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ChatGPT×漢字の授業 で学生の主体性を高める

みなさん、こんにちは!
日本語教師ももいろ先生です🍑

◾︎漢字や語彙の授業のやり方がマンネリ
◾︎学生の反応が薄い
◾︎新しい授業のやり方を取り入れたい

そんなみなさんに、最近わたしがやっている漢字の授業をご紹介します!

☆授業で使用するもの
先生のパソコン、プロジェクター、ホワイトボード、学生のスマホorタブレット



1.どんな授業?

簡単に言うと、”その日の学習範囲の漢字を読み物を通して学ぶ授業”です。

2.メリット

メリット①学生の発言が増える

全く予習をしてこない学生がいたとしても、わからない部分を調べたりクラスメイトと読み方や意味を話し合うステップがあるので、学生が自信をもって発言できます。その結果、全体として発言量が増えます。

メリット②意味を推測する力がつく

わからない言葉に出会ったとき、答えを調べる前に自分で推測するステップを挟むことによって、記憶が定着しやすくなります。学生の実生活では、わかる言葉よりわからない言葉のほうが多いでしょうから、自分で考え推測する習慣を身につけることで、実生活も学びに結びつきます。

メリット③読むのがはやくなる

初見の長文を読むことに慣れると、だんだん読むのがはやくなります。ザッと読んで要点をつかめるようになっていきます。

メリット④授業準備が楽になる

これは先生にとってのメリットですが…。わたしはこのやり方で授業をするとき、授業準備は10分〜15分しかかかりません。にもかかわらず、学生の満足度や定着度は高いです。個人的にはこれが1番のメリットです。

どうですか?やってみたくなりましたか?
それでは、実際の手順をご紹介しましょう!


3.授業準備①

ChatGPTにプロンプトを入力します。
この日の授業範囲は『漢字マスターN1   P37嬢~孝』でした。
入力する箇所は #レベル、#今日の漢字、#あらすじ の3箇所です。
#レベル にはクラスの日本語レベルを入力します。CEFRでもJLPTでもどちらでもいいです。
#今日の漢字 には物語に含めたい言葉を入力します。10〜15個ぐらいがちょうどいいです。
プロンプトは1500字にしていますが、N3〜N2前半レベルのクラスなら1000字に変更してください。
#あらすじ には物語に出てくる登場人物のキャラクター設定や、おおまかなストーリー展開を入力します。あらすじを一切書かなくても物語は作れます。

あなたはプロの小説家です。「今日の漢字」の語彙をすべて自然に使って、1500字前後の物語を作成してください。読者は外国人留学生で、日本語レベルは「レベル」です。
物語を作成する際、「あらすじ」を参考にしてください。

#レベル:
N2

#今日の漢字:
淑女のような立ち居振る舞い、お嬢様、社長令嬢、世間知らず、老婆、老婆心、生涯、伴侶、僧侶、恩人、恩に着る、恩返し、親孝行

#あらすじ:
登場人物は世界三大財閥のお嬢様、わがままで、自信家な性格。お嬢様の執事、65歳、紳士、教育係。お嬢様と執事の目の前で、同級生がいくつかの人助けをする。ある日、同級生が学費の封筒をなくした場面を見て、お嬢様は同級生を馬鹿にする。後日、同級生に助けられた老婆が封筒を持ってきて、その場面を見たお嬢様は改心し、同級生と友人になる。

上記プロンプトで出力したものがこちらです。

お嬢様と同級生

世界三大財閥の社長令嬢であるお嬢様は、淑女のような立ち居振る舞いを心がけていたが、実際はわがままで自分勝手な性格だった。彼女は自信家で、世間知らずな面もあり、専属の執事が常に彼女の教育係として側にいた。

ある日、お嬢様と執事が街を歩いていると、同じ高校に通う貧乏な同級生が目に入った。彼女は優しい性格で知られており、その日も老婆を助けていた。老婆は重い荷物を抱えて困っており、同級生はすぐに駆け寄って荷物を持ち上げ、一緒に運んであげた。老婆は亡くなった夫の墓参りに行く途中だったらしい。「恩人としてあなたのことを忘れません」と涙ながらに言った。

次の日、お嬢様と執事は再び同級生に出会った。今度は僧侶が道端で困っているところだった。僧侶は道に迷ってしまい、目的地への行き方がわからなくなっていた。同級生は快く僧侶の話を聞き、地図を見せながら丁寧に道案内をした。僧侶は「恩に着るよ」と感謝し、彼女の親切心に感動した様子だった。

さらに別の日、幼い子どもが迷子になって泣いているのを見つけた同級生は、その子どもを安心させるために優しく話しかけ、一緒に親を探して無事に再会させてあげた。親たちは「恩返しできることがあれば何でも言ってください」と感謝の意を表した。

しかし、その数日後、同級生は学校の学費が入った大切な封筒をなくしてしまった。必死になって探す彼女の姿を見たお嬢様は、「人助けなんてしても自分は助けてもらえないなんて馬鹿みたい。時間の無駄ね」と鼻で笑った。

ところが数日後、あの日助けた老婆が学校を訪ねてきた。彼女は学費の封筒を拾って届けてくれたのである。同級生は驚きと喜びでいっぱいになり、お嬢様は唖然とした。「庶民が大金が入っている封筒を届けるなんて。お金がほしくないの?」それを聞いた執事は、「お嬢様。老婆心ながら申し上げます。自分の行いは巡り巡って自分に返ってくるものです。」と格言めいた言葉でお嬢様に人生のアドバイスをした。「なるほどね。面白い考えね。」

この出来事から数日後、お嬢様は同級生の人となりを理解しようと決意し、少しツンとした態度で同級生に声をかけた。「ねぇ、あなた。」「はい。何でしょうか。」「わたしと友達になりなさい。」同級生は目を丸くした。「だめかしら。あなたに興味があるの。」お嬢様からの突然の申し出に、同級生は慌てふためいた。「い、いいですけど…。」「そう?じゃあ決まりね。これからよろしく。ところで、あなた、名前は?」

こうして二人は新たな友情を築き始め、その後、生涯にわたる伴侶とも言える関係へと発展していくこととなった。この経験から、お嬢様も親孝行や他者への思いやりの大切さについて学び始め、自身の成長へとつながる一歩となったのである。

ChatGPTはハッピーエンドが好きで、特に物語の終わりは「新たな伝説として語り継がれるようになった」「学んだ」「成長した」系にしがちです。バッドエンドや謎を残すような終わり方にしたい場合は#あらすじ で指定するといいです。

出力した物語はWordにコピペしてクラス人数分印刷(学生全員がタブレットを持っているならPDF等準備)しておきましょう。
これで授業準備①は完了です。


4.授業準備②

step1.漢字クイズの材料作り

次に別のプロンプトを使って漢字クイズの材料を作ります。
入力箇所は #入力語彙 の部分です。わたしが作る時は数を10個か15個にしています。入力語彙の数だけ問題が作成されます。

あなたはプロの日本語教師です。
まずは「入力語彙」の意味や使い方をよく調べ、理解してください。
その後、次の「条件」をもとに、「入力語彙」の確認テストを作成してください。

#条件:4択で作成すること
・Questionは日本語で、自然な短文にすること
・Questionの文中の空欄にAnswer1-4から適切なものを選択する問題にすること
・Answer1-4の中に「入力語彙」の語彙を1つだけ選んで含めること
・Answer1-4の中に 1つだけ選んで含めた「入力語彙」の語彙と類似する語彙を3つ含めること
・Timelimitはすべて「10」
・Collect answerには正しい選択肢の番号のみを入れる
・問題数は「入力語彙」の数の分だけ作成すること

#入力語彙:
淑女、お嬢様、世間知らず、老婆、老婆心、生涯、伴侶、恩人、恩返し、親孝行

#出力:
|Question|Answer1|Answer2|Answer3|Answer4|Timelimit|Collect answer|

上記プロンプトで出力した表がこちらです。
気になる部分があれば、手入力で修正します。

授業準備②プロンプト出力結果

次にパソコンで、学習アプリKahoot!Excelテンプレートをダウンロードし、プロンプトで出力された表を白い空欄部分にコピペして保存します。
これで漢字クイズの材料完成です。

step2.漢字クイズ作成

では、作った材料を使って、Kahoot!という学習支援アプリで漢字クイズをつくります。Kahoot!は無料で使うことができます。手順は以下の通りです。

学習アプリKahootの「作成」画面を開く

⑵「空白のキャンパス」を開く

⑶「問題を追加(または青い+ボタン)」から、「スプレッドシートをインポート」で先程保存したExcelテンプレートを読み込ませ、タイトルをつけて「保存」まで進む


そうすると、Kahoot!のライブラリにクイズが保存されます。

これで授業準備②も完了です。


5.授業の流れ

授業準備ができたので、いよいよ授業の流れをご紹介します。授業時間は45分です。

◾︎物語配布&個人ワーク

まず、授業準備①で作った物語を学生に配布します。

学生に、このように説明してください。

⑴まずは1人で読みます。わからない言葉があっても意味を考えながら最後まで読んでください。辞書は使用禁止です。
⑵わからない言葉には〇をつけながら読んでください。

学生がだいたい最後まで読み終わったら、次の指示をします。

⑶〇をつけた言葉を辞書で調べてください。

◾︎ペアorグループワーク

1番遅い学生が○をした言葉を5割ぐらい調べ終わったところで、次の指示をします。

⑷近くの人と読み方や意味、ストーリーを確認してください。日本語で話してください。

先生は、机間巡視して日本語で話すように促します。学生たちが話している間に、〇が多いもの、意味が複数あるもの、関連語、読み方が難しいものなど、先生が物語の文章の中から15個程度ピックアップしてホワイトボードに板書しておきます。このとき、学習範囲の言葉以外も含めると学生の語彙力が増えます。話し合いは10分が目安ですが、様子を見て調整してください。

◾︎言葉の確認

話し合い後は、ホワイトボードに板書した言葉を1つずつ確認していきます。
まずは学生個人またはクラス全体に読み方を聞き、フリガナを板書します。
次に意味や使い方等もクラス全体に問いながら確認します。このとき、先生の質問力がとても重要です。例えば…

◾︎NG例
先生「噂に尾ひれがつく、意味は何ですか?」
学生「噂に尾ひれが付くは、話が伝わるうちに実際にないことが付け加わって大げさになるという意味の慣用句です(辞書に書いてあることを読み上げる)。」

◾︎OK例
先生「(噂に尾ひれがつくを指しながら)読み方は何ですか?」
学生「うわさにおひれがつく」
先生「尾、は体のどこですか?」
学生「おしりにあります。しっぽです。」
先生「そうですね。犬や猫にありますね。じゃあ、尾ひれはどんな生き物にありますか?」
学生「わかりません。魚?」
先生「そうですね。尾ひれは魚にあります。じゃあ、噂に尾ひれがつく、は噂がどうなることだと思いますか?」
学生「う〜ん…。噂が増える…?噂が広がる…?」
先生「(イラストを書きながら説明)噂があります。○○さんが結婚するらしいですよ。ここに尾ひれがつきます。結婚相手は美人らしいですよ。さらに尾ひれがつきます。結婚相手は美人でお金持ちらしいですよ。さらに尾ひれがつきます!美人でお金持ちでタワマンに住んでて…。じゃあ、噂に尾ひれがつく、は噂がどうなること?」
学生「噂に情報が追加されることです。噂が足されます。」
先生「そうですね。最初の噂よりも、本当かどうかわからない情報がどんどん増えていますね。」…


このように、学生たちと会話のラリーを繰り返しながら進めていきましょう。

板書した言葉を確認しおわったら、板書したフリガナをリピートさせながらぜんぶ消していきます。そして、読み方を覚えたか確認するために、フリガナがない状態で読み方をもう一度言わせます。

◾︎漢字クイズ

最後に、意味がわかったかどうか確認するために、授業準備②で作ったKahoot!のクイズをします。手順は以下の通りです。

step1.Kahoot!の画面を映す

⑴パソコン画面をプロジェクターでホワイトボードに映す

⑵Kahoot!の「ライブラリ」から「Kahoot」を選ぶ

⑶作成済みのクイズ一覧から今から使うクイズを選び、「ライブで主催する」を選ぶ

⑷クイズのモードを選ぶ
最初は無料でいろいろ選べます。無料期間が終わると選べるモード数が減ります。わたしは宝箱モードをよく使っています。

⑸学生の入室を待つ
先生の画面にPINコードとQRコードが表示されます。

step2.クイズを実施する

⑴学生は映されたQRコードを自分のスマホorタブレットで読み取る

⑵学生はニックネームを入力してからクイズルームに入室する
学生の画面はこんな感じ。

⑶クラス全員が入室したら、先生が開始ボタンを押して、クイズスタート!
学生は自分のスマホでクイズに取り組みます。もし、途中でクイズから抜けてしまった学生がいても、PINコードを入力すれば途中入室できます。

学生がクイズをしている間、先生の画面にはリアルタイムでランキングがでます。学生はスマホに夢中なので、先生はランキングを見ながら実況してあげるとさらに盛り上がります。クイズの時間はモードによって多少変わりますが、だいたい3〜5分です。

学生の画面はこんな感じ。

クイズが終わったら、みんなで1位の学生に拍手!

以上で授業は終了です。
Kahoot!のクイズは、URLを共有すれば学生が家でソロプレイすることもでき、復習にも使えます。

最初のうちは時間配分が難しいかもしれませんが、慣れると効率よく学習効果が高い授業ができるので、ぜひお試しください!

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