昔、大学卒業を控えた2月、こんなタイトルで小説を書こうと思っていました。あらすじ:生きる意味を求めて宇宙を放浪する宇宙人。地球にたどり着くーー 宇宙人に出会った3日後。 姉に男の子が産まれた。 自分と宇宙人は姉の病室を訪れた。 赤ん坊は姉の腕の中にいた。 「随分小さいんだね」 宇宙人はしげしげと赤ん坊を覗き込みながら「ようこそ」と言った。 「ようこそ。この世界へ」 「そんなに良い世の中じゃないだろ」 「ああ。宇宙には何もない。でもこの子を見たら不思議と生まれてきてくれてあり
やあ、また来たのかい?こんなとこにいつもいつも。暇なの? それは暇の定義に依ります。仕事と仕事の合間を暇だと言うのならそうなのでしょう。良かった。元気そうで。 忙しいなら無理なんてしなくて良いのに。それと元気な訳ないだろう。こうして入院してるんだから。 本当は嬉しい癖に。無理して強がっちゃって。 あと先短い私にかまけてないでもっと今ある時間を有意義に使いたまえよ後輩。 今の自分があるのは先輩のお陰ですから。 あ、綺麗な花。先輩には似つかわしくないですね。誰かお見舞に
・ お母さん、ただいま! ・・ あら、お母さんとは口聞かないんじゃなかったの? それにしても随分早いのね。さっき出てったばかりじゃない。 ・ うん、もう良いんだ。 ・・ そう、何だかよくわからないけど。 随分機嫌が良いみたいだけど何かあった? ・ そうかな。別に普通だよ。 それより何か手伝おうか? ・・ ……それなら洗濯物干してくれる? そろそろ終わる頃だから。 ・ うん、良いよ! 今日も暑いからきっとすぐ乾くよ。 ……所で、さ。 ・・ 何? ・ さっきはごめ
ある日、火星を訪れると羽を伸ばしにやって来た水星人がいた。 「いやあ、ここは涼しくて快適だねえ。」 こんな岩ばかりの星が快適なものだろうか? 「快適と呼ぶならば隣の地球に行けば良いだろう。あそこは気候は穏やかで水も資源も豊富と聞く。」 すると水星人はニヤリと笑い、 「いやいやアンタも人が悪い。あそこは楽園の星じゃないか。」 先日、天ノ川銀河系異星間交遊の先見として赴いていた一人娘から便りが来た。 「オトウサマ。ワタクシハ元気デス。人民ハ優シク、気候ハ過ゴシヤスク。ワタ
御無沙汰しております。 我が愛すべき御父様、御母様。 お変わりございませんようで安堵致しました。いえ、ね。先日の風雨でせっかくの満開の桜が散ってしまったように、我が父母もまた私の知らぬ間に儚く散ってしまっているのではないかと思うと気が気ではなかったのでありますよ。 私がこうして久方ぶりに御父様、御母様にお目にかかったのにはある重大なる理由がございます。お心当たりあれば幸いでございますが、それ所ではないといった御様子ですね。実の両親にこのような事を改めて申し上げるのは照れくさい
あ、こんにちは。 君、凄いね。聞いたよ。 この間の期末も学年一位だったって。 ボクも先輩として鼻が高いよ。 ボク? ボクも確かに悪くなかったけど……君はオール100点満点じゃないか。 しかも明日からお休みに入るのにもう図書室で勉強。本当に凄いや。 部活も生徒会もやってるけどちゃんと休めてる? なんか少し疲れてない? え、これからバイト? 大変だね。 ええ! しかも10個掛け持ち?! コンビニ、家庭教師、工場、夜間警備、住み込みリゾートバイト……えっと、えっと やり過ぎだよ!
やあ、誰も彼も幼い頃から見知った顔ばかりだね。 さて本題に入る前に私の罪状について整理をしておこう。 一つ、この世全ての子供達にあまねく贈り物を届けるはずの私がその使命を果たさなかった罪。 二つ、私が贈り物を届けなかった処かあまつさえそれを横領した罪。 三つ、そしてそれらの罪により町の子供達の心を惑わせた罪でお間違いないかな、裁判長。よろしい。 まず一つ。 私は私の愛する者全てに対し贈り物をしたと自負している。まあ、待て裁判長。いいや、懐かしき友よ。フローレンス君。
ねえ、何で私に平凡な幸せを願うの? 何でお父さんの言いなりにならないといけないの? それはお父さんが我を通せなかった根っからの負け犬だからでしょ? だから私に押し付けるんだ。 そんな人が私の幸せ勝手に決めないでよ。 ……なんて言って出てったっけ。 まさかあれきりになるなんてね。 あの時は考えもしなかったよ。 お父さんが死んだって聞いて悲しかった。 自分のやりたい事も出来ないで、自分を殺して家族の為、会社の為に働いて。たまの休みはずっと眠って。挙げ句、自分の子供に馬鹿にされて
先生は私を“良い子だね”と褒めてくれます。 でも私はちっとも良い子ではありません。 何故なら先生の事なんてこれっぽっちも好きではないからです。 先生の言う“良い子”とは手のかからない“都合の良い子”であり卒園したら秒で忘れてしまう“どうでも良い子”に他ならないのです。 手の掛かる子程可愛いなんて言葉がありますがこれ程憎たらしい言葉はありません。ですがこんなつまらない事に囚われていてはいけません。路地裏で残飯を漁り戯れる野良猫のような下等生物の習性だと諦める他ないでしょう。
私は外出時に必ず帽子を被っていた。 どんなに酷い寝癖の時も関係ないし、何より自分の容姿を少しでも隠せるならそれに越した事はない。 そんな帽子生活が約7年程したある穏やかに晴れた日の事だ。私は帽子を被り忘れてしまった。 だが戻る時間も惜しい。 その日はそのまま過ごした。 だがなんの不都合もなかった。 むしろ身軽ささえ感じた。 頭は蒸れないし痒む事もない。 無くす心配もないし良い事ずくめだ。 私が帽子を被り始めた学生時代。 自分に自信がなく劣等感にまみれていた。 勿論、未だ
「まだ若いのに……」 「まだこれからなのに」 「何か辛い事があったんだねえ」 「生きてさえいればどうにでもなるのに」 「将来有望だったそうだよ」 よくそんな台詞が吐けたものだ。 誰も救おうとしなかった。 手を差しのべなかった。 悩んでる事さえ知らなかったし、知ったとしてもまともに取り合わなかった。 君は疲れてるのさ。こんな具合に。 だが俺は、俺等は知っていた。 世の中こんな奴等ばかりだという事を。 こんな世の中で生きていく意味なんてないという事を。 だから言ったんだ。
皆さんこんにちは。 今日はチェンジ! 変化についてお話したいと思います。 結論から言いますと私は変化が大好きです。 新しい趣味を見つける。 新しい友達を作る。 もっと些細な事でも構いません。 いつも電車で通勤・通学している方は自転車にしてみたり、一駅歩いてみたり。 朝、いつもより大きな声で笑顔を意識して挨拶してみる。なんでも良いです。 それだけで昨日とは違う自分に出会えるはずです。 でも私がこんな事を言っても “だからどうした?” “俺は変わりたくなんてないんだよ” “そんな
「ねえ、“歩く”の反対は?」 「何急に? “走る”」 「ブー。“止まる”でした。歩くの速過ぎ。もう疲れた。少しここで休もうよ。てか止まれ」 「“時は金なり”。立ち止まる時間なんて勿体ない。ただでさえタイトスケジュールな旅行なんだ。君があれもこれも観たいって言うから」 「はいはい。後で挽回しようね。そういえば中国では“歩く”って“走る”って漢字使うらしいよ」 「へえ、そうなんだ。何で?」 「知らん。自分で考えろ」 「お前から言ったんだろ」 あれは嘘。 今ならわかる。 “歩く”
私を愛してくれる人が二人いた。 私の両親だ。 私を憎む人が一人いた。 私の姉だ。 私は姉よりも、遅く生まれたという理由だけで愛された。 私は姉よりもまともだと言われていた。 だから大丈夫と。 一体、何が大丈夫なんだろう? 親の愛は 抑圧と言える。 傀儡とも訳せる。 お前は良い子だ。 と言われて育ってきた。 親の言う事、聞いてるだけだなのに。 お前は可愛い子だ。 と言われてきた 鏡を見ると苦痛が襲うのに。 取り柄もなく愛された人間は 愛されなかった人間に 引け目負い
今日の私は魚でファミレスにレスしてはや二年。 うんざりしながら草生やし笑い合ってるはずなのに空笑いな日々が続いた。 そうして初笑いが嘲笑いとなって、今年で四半世紀。 だが今日の私は魚じゃない。 もぐらのお肉。いいや土の子なのかもしれない。 例えば電車に乗った一文無しが旅に出て別件逮捕されたようなものだ。 でも大丈夫。君は一人にはなれない。君を嫌う人は必ずいる! 私が青空を愛して止まないのは渡り鳥が海に墜落するからだ。 悲しいのに笑う君には涙がよく似合う。 君の思考を文字に起
「優しいね」 他者を想う優しさなんてない。相手の為は自分の為。 例えば承認欲求。例えば否定されたくないが故の自己防衛。 でも全くないのか。 赤の他人が泣いている姿を目撃した時、心がざわつくのは……。 「真面目だねえ」 真面目さ以外に取り柄がないか、馬鹿にされていると捉える。 好きで真面目な訳ではない。 怒られるのが嫌。自信のなさの表れ。道徳教育の弊害。 「どんまい」 ああ、あなたは私に興味がないのね。 だから一言で済ますのね。はいはい。 私は大事だと捉えたのだけれど、あな