もう帰らない。
ねえ、何で私に平凡な幸せを願うの?
何でお父さんの言いなりにならないといけないの?
それはお父さんが我を通せなかった根っからの負け犬だからでしょ?
だから私に押し付けるんだ。
そんな人が私の幸せ勝手に決めないでよ。
……なんて言って出てったっけ。
まさかあれきりになるなんてね。
あの時は考えもしなかったよ。
お父さんが死んだって聞いて悲しかった。
自分のやりたい事も出来ないで、自分を殺して家族の為、会社の為に働いて。たまの休みはずっと眠って。挙げ句、自分の子供に馬鹿にされて。つまらない人生だったね。
知ってるよ。お父さんが自己犠牲精神があるような立派な人じゃないって。
可愛そうなお父さん。
でも駄目なお父さんのお陰で、お父さんみたいになりたくなくて……、今も私は自由気ままに楽しくやってるよ。それなりにね。
じゃあ、そろそろ。
さよなら。
せめて向こうでは自由に生きて。