その人を何と呼ぶべきなのか?
予め言えば、この交通事故のことについてではなく、この記事、それも記事の中の「呼び方」について感じた違和感について書いてみたい。
この事故は二人の女性が運転する自動車が衝突したことによる巻き込まれ事故として園児が亡くなった訳だが、この新聞記事ではその二人の女性の内の一人を「○○容疑者」と、もう一人を「○○さん」と書いている。
一人は警察に逮捕されているから「容疑者」で、もう一人は逮捕されたけれど釈放されたから「さん」を付けて呼んでいるという新聞側・マスコミ側の基準は勿論、分かっている。ただ、それは正しいのだろうか?
片方を逮捕したまま、片方を逮捕したが釈放したのはあくまでも現時点での警察の判断であって、それが間違ってはいないという根拠もない。そもそも「推定無罪」の原則がある以上、今の段階でどちらに罪があるかを警察が認定してしまうのもおかしな話だし、それにマスコミが従うのも奇妙な話。少なくとも罪や刑が確定するまでは同等に扱うべきとも言える筈。
そもそもこんな意見もある。
因みに、茂木氏は“以前は呼び捨てにしていた…”と文末に書いているが、確かに以前は「容疑者」だ、「被告」だ、「受刑者」だといった呼び方の使い分けはされずに、単に呼び捨てにしていたらしい。
その結果としてこんな裁判も行われ、この裁判ではマスコミ側が勝訴したものの、以降は人権尊重の意味からもマスコミは「呼び捨て」は廃止。警察に逮捕されれば「容疑者」、起訴されれば「被告」、刑が確定して収監されれれば「受刑者」。それらに該当しない場合は「さん」や「肩書」で呼ぶということになったらしい。
ただ、その結果として“山口達也メンバー”などという珍妙な呼び名も出現したし、先日、私が見たニュースでは“○○自称自営業者”などという全く意味不明の呼び名も出現。大問題になった池袋で二人が亡くなった暴走事故でも加害者の元官僚を「容疑者」ではなく、マスコミが「さん」や「元院長」と呼んだことが逆にネットでの大炎上を招いている。
これは結局、マスコミが「さん」、つまり敬称で呼ぶのと、敬称は使いにくいから「肩書」で呼ぶ場合、さらに「容疑者」、つまり犯罪者扱いして呼ぶ時の落差があまりにも激しいからこそ起きる訳で、それこそ昔のように全員を「呼び捨て」にしていた方が公平だったとも言えてしまう。
そもそもこういった差をつける判断をしているのは全てマスコミ。客観的な基準があるように見える「容疑者」や「被告」という呼び方も、判決が確定するまでは「推定無罪」という原則に反しているし、マスコミにそれを判断する権限も、犯罪者扱いして社会制裁を与える権限もない筈。
そういう意味では、茂木氏の言う通り、全員を「さん」付けで呼べばいい筈だし、そもそも人権尊重を言うのであれば、前にも書いたが、マスコミは一切の実名報道を止めるべきなのだ。
※Photo by Elijah O'Donnell on Unsplash
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