新作映像『7』について
2024年9月15日。
主に個人や少人数で制作・活動する作家による、Friends(仲間達)とFrenzy(熱狂)するための映像上映イベント"FRENZ 2024"で私は2日目夜の部にて新作映像『7』が上映されました。
今回は新作映像『7』について解説します。
1.経緯
昨年のFRENZ2023で公開された『Cube』以降、次はどうするか考えていました。
『Cube』では黒色の画用紙で作った立方体で動かす"原点回帰"な作品でした。モノクロ作品だったので、今回は"カラフル"な作品に固めました。
この時、2024年になったばかりでした。
2."浮遊"させるための工夫
ただ、カラフルだけでは以前の作品のままでした。
その時、私は今まで2軸の移動されている映像が多かったです。私は上下動かす"浮遊"を取り入れたいと考えました。ストップモーションアニメではタンクという撮影機材があります。フィギュアを立位にされる固定装置となります。しかし、タンクにも弱点があり重心から外れるとズレてしまう上、固定させる設置箇所が限られるので重い素材は難しいです。
浮遊させるために素材をどうすべきか悩み、気分転換に手芸で羊毛フェルトをしていたら『これは面白そうだな!』と閃きました。
この時は今年の2月でした。
羊毛フェルトだと軽くて扱いやすい素材だったので、実験として羊毛フェルトの魚を使って浮かせてみました。
映像と解説記事に載せていますが、タンクの固定させる接地部分を針に変えてズレずに撮影することができました。
『7』は同様の撮影で行いました。
3.撮影時に気をつけたこと
撮影時は正確な間隔を見せるため、撮影環境は下地に方眼紙を敷かせました。
方眼紙のマスを均等に動かし、上下の位置も定規を使ってそれぞれ均等に合わせました。今回の撮影された羊毛フェルトは大きさが歪であり、去年の黒色の画用紙とはバランスが悪いです。なので、針の差し込み位置を何度も行い、定規で高さが合っているかチェックします。
今回の撮影枚数は去年の『Cube』より少なく1000枚以上ありません。
ただ、『Cube』と違って
"「7色の羊毛フェルトの立方体」×「16 or 27 の配置パターン」"と付けたり抜いたりと何度も繰り返すような作業でした。
撮影を行ったのは5月のGW中に行いました。
4.演出について
①パターン
撮影した画像はPhotoshopで切り抜きました。その際、周囲はぼかしで自然に背景を馴染むようにしました。切り抜いた画像は迷いがないようファイル名を細かく記載してフォルダで分かりやすく管理しました。
AfterEffectsで読み込んだ素材画像はレイヤーの名前と色で管理しました。
動きや出現する流れは色との被りがないようスケッチブックで確認しました。
今回は16または27の配置パターンがあります。そのため、正面から見た9つの位置と上から見た3つの奥行きに分けてスケッチブックでどう動かすか描いていました。描いた箇所をレイヤーに合わせてAfterEffectsで確認しました。
本作は軸が増えたことによって、テトリスやパズルといった違った楽しみを味わえる演出を加えたかったので、配置マップは役に立ちました。よりパズルっぽさを出すようシンプルな形より複雑な形にしてスムーズに動いているようにしました。
②背景
背景は『Cube』と違ってザックリな環境になりました。
真っ白と全体に色を染めてしまうと羊毛フェルトの立方体が浮いているような見せられないので、立体感を出せるようにAfterEffectsで加工編集しました。シェップレイヤーで壁と下地に合わせてマスクで切り抜き、エフェクトの『塗り』で色をつけました。配色はモノクロにし、白・黒・灰色をベースに合わせました。その方が浮いている羊毛フェルトに注視しやすいからです。
③ラストシーンについて
今回はストップモーションアニメというより"ストップモーション風アニメ"と考えています。なぜなら細かな動きはなく、配置を考えていくような作品でした。唯一ストップモーションとしてラストシーンを付け加えました。
上から色が変化していき、正面から落ちていく演出として取り入れました。その際、緩急動作や予備動作を付け加えたいのでAfterEffectsで大きさ(スケール)を弄りました。若干潰れたり伸びたりすることで羊毛フェルトのふんわりを出してみました。
5.『7』というタイトルを決めるまで
今回『7』をタイトルするまで時間がかかりました。私は過去の作品から英単語のタイトルが多いです(ROUND , Gallery , Cube など)。当初は『浮遊』に関する英単語を考えました。しかし、長すぎてしっくりしませんでした。また、前述のラストシーンから一文字がしっくりと思いました。
その中で"7色"の羊毛フェルトの立方体から『7』となりました。
ちなみに、数字のタイトルはFRENZ2016に出展した『36』以来となります。
完成した時はFRENZの一次提出前でした。しかし、見直すとラストのタイトル『7』のフォントとPhotoshopで3Dに見せるよう加工編集したのが納得できませんでした。
そのため、一次提出後にIllustratorで3D文字を作成し背景素材と馴染ませように修正しました。最初の演出も変更して二次提出で完成しました。
6.上映後の気持ち
以上で『7』の解説を終えます。
私は上映後、会場で登壇し制作への思い、FRENZ15周年から自身の成長を振り返りをして熱く語りました。
15年前のFRENZでは、観客として参加していました。
『いつか映像を作って皆に見せてみたい』という思いが出始めました。
その後は・・・
2012年→初出展(登壇なし)
2013・2015・2016年→出展のみ(登壇なし)
2019年→初登壇(9年振りの会場)
2022年以降→登壇
この15年間、FRENZが成長している間、私も成長しました。
FRENZがなかったら、映像制作をしていませんでした。また、新たな挑戦ができなかったと思います。FRENZをキッカケで多くの人々を知り、挑戦を生み出してくれました。本当にFRENZに出会えて良かったです。
来年も出展・登壇できるか分かりません。家庭や仕事の事情が不安定で予想できないです。それでも映像制作は続けたいです。もし会場に来られなくてもFRENZが存在する限り何らかの形で出展したいです。それまでにより一歩素敵な映像作品を作りたいです。
最後に・・・
FRENZスタッフたち、出展者、一般参加者ならびに会場のLOFT/PLUS ONEのスタッフたち、イベントお疲れ様でした!