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もしガチニートが異世界転生したら

youtubeに投稿した動画の台本です。

母「コンコン」
母「とおるちゃん起きてる?」
男「うるせえクソババア」
母「起きてたのね」
母「扉前にご飯置いておくわよ」
男「わかったよ!とっとと失せろ!」
母「起こしてごめんなさいね」
男「はあああ」
男「飯を食うのもだるいな」
男「中学生に行くのがなんとなく面倒になって早20年。俺は立派なガチニートになってしまった」
男「どうしてこんなことになったんだろうなあ」
男「全部親のせいだ!遺伝子と家庭環境が悪いんだよ!」
男「もし俺が超イケメンで色んな才能もあって親も金持ちだったらこんな風にならずに済んだのに」
男「勉強も運動も何も出来ないのは完全にあのクソババアのせいだな」
男「はあ。いつも見ているアニメみたいに異世界転生が起こらないかなあ」
男「貴族に生まれ直して本当の人生をやり直すんだ」
男「まあ俺ガチニートで引きこもりだからトラックに轢かれる機会すら無いわけだけど」
男「クソが。とりあえず飯でも食うか」
男「うわあああああ」
男「お、おいここはどこだ?」
神「天国じゃ」
男「て、天国!?俺は死んだのか」
神「そうじゃ家ごとトラックに潰されて死んだ」
男「マジかよ!」
男「あのババアは?」
神「てめえの生活費を稼ぐためにパートに行ってて無事だった」
男「素直に喜べねえよ」
男「で、俺はどうなるんだ?異世界転生でもさせてくれるのか?」
神「そうじゃ。トラックで轢かれた不憫な奴は二度目の人生を与える決まりになっておるからの」
男「マジか!やったぜ!」
神「現世への未練なくて草」
神「本当どうしようもない人生だったんだろうな」
男「さあ早く超イケメンで才能豊かな貴族の息子に産まれ直させてくれ!」
神「わがまますぎだろ」
神「まあ良いや顔の造形と生まれはなんとかしてやろう」
神「しかしスキルは一つだけしかやれん」
神「人間性とか継続力とかストレス耐性とか、欲しいものを一つ選ぶのじゃ」
男「そんな地味なスキルいらねえよ!」
男「もっと良い感じのスキルねえのか?剣で無双出来るみたいなの」
神「ああ剣術の才能ならある」
男「それだよそれ!転生者といえば無双だろ!」
神「もっと大切なものがある気もするがまあなんでも良いや」
神「じゃ、あとは頑張ってくれい」
男「やっと本当の俺の人生が始まるぜ!」
神「えいっっ!!」
男「う、うおお!」
男「す、すげえこれが異世界かあ」
男「色々豪華すぎるだろ」
男「城みたいな豪邸だなあ
女\「トール様おはようございます」
男「お、おお」
女「寝ぼけてらっしゃるのですか」
女「今日は剣の練習と帝王学のお勉強ですよ」
男「剣と帝王学?」
女「そうですよ」
女「この高貴なお家を守る大切なご子息様なのですからたくさん稽古して学んでくださいね」
男「ま、まあなあ」
男「えいっえいっ」
男1「ぐわはあああ」
男1「だるそうにゆっくり剣を振るだけでなんだこの威力は!」
男1「さすがあの家の長男!」
男1「生まれ持った才能には勝てないっ!」
女1「きゃああ!強くてかっこいい!」
女1「しかもイケメン!だーいすき!!」
男「ふん」
男「なんか俺やっちゃいました?」
女1「きゃああああ」
男1「強すぎるだろ。あいつの何倍も努力しないと追いつけない」
男「努力?そんなの無駄無駄」
男「俺様に勝てるわけないって」
女「つまりマキャベリの君主論においては」
男「ぐかあああ」
女「ちゃんと聞かなきゃためですよ」
男「ちっなんだようるせえなあ」
男「剣さえ強けりゃどうにかなるんだろ」
男「勉強なんて面倒だしわけわかんねえんだよ」
女「ちゃんと努力しないとダメですよ」
男「努力?馬鹿馬鹿しいね」
男「こんな裕福な家に生まれて、剣の才能もあって女にもモテモテだったら」
男「将来はどうとでもなるだろ」
女「いや学ばないと」
男「うるせえ!!俺様に逆らうのか?」
男「剣で切ってやっても良いんだぞ!」
女「一体どうしてしまったのかしら」
女「反抗期なのかなあ」
男「はああああくわあ」
男「一体どうしてこうなっちまったのかなあ」
男「昔は剣の天才ってもてはやされて女にもモテモテだったのに」
男「今じゃ太った非力のクソニート」
男「重たい剣は持つことすら出来ない」
男「親は俺に後を継がせて領主にしようとしていたが、頭が悪過ぎてそれも断念」
男「何やってもダメなんだな」
男「じっと何かを我慢して続けるってのが出来ないんだ」
男「いくら剣の才能があったとしても、真面目に稽古しないと活かせない」
男「出来過ぎた環境も頑張らなきゃ役立たずさ」
男「それはきっと前世でも同じだったんだろうな」
男「才能や環境のせいばかりにして本当に馬鹿だった」
女「コンコン」
女「ご飯をお持ちしました」
男「ああ」
女「体調はお変わりないですか」
男「ああ」
男「ただ娯楽がなくて辛すぎる」
男「ラノベとかアニメとか漫画があったらなあ」
女「むむ?なんですかそれは?」
男「えっ知らないのか」
男「最強のスライムに生まれ変わって無双したり、海賊王になるために冒険したり、なんでも願いが叶う球を集めるためにバトルをしたりする物語だよ」
女「な、なにそれ」
女「めちゃめちゃ面白そうじゃないですかっ!!」
女「そんな話を知っていただなんて想像もしませんでした!」
女「詳しく聞かせてください!!」
男「ええまあいいけど」
女「ぬはあああ」
女「トール様、こんな面白い話を知ってるなら早くいってくださいよお!」
女「熱くなったり萌え萌えしたり感動しました!」
女「物語る才能ありますよっ!」
男「そうかなあ」
女「間違いないです!」
女「文字に起こして出版してみたらどうです?」
男「ええ」
男「俺に出来るかなあ」
女「絶対できます!」
女「どんな芸人にだってそんなにすらすら話せる人いないですし」
女「なによりあなたが心の底から楽しそう語ってたじゃないですか」
男「お、おう」
男「やっぱり俺はそういうコンテンツが大好きだったからなあ」
男「これまで見てきたものを思い出して書いてみようか」
女「こちら、トール先生のサイン会です」
女1「きゃああ!トール大先生!あなたのファンです!」
女1「推しです!燃えです!きゅんきゅんです!」
男「あははは、ありがとうございます」
女「ほら言ったでしょ」
男「俺が前世の記憶を思い起こして書いたニート転生異世界に行って本気出すは空前の大ヒットを記録し、もう働かなくてよいほどの印税が入ってきた」
男「今までのけもの扱いしてきた家族やメイドも態度を一転させて、文筆の天才だとほめてくれた」
男「ふう今日はこれで全部かな」
男「しばらくは他のラノベやアニメをもとに書きつついつかオリジナル作品を書いてみようかなあ」
女「お疲れ様です」
女「世界中のみんながあなたの作品を待ってますよ」
男「ありがたいことだ」
男「無理のない範囲で頑張るよ」
男「成功の秘訣はなんだったんだろうと考える」
男「確かに前世のコンテンツが優れていただけだと言われればそれまでだが、これまでニートだった自分が本を一冊書き上げるくらい努力出来たことはなかった」
男「それを最後まで完遂できたことには驚いた」
男「理由はいくつかあるだろう」
男「まず一つ、自分が好きで向いている作業だったということ」
男「どれだけ才能があったとしても興味がないと続かない」
男「二つ、自分が出来る範囲で継続したこと」
男「決して無理をせずにこつこつと執筆を毎日積み重ねた」
男「本当に重要なのは自分の適性と興味に従いつつ、継続的に努力し続けることだったんだ」
男「前世からの俺は環境とか才能のせいばっかりにしていた駄目人間だった」
男「そのすべてを満たして転生した異世界でも、怠惰なせいでニートになってしまった」
男「でも今になってようやく成長出来た気がする」
男「よし」
男「明日からもスケジュールを立てて頑張るぞ」
女「トール様危ない!」
男「えっ」
男「うわあああああああああ」
母「こんこん」
母「とおる、ごはん持ってきたわよ」
男「えっえっもしかしてまたこの世界に戻ってきたのか」
男「まさかもう一度転生するとはなあ」
母「大丈夫?なんだかうなされてるみたいだったけど」
男「だ、大丈夫だ」
母「よかった」
母「きちんとご飯食べてね」
男「な、なあお母さん」
男「俺、自分が出来る範囲で働いてみようかなって思うんだけど」

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