「ねえ、“歩く”の反対は?」
「何急に? “走る”」
「ブー。“止まる”でした。歩くの速過ぎ。もう疲れた。少しここで休もうよ。てか止まれ」
「“時は金なり”。立ち止まる時間なんて勿体ない。ただでさえタイトスケジュールな旅行なんだ。君があれもこれも観たいって言うから」
「はいはい。後で挽回しようね。そういえば中国では“歩く”って“走る”って漢字使うらしいよ」
「へえ、そうなんだ。何で?」
「知らん。自分で考えろ」
「お前から言ったんだろ」

あれは嘘。
今ならわかる。
“歩く”の反対は“逆走”。
君が好きで、君といる時の私が好きで
だけどあの日々からは離れるばかり。
君と過ごした時間は何物にも代えられない。
もう遅いのかな。
まだ間に合うのかな。
どれほどの速さで追いかければ
また君の隣を歩けるのだろう。

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