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内閣法制局長官の発言は本当に間違っているのか?


報道ステーション 内閣法制局長官が皮肉?国会審議紛糾

昨日の参院予算委員会での横畠裕介内閣法制局長官のこの発言が大問題になっている。

「声を荒らげて発言」の内閣法制局長官が答弁を謝罪・撤回

横畠長官は野党議員に詰め寄られ、すぐに発言を撤回し、陳謝したが、ニュース動画でも判るように、その薄ら笑いを浮かべた顔には反省の色などないし、自分が間違った発言をしたという認識は微塵もなさそうに見えた。

で、「声をあららげて」と言うべき所を「声をあらげて」と言っている、よくある言い間違いを除いての話だが、この横畠内閣法制局長官の発言はそもそも本当に間違いなのだろうか?

勿論、大前提として“国民全体の奉仕者”と規定されている国家公務員、官僚が、野党とはいえ国民に選ばれた“国民の代表”である議員をそれも国会の場で皮肉ったり揶揄する事が許される筈がないのは言うまでもない。官僚としては罷免されて然るべきだろう。

 ただ、気になるのはどのマスコミも『“憲法の番人・法の番人” である内閣法制局長官がこのような政治的発言をするのは許されない』と指弾している点なのだ。「内閣法制局」はその名の通り、内閣に置かれた行政機関の一つであり、主任大臣は内閣総理大臣が務め、その代表である内閣法制局長官は内閣が任命している。

そう、横畠内閣法制局長官の上司は安倍総理大臣、その人なのだ。その上司が小西議員にそれこそ声を荒らげて批判された以上、その小西議員に一矢むくいようとしたのは心情的には判らなくもない。事実、横畠長官は安倍が安保法制で集団的自衛権を合憲とする為に法制局長官に据えた、行使容認派で元フランス大使の小松一郎の下で次長を務め、小松長官の急死で後を引き継いだ人間。彼自身も「集団的自衛権の合憲化」という解釈改憲を安倍の為に推し進めた一人なのだ。

話を戻すが、その横畠内閣法制局長官が本当に“憲法の番人・法の番人”なのだろうか?

彼は内閣法制局という内閣に置かれた行政機関の一つで、上司である安倍内閣総理大臣の為に働く官僚の一人に過ぎない。彼を長官に任命したのも安倍。勿論、だからと言って国民の為ではなく、安倍の為に働いていい、という理屈はないが、「安倍の部下」であるのは厳然たる事実。例えば、最高裁判事も同じように内閣総理大臣によって任命されるが、こちらは有名無実とはいえ、曲がりなりにも「最高裁判所裁判官国民審査」という国民の審査を受けるので、国民がクビにする事も出来る。ところが、内閣法制局長官という職務は私たち国民が審査をする事も、クビにする事も出来ないのだ。

   そんな人間が“憲法の番人・法の番人”であることがおかしいし、そもそも日本の憲法で“憲法の番人・法の番人”と定められているのは、最高裁判所ただ一つしかない筈。

    立法府の国会にも法制局があるように、行政府の内閣にも憲法や法令を守る為の法制局がある事自体は立憲主義や法治主義から言ってもおかしくはない。だが、今は内閣が提出する閣法がほとんどを占めている以上、現実には安保法制の時の集団的自衛権の解釈でも判るように、内閣法制局が立法についても違憲かどうかの判断を全てしている。

これは以前に日本国黄帝チャンネルの「#12:憲法の話~日本は憲法のない国」の中でも詳しく説明したが、統治行為論や付随的違憲審査制を採用する事で最高裁自身が憲法で定められた「違憲立法審査権」を事実上、放棄してしまった為。つまり、最高裁判所が本来の“憲法の番人”の役を降りてしまった為に、その役まで行政機関の一つに過ぎない「内閣法制局」に負わせて来たのが、この国なのだ。

勿論、公平中立であるべき“憲法の番人・法の番人”を務める以上、内閣法制局やその長官には出来る限り、公平中立な人間を起用するような見識や配慮を歴代の内閣や内閣総理大臣は持って来た訳だが、安倍にはそんなものは微塵もない。解釈改憲を自由に行う為に自らに都合の良い人間を内閣法制局長官に起用し続けているし、何よりも制度上はそれが可能なのだ。

安倍の部下に過ぎない横畠長官が安倍を擁護し、小西議員を揶揄する発言をするのは、個人の心情としては間違いではないし、『“憲法の番人・法の番人” である内閣法制局長官がこのような政治的発言をするのは許されない』というマスコミの判ったような発言を鵜呑みにする前に、安倍の部下に過ぎない内閣法制局長官がこの国唯一の“憲法の番人・法の番人”を努めている、この国の間違いにこそ私たちは気づくべきなのだ。


                                                                                 ※Photo by webtv.sangiin



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