音声学的に紅組の連続優勝を分析
子どもたちの通う補習校で運動会があった。
コロナで中断していたので、5年ぶりの開催。
実は今年から補習校だけの運動会になったが、それまでは全日制日本人学校との合同運動会だった。
優勝トロフィーには何本ものリボンがついていたが、そのほとんどが「紅組」優勝!!
この学校では伝統的に「あかぐみ」にくれないの字を当てる。
私が補習校で教え始めてから(13年? 10年教えて、退職して3年のはず)、紅組しか優勝していない。
「紅組が勝つ」というこのジンクスをみんなが知っていて、紅白分けが発表され、白になった人、クラスは「ええーーー!」と云う。
そんな中、今年、うちの子は二人そろって紅組。
応援をするときに、不公平にならないからいいなと思った。
勝ち負けはどうでもいいんだけど、勝ったら、そりゃうれしいだろうとも思った。
そして運動会当日。
教員をしていたころは、1年で1番忙しい日だったけど、仕事がないとなんと楽なことか!
持参したキャンピングチェアーに優雅に座っていられる。
(まあ、実際には長女の選手宣誓を見るとか、次女のラジオ体操手本を見るとか、あちこち動いてたんだけど)
そして、初めて外野から見て、気づいたことがあった。
それは子どもたちの応援の声。
なんでか知らないけど、「あーか! あーか!」しか聞こえてこない。
白組の子が応援していないはずは絶対にない。
子どもたちは他の組のコールが聞こえたら、絶対に真似をする。
ひょっとして、音声学的に「あか」は「しろ」よりも、「あ」の母音が開放的な分、音が広がりやすいのではないだろうか。
だから、同じように応援していても、「あか」コールの方がよく聞こえる。
応援が大きい方がより力を発揮できて、優勝への原動力になるのではないか!
そこで、数週間前に勉強した音声学の授業を思い出した。
音には、その音の持つイメージが必ずあるという。
例えば、「とんとん」と「どんどん」で、どちらが大きい音かと問えば、日本語母語話者、学習者でなくても、「どんどん」を選択する、と。
ひょっとして、それも心理的な影響を与えているのかも!
家に帰ると、早速その授業の回の資料を見てみた。
そうそう、ギザギザの多角形と、丸の重なった図形の2つを見せられ、どちらが「キキト」で、どちらが「ロリム」かという質問にも、ほとんどの人がギザギザに「キキト」を選ぶというものだった。
それは濁音など、空気の流れを大きく妨げる「阻害音」と、あまり妨げない「共鳴音」があるという内容だった。
阻害音が多い方が、より強い、より大きい、より重い、より粗い印象になるそう。
男子の名前には阻害音、女子の名前は共鳴音が多いらしいし、ポケモンも進化するほど、名前に含まれる濁音の平均数が多くなる、と!
阻害音は、調音法(どうやってその音を出すか)が破裂音(タテトダデド、カ行ガ行パ行バ行マ行)、摩擦音(ヂズ、サ行ハ行、シャ行ジャ行ヒャ行)、破擦音(チツ、チャ行)。
共鳴音は、はじき音(ら行)、鼻音(な行)、接近音(や行わ行)。
(ちなみに私の名前たまきは阻害音が3つ!
どうりで女の子らしくないわけだw)
これに当てはめると、白は、シが無声硬口蓋摩擦音、ロが有声歯茎はじき音、つまり阻害音は1つ。
紅はアが母音、カが無声軟口蓋破裂音だから、こちらも阻害音は1つだった。
つまりイーブン!
私の説、破れたり!
まあ、心理的な影響はないかもしれないけど、実際に「あか」と「しろ」なら、断然「あか」の方が発音しやすく、大きな声を出しやすい。
「白組は負ける」というジンクスを払拭させるためには、来年から白を「あお」組にするか、赤を「くろ」組にしたらいいと思う。
(まあ、鉢巻とか、玉入れの玉とか、全部準備し直すのは大変だけどね!)
優勝チームのキャプテンの一人として、長女は優勝トロフィーをもらった。
(キャプテンは二人ずつ)
全日制日本人学校と合同でなくなったので、リボンが1本もついていない、まっさらのトロフィーだった。
来年、これを返還するのは長女じゃない。
キャプテンは最後に挨拶をするんだけど、挨拶が終わって壇上から降りた長女は顔をぐしゃぐしゃにして、号泣していた。
勝ったからという、勝利の喜びの涙ではない。
負けていても、同じように泣いただろう。
彼女の大好きな日本を象徴する、「補習校」が今年度で終わりだと実感したからだと思う。
今年度は始まったばかり。
残りの月日を楽しんでほしいと思う。
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