃ」は、N1に何が入るかによって注意が必要な名詞です。
【国名+じん】
「国名+人です」と言う言い方は、文法的な観点からは「私」についても言えることは言えます。「わたしはアメリカ人です。」この文章は文法的な間違いはありませんよね。しかし、自己紹介の場合、「私はアメリカ人です」と言うより「わたしはアメリカから来ました。」の方がより自然です。社会言語学的能力ってやつです。なので、自己紹介の際には、「〜から来ました」の方を使う方が良い、と考えられています。そのため、教科書をよく観察してみると「わたしは〇〇人です。」という文章は出てきません。全て第三者について話すときに「〇〇さんは〇〇人です。」という使い方をしています。
このことから、N1にわたしを入れる文を教える段階では、「国名+人です。」という言い方は導入しないほうがいい…と思います。
※国名を文字で書く場合、「日本」「中国」「韓国」「台湾」以外はカタカナで表記することが普通です。教えている学習者に合わせて紹介してください。
学習者に特別時間をとって教える必要はないですが…国名のアクセントに関して、教師に知っておいて欲しいことがあります。
通常→ ブラジル¬じん アメリカ¬じん ベトナム¬じん
例外→日本じ¬ん
「日本人」は、アクセントの滝の位置が違います。
【先生と呼ばれる職業に注意!】
「先生」と呼ばれる職業は注意が必要です。先生という言葉は「敬称」なので、自分には使いません。
例えば、英語教師の場合、
・人の職業について言う時=「〇〇さんは 英語の先生です。」と言いますが、
・自分の職業について言う時=「わたしは英語の教師です。」と言います。
医者の場合、
・人の職業について言う時=「〇〇さんは 医者です。」または、「〇〇さんは 病院の先生です。」と言いますが、
・自分の職業について言う時=「わたしは医者です。」と言います。
みんなの日本語をよく観察してもらうとわかると思いますが、「わたしは先生です。」という文章は出てきません。「先生」が使われるときは、「〇〇さんは先生です。」という形で提示されます。
練習Aの⒈の文型ではい「いしゃ」となっていますが、この「いしゃ」という職業にはこのような注意点があることは知っておきましょう。
みんなの日本語では、身分職業のバリエーションを覚えてもらうため、N1を「わたし➡️人の名前」に入れ替えて、身分職業の語彙を提示しています。推測で理解できる適正量の、絵カード、文字カード、例文などを利用し、推測し理解してもらいましょう。提示する身分職業は、N1にわたしでもわたし以外でも差し支えない、身分、職業を導入するようにしてください。
初級の最初は言葉で説明しても、そもそも教師が言っている説明を理解できない状態です。ビジュアルで表しやすい職業や、聞いたことがある確率の高い、よくある職業を提示すると推測してもらいやすいと思います。みんなの日本語の教科書を積極的に使う場合には、教科書に載っている職業を押さえておくといいと思います。
また、レディネス調査で、学習者の名前、職業についてはあらかじめわかっていると思いますので、提示する中に、無理のない範囲で学習者に該当する職業を混ぜ込んでおくと、この後、学習者に自分について発表してもらうための作業がスムーズに進むと思います。
・わたしは 名前 です。
・わたしは 身分職業 です。
を理解してもらえたら、学習者にクラスメイトに向けた自己紹介をしてもらうといいと思います。
その際に、ターゲットの文型ではないですが、自然になるように
初めまして。
わたしは (名前) です。
わたしは (身分職業) です。 に続けて…
(国) から来ました。よろしくお願いします。
という型を紹介するといいと思います。フォーマルな場面でも使える、きちんとした自己紹介です。
この中で 「(国)から来ました。」の部分は、今回、教えてない動詞文です。より自然な流れの発話になり、真正性が出るため、この一文を差し込みます。これが「教えないのに入れ込む、ターゲットではない文」です。チャンク(塊)として、さらっと入れ込んでください。みんなの日本語7ページの会話の中でも、ミラーさんが「アメリカから来ました。」と言っています。詳しく教えるとワケがわからなくなりますので、深追いはしてはいけません。チャンク(塊)として、このまま学習者に覚えてもらえば十分です。
教科書の会話の中で「アメリカから来ました」に続いてミラーさんは「どうぞ、よろしく」と言います。これ、わたし、めっちゃひっかかるんですけど、みなさんどうですか?「どうぞ、よろしく」なんて普段言わないな〜とわたしは思うんです。なんか、おじさん臭っ!て思っちゃう。なので、わたしは「よろしくお願いします。」を教えたいです。
一応、みんなの日本語教え方の手引きによると…
「よろしく→どうぞよろしく→どうぞよろしくお願いします」の順で丁寧度が上がる、と書いてあります。確かにそうだけど、やっぱ、どう考えてもおっさん臭い。
私的には
「よろしく→お願いします。→よろしくお願いします。→どうぞ、よろしくお願いします。」の順番で丁寧度が上がると思うのですが…。
みなさんはどう感じますか?
ここで今一度、まぜるな危険の警告です。
・⒍の文型(文型⒈の亜種)の「N1は○さいです。」は文の形としては同じですし、自己紹介の時に使っちゃいそうになるのですが…数字+助数詞はややこしいので後回しです。混乱を招くので、この時点では、年齢については触れないように。
例えば、こんな風に板書し
この板書を見ながら、自分に該当するものを穴埋めして言えば、簡単な自己紹介ができます。ちなみに、この文章は、多分、みんなの日本語の編纂者も、「覚えて欲しい!」「大事だぞ!」と思っている文章だと思います。なぜなら…この、第1課最後p.13の中でも、最後のトリを飾る穴埋め問題の文章だからです。
穴埋めをしてこの文章が言えるようになったら、自己紹介ができます。ぜひ、一人ずつ発表してもらいたいですよね〜。「発表=自己紹介」になりますから、いきなり実践できて達成感もあります。
発表の後は、必ず大きな拍手と笑顔で頑張りを褒めましょう!
何歳になっても、人は褒められると嬉しいものです。相手が誰であろう、年上だろうと年下だろうと、関係ありません。先生であるあなたから褒められたら嬉しいはずです。ですから、全力で褒めます。褒められると達成感が倍増します。思いっきり褒めて達成感を倍増させましょう。ここでの達成感が、次への原動力になるからです。
さらに、
ももこ的ポイント!:褒めるときは、口で褒めずに目で褒める。
誰かを褒めるときのテクニックだと私は思っているのですが…「口で褒める」と嘘くさく感じられ、「目で褒める」と思うと、真実味が感じられる!と私は思っています。目から「いいね!」ビームを出しているんだ!とイメージするだけです。騙されたと思ってやってみてください。
さらに、これは私の余計な提案ですが…
発表してもらった情報を、黒板に向かって右端にまとめるのはどうでしょうか?
こんな感じです。
学習者の人数にもよりますが、できるだけ、その1時間、消さずに残しておける場所であるといいと思います。クラスメイトの名前を覚える事ができるので、学習者側として、非常に助かるからです。私たち教師にとっては、学習者の名前を使うのは授業中です。しかし、学習者にとっては、名前の情報を使うのは、授業の後!授業の後に話しかけるために、名前の情報は必要なんです。ですから、この第1課の時間、できるだけ長く名前の情報を残しておいてあげると、クラスメイト同士が仲良くなるきっかけになります。ほんのちょっとしたことですが、クラスの雰囲気を良くするためのコツです。
⒉. N1はN2じゃありません。(丁寧→ではありません。)
2は1の文型の否定の形です。初級の場合、普段の生活で文章でのやりとりよりも、口頭でのやり取りの方が多いため、話しことば「じゃありません」の方を優先的に教えています。話しことばでカジュアルな場面では、「じゃありません」を使い、書きことば、丁寧な場面では( )の中の「では」を使う、という使い分けです。
この2番でも、この部分に間が空いています。
N2に入れる語彙は、N1が私か、私以外かによる注意をしなければなりません。
1でも説明しましたが、先生と呼ばれる職業には注意です。私の職業について話すときは、先生は使いません。「教師」と言います。
また、「国名+じん」が、ここでも登場しますが、これも1と同様、「N1= わたし以外」であれば、不自然ではないので使えます。
文型の説明は以上ですが、この文章って、使うとき普通
Nですか。
N1はN2じゃありません。
先に「Nですか。」という質問に対し、その答えとしてN1はN2じゃありません。って答える方が会話としては自然じゃないかな?と思います。こういう時は適宜、教えやすいように文章を差し込んで教えてればいいと思います。
例えば…
先ほど私からの提案でお見せした板書と残した右端のメモを活かし、教師が質問をするのはどうでしょうか?
・シンユエさんは学生ですか。(メモによると、シンユエさんは会社員ですよね)いいえ、学生じゃありません。会社員です。
(では)
みたいな教え方ができると思います。
文末に助詞「か」をつけることで疑問文ができることを印象的に指導しましょう。
ただし、シンユエさんは学生ですか?みたいに「か」だけ大きく発音するような印象の付け方をすると、学習者がまねをしてしまいます。変な喋りグセがついては困ります。大きさでの印象ではなく、発音する際に、しっかり「本当に質問しているかのような演技(表情)」をすると印象付けられます。恥ずかしがってはいけません。学習者に誤解させないよう、伝える義務があるんだと思いましょう。日本語教師の仕事は、半分俳優・女優みたいなもんです。笑 せっかくなんで、俳優・女優になったつもりで試しに私と一緒に読んでみてください。
・マイクさんは学生ですか。
はい、学生です。
前回「みんなの日本語・注意点」の動画でも言いましたが、人は、他人とのコミュニケーションの際、情報源として、全体の70%をノンバーバルによる情報に頼っているわけですから、ノンバーバルコミュニケーションを使わないのはもったいないです。笑
⒊ Nですか。練習A−3
この文型の➡️の間はなぜ空いているか、わかりますか?
上は「はい/いいえ」で答えてもらうクローズド・クエッション
下は自由に答えてもらうオープン・クエッション
この違いがあるからです。
・あの人はきむらさんですか。(クローズドクエッション)
➡️はい、きむらさんです。(肯定)
➡️いいえ、きむらさんじゃありません。(否定)
これがわかれば、自分が思っていることが正しいか、相手に尋ねることができます。
そして、
・あの人はだれですか。(オープンクエッション)
➡️あの人はマリアさんです。
これがわかれば、知らない情報を得ることができます。世界を広げる大事な文章ですね。
ここでも「あの人」「だれ」をチャンク(塊)として入れ込んでいます。
※ 「こそあ」については第2課以降で詳しく学習します。
・あの人、だれ=普通
・あの方、どなた=目上、年上の場合、フォーマルに言いたい時
という使い分けがあることを教師は知っておきましょう。
フォーマルに言うには
あのかたはどなたですか。 と聞きます。
教えるときの注意です。相手に名前を聞く場合
×「あなたは だれですか。」→目の前の相手に対して使いません。本人に名前を聞くときは「失礼ですが、お名前は?」と聞きます。…とp.11練習C−2に提示されています。
ただ、この書き方だと実際のニュアンスとはちょっと違うな〜と私は思います。
私はなんか…
「あのぅ…、失礼ですが、お名前は…」みたいな感じで聞くと思います。ただ、言い淀みによる質問は(文章だけでは)理解するのが難しいので、妥協案で「失礼ですが、お名前は?」なのかなと思います。
⒋ N1のN2です。
N1部分がN2を修飾する関係です。N1とN2を、助詞「の」で結んで作ります。(日本語文法ハンドブックp.30)
N2に身分・職業を入れ、N1でその身分・職業について詳しくしています。
詳しくするために、この⒋では、N1はN2の所属先になっています。
何度も復習ですが、先生と呼ばれる職業は
※自分の職業について言う時=「教師」
※人の職業について言う時=「教師」または「先生」
「先生」「教師」は使い分けます。
教師、医者の場合、自分に「先生」を使わない!ということを注意しましょう。
⒌ N1もN2です。
N1(主題)が変わっても、N2が同じ場合、助詞「は」➡️「も」に変えます。
※「も」は、 とりたて助詞「並立」です。
・同じ国籍、職業の人を取り上げると伝わります。
同じ特徴があることを言う場合、「は」を消して、取立て助詞「も」(並立)を使います。(日本語文法ハンドブックp.244)
ここでも「あの人」「だれ」をチャンク(塊)として入れ込んでいます。
※ 「こそあ」については第2課以降で詳しく学習します。
・あの人、=普通
・あの方、=目上、年上の場合、フォーマルに言いたい時
⒍ N1はN2です。(N1は○歳です。) N2=年齢=○さい
1番の文型と作りとしては同じ形ですが、N2に年齢が入ることで、別途、数字と助数詞の規則を教える必要があり、めんどくさいです。なので、みんなの日本語では練習A−6として、第6の文型として別枠で用意してあります。まぜるな危険!というわけです。
大前提として、
※日本では、大人は直接相手に向かって年齢を聞くのは避けた方が良い。特に女性に対して年齢を聞くのはやめた方がいい。
ただし、役所などの公的機関で、そういうこととは関係なく年齢を聞かれる事があるので、聞かれ方や年齢の言い方を知っておく必要があります。どうしても年齢を知る必要がある場合、学習者が「失礼ですが、おいくつですか。」と聞かれることもあるかもしれないですよね。
上は年齢を伝える文章で、下は年齢を聞くオープンクエッションです。
この数詞、助数詞については、スリーエーネットワーク出版の「初級を教える人のための日本語文法ハンドブック」p.386に詳しく書いてあります。お手持ちの方は是非ご覧ください。
まず、とりあえず文句を言うと…数字ってどんな言語を勉強してもめんどくさいと思いますが、日本語の数字って、まじでめんどくさい!数字だけとっても、
「ひーフーミー」っていう数え方と、「いちにさん」っていう数え方がある。そして、その数字にくっつける助数詞が多い。助数詞の少ない言語が母語話者の学習者にとっては、難しい項目です。しかも数によって読み方が変わるものがあります…例えば、鉛筆1「ぽん」、なのに2「ほん」、そして、3本「ぼん」!「いちほん、にほん、さんほん」じゃないの!えー!いちいち覚えなくちゃいけないの?…マジで??
学習者からするとめんどくさいの極みです。(効果音:爆発)
なので、助数詞は、すこ〜しずつ教えていきます。
助数詞の勉強、まずは年齢を表す「歳」から!ということで第1課は最も身近な「○さいです。」を勉強します。
身近な「歳」は、1歳でも2歳でも100歳でも、何歳でも助数詞「歳」は「さい」と読めば良いです。よかった〜。
とか言っても、まだまだ注意点があります。
さい=助数詞
何+歳これはなんと読みますか?
(「×なにさい」ではなく、 ○「なんさい」と読みます。)
みんなの日本語では、読み間違わないように、練習Aではひらがなで書いてあります。ただし、練習Bから漢字に変わっています。読み方の誤りに注意です。
・何歳ですか。→普通
・おいくつですか。→丁寧
という使い分けがあります。
年齢を言うときに気をつけなければならないのが、
1歳=いっさい
8歳=はっさい
10歳=じゅっさい、または、じっさい「っ」になる。
また、間違いやすいのは
4歳=よんさい、×しさい
9歳=きゅうさい、×くさい です。
母語話者だと間違わないような間違いが起こります。気をつけるべき読み方に8歳と9歳が入っているので、5歳、6歳ではなく、あえて「8歳・9歳」が練習Aに選ばれたんじゃないかな〜と思います。
● この課でできる活動例
・自己紹介をしてみよう。(発表)
・問答の練習をピアで。
おそらく、第1課は、クラスが組まれてごく初期の段階になります。クラスメイトの名前もまだよく覚えられていないことでしょう。がっつり一緒に活動するというのは厳しいですよね。全体に向けての発表の前に、ちょっと隣の人と自己紹介の練習をピアで練習してみる…とか、「Nですか。」「N1はN2じゃありません」の問答の練習くらいなのかな〜と思います。
ピアの組み合わせによって話が盛り上がったり、そうでなかったり、意外と初期の段階から違いが出たりもします。ピア活動の時間を持つ場合、組み合わせの様子を観察しましょう。クラスのみんなが仲良くなっていくよう、今後の活動を工夫したいですよね。
意外と時間的に余裕があったり、学習者の理解が早いようであれば
・ピアでインタビューしあい、インタビューしたクラスメイトの情報を発表する。などの活動も良いかもしれません。
● 学習者には伝えないが、教師が知っておくべきこと
第1課を教える前に、関連事項としてざっと知っておくと良いことを紹介します。
・第1課で教える文型を文法的に説明すると「名詞文」です。第35回の動画「日本語文法ざっくりまとめ」で紹介した日本語の3つのパターン「名詞文・形容詞文・動詞文」のうちの「名詞文」です。
・第1課で出てくる文章は、取り立て助詞を使った文章でした。とりたて助詞「は」については第59回「ももこ的 は と が のちがいざっくりまとめ」動画を参照してください。
簡単に復習すると…
・主語ではない。
・名詞や名詞文の後ろについてその文の話題が何であるかを提示し、この話題についての解説や主観的判断を後に続ける役割を果たします。
・後ろに続く解説の文末まで係って文をまとめています。(影響の範囲が広い)
よくわかんないな〜という方は、この動画を見終わった後に第59回の動画をご覧いただくといいと思います。
この課は名詞文と言いましたが、名詞に関しても日本語の名詞について特徴を知っておくと良いと思います。
・名詞の取り扱いは言語によって違いますが、日本語の名詞の特徴は
⒈ 名詞は基本的にものの名前を表し、文の主語になります。
⒉ 日本語では女性名詞、男性名詞などの文法上の性の区別はありません。
(言語によっては女性名詞男性名詞を使い分ける言語があります。)
⒊ 複数を表す“〜s”に相当するものはありません。名詞の形を変えずに単数も複数も表すことができます。
⒋ 生物(生きている物や人)、無生物の区別は文法上重要です。(存在文の時に重要になる)
例)生き物→「いる」、無生物→「ある」を使う。
⒌ 名詞の種類は
⑴普通名詞
⑵ 固有名詞
⑶ 代名詞
⑷ 数詞(数字)の4種類があります。数字は読みが複雑で
・和語系ひ、ふ、み…/漢語系いち、に、さん…がある。
例)電話番号の言い方=漢語系
一つ、二つ、三つ=和語系
・ものの数を表す際に助数詞がつく。円、歳、冊、本、枚など。
助数詞は覚えるのが大変なので、段階を追って教える。第1課では「歳」が出てきました。
みんなの日本語第1課のまとめです。
● みんなの日本語「第1課」は初めて日本語らしい文章を勉強する特別な時間です。教師の裏目標として、授業目標:日本語を楽しいと感じてもらう!
そのために、
いっぱい笑って、いっぱい目を合わせて、いっぱい微笑む!
(具体的には、通常の3割り増し)
を私から提案しました。教案に書く学習目標は
● 学習目標:初対面の人と簡単な挨拶や自己紹介ができる。
自分の名前、国、仕事を相手に言ったり、聞いたりできる。
というような学習目標を立てるのが王道です。
● 教える文型は練習A(p.8)にまとめられています。この課では
を勉強します。
それぞれのポイントやコツをまとめました。
● この課でできる活動例は、まだクラスが慣れていないので、ピアでの問答の練習、自己紹介の発表くらいかな〜と思います。学習が進んだり、時間的に余裕があれば、ピアでインタビューしあい、インタビューしたクラスメイトの情報を発表する。という活動も良いかもしれません。
● 私からの余計な提案として、自己紹介で発表してもらった、名前や国、職業などを、その時間に消えないところに板書し残しておく提案をしました。
● 学習者には伝えないが、教師が知っておくべきことが結構あります。これまでの過去の動画を参考にしつつ、頭を整理させておきましょう。
いや〜、なんか、教案もすらすら書けそう!って気になってきましたよね!
きっと、素敵なあなただけのオリジナル教案がすらすら書けると思います!
みなさんの考えた活動(応用練習)や例文をコメント欄で「教えてください!
新しく始めた緑シリーズでは、日本語の授業を考える前に知っておきたい文型の知識をまとめています。教えるべきこと、教えないけれど教師は知っておくべきことを、わかりやすく解説しています。例文、場面設定例なども紹介しています。役に立ったと感じていただけたなら、チャンネル登録と、「いいねボタン」で応援をよろしくお願いします!
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(A4サイズにプリントアウトできるサイズにできている…はず!)
参考書籍紹介
・初級を教える人のための日本語文法ハンドブック
・ 考えて、解いて、学ぶ 日本語教育の文法
・みんなの日本語初級Ⅰ教え方の手引きCD-ROM付
・できる日本語(副教材にオススメです!)
・ベネッセ 表現読解国語辞典
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