セラピストがアーティスト【カナダのアートセラピー2】
以前、私がアートセラピー武者修行で、単身バンクーバーへ飛んだ時のおはなしシリーズその2です。(その1はコチラ)
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カナダには、幾つかのアートセラピー協会が存在します。
その中の一つ、
BCATA(British Columbia Art Therapy Association)の35周年パーティへ、招かれました。
協会ロゴは、カナダの先住民美術を思わせるデザイン。
https://bcarttherapy.com/bcata/
カナダでも、初めからアートセラピーを取り巻く環境に恵まれていた訳ではなく、
他協会では存続できなくなったケースもあるそうです。
その中で、35年間続いてきた背景には、様々な努力と試みがあったと想像されます。
カナダのアートセラピスト達に会って感じた日本との違い、この会場でもヒシヒシと実感しました。
表現することが好き、またはアーティストである方が多いのです。
BCATA理事のミシェルさんも、アーティストです。
会場を盛り上げる音楽を奏でているのは、演奏家でもあるアートセラピスト。
パーティ会場に堅苦しさは微塵もなく、アートを楽しんでいる!という雰囲気で満ちています。
自由にアートできるスペースが設けられていたり。
さらには、この食べられるアート。
7色カップケーキ!
もちろん頂きました、甘い!(お料理もスイーツも全てハンドメイドでした)
この会場の雰囲気で、BCATAのカラーが伝わってきますよね。
セラピストがアーティスト。
ここが、私は日本とは異なる点だと感じます。
少し補足しますと…
アートセラピーが、アートとセラピーの両分野にまたがるからこそ、
アートセラピストのバックボーンは、大きく分けて二つに分けられます。
一つは芸術系出身のセラピスト、そしてもう一つは、医療系出身のセラピスト。
日本では医療系、つまり精神科医や臨床心理士などの方が多い印象がありますね。
そして、そうした医療系の方が描画材料を用いる場合、
日本では特に「描画テスト」が多用されています。
描画テストとは、例えばロールシャッハテストや「木を一本描いてください」と伝えるバウムテストが有名です。
描画テストは、テストですから、何を描くのか、どう伝えるか、用意する画材の種類やサイズまで決められています。
そしてその描画から、クライエントの状態や生育歴を読み取るのです。
つまり描画テストの目的は、精神分析。
実際に、私が精神病院内のアトリエをお手伝いしていた際、
通所者の方から「担当医に木を一本描かされたのだけど、それについて何もコメントがない。自分の絵をどう見られたのか気になる。」と気持ちを聞いたことがあります。
描画テストでは、描画者へ分析結果を伝えることもしませんし、担当医と共にその描画について語り合うこともありません。
その通所者の方は、アートが好きな方だったので、
特に、この絵から自分の何を読み取ったんだろう?と気になられたようでした。
描画テストによる精神分析とセラピーは、異なるアプローチです。
どちらが良い悪いではなく、それぞれに役割があるのです。
(セラピーとしてのアートセラピーを実施する場合は、臨床心理士として勤務しながら、自分の裁量で導入しているケースをよく聞きますね)
さてさてカナダに話を戻します。BCATAのパーティで私が感じたことは、二種類のアートセラピストが存在するんだな、ということでした。
1. 表現の喜びを経験しており、画材・素材を熟知してアートセラピーを行う
2. 自分は好んでアートをしないが、心理療法ツールとしてアートセラピーを用いる
1. は、私がBCATAで多く出会った、セラピストがアーティストという方たち。
バックボーンが芸術系の私にとっては、とても励まされる出会いでした。(1.の方には、日本ではなかなかお会いできませんので…)
そして後日、ミシェルさんの職場である精神保健センターへ伺う約束をして、この日は会場を後にしました。
【カナダのアートセラピー3】へと続きます。
(この文章は、私が運営しているアメブロの記事を修正・加筆したものです)
ありがとうございます。サポートは、日本画の心理的効果の研究に使わせていただきます。自然物由来の日本画材と、精神道の性質を備える日本画法。これらが融合した日本画はアートセラピーとなり得る、と言う仮説検証の為の研究です(まじめ)。