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朝からブリンバンバンの話
ある日曜の朝のこと。
同居の母(つまり、ウルトラの祖母)がテレビで「気分を明るく保つ方法」的な特集を見たらしく、その内容について熱く語っていた。
「軽い運動を日常生活に取り入れるといい」
「寝る前にその日にあった3つの良いことをノートに書き出すといい」
など、どこかで聞いたことのあるメソッドばかり。
目新しいことは何もなく、ふんふんと聞き流す。
月曜日の朝はタロウも土日の休みの感覚が抜けておらず、朝のスタートが遅い。
よって、超絶忙しいのだ。
超絶忙しい朝に繰り出されるブリンバンバン
何度も言う。月曜日の朝は忙しい。私もいつもの1.2倍ほどイラついている。
それを横目に、トイレを終えた息子はパンイチの姿で踊るのだ。
ブリンバンバンを。
グーにした両手を胸の前でキュッと構え、お尻を左右に大きく振りながら
ブリンバンバンブリンバンバンと繰り返す。
「着替えや」と小言は右から左へ受け流され、ブリンバンバンは一向に終わる気配を見せない。
このブリンバンバン、小学生の間ではすごく流行っていて、
スイミングスクールの夏のキャンプではキャンプファイヤーを囲みながら全員で踊ったらしい。
「らしい」というのは、タロウは手足口病になってしまいキャンプを欠席したから。
いちばん残念がっていたのは、川遊びができなかったことでもなく、カレーを作れなかったことでもなく、このブリンバンバンに参加できなかったことなのだ。
そういう背景があるので、朝のブリンバンバンは初めてではない。
私も多少は大目にに見ているつもりだが、そこは月曜日の朝。
「服着んさいー!!」
イラつき当社比1.2倍の私が軽くキレて、タロウは学校へ送り出された。
気分を明るく保つための方法
タロウが出発したあとも、母は揚々とうんちくを語る。
「そうそう、変な動きをするのも、気分をよくするのに効くらしいよー」
お??
こういうことらしい。
要するに、
「変な動きをすることで、”自分は気分が明るいからこういうことをしているのである”と脳に感じさせる」
「たとえ元気がないときでも、”こんな動きができる自分は本当は元気なんだよ”と脳をだます」
というメソッドなのだ。
まさか。
ブリンバンバンの効果
脳裏に、さっきまでノリノリで踊っていたタロウの姿がよぎる。
「気分が晴れないときこそ敢えて外に出よう」
「行動から気分を変えよう」
仕事の場面で、自分も散々、そう言ってきたのに、
目の前のタロウの行動と何も結びつかなかった。
意識した行動でないにしても、タロウは踊りながら朝の不安をなんとかしていたのではないのか。
踊ることで、元気の出ない月曜日の朝を明るく過ごそうとしていたのではないのか。
タロウごめん。
余裕のない母でごめん。
それからは、朝のブリンバンバンを1コーラス分だけ許すようにした。
1コーラス分だけというのが己の心の狭さを物語っているようでアレだが、
1コーラス分のブリンバンバンでタロウの登校の足取りが軽くなるならいいか、と今は思う。