YELLOW MAGIC ORCHESTRA
日本版 1978年11月25日発売 アルファレコード ALR−6012
US版 1979年5月30日発売 ホライズン/A&M SP-736
recording : 1978年7月10日〜9月5日 Studio “A”
機材 : コンソール API 2824
マルチレコーダー MCI JH24
マスター・テープレコーダー Ampex ATR100
スタッフ : プロデューサー 細野晴臣
レコーディング・エンジニア 吉沢典夫
ミックスダウン・エンジニア 吉沢典夫&YMO
アート・ディレクション 脇田愛二郎 (以上日本版)
スーパーヴァイザー Tommy Li Puma
ミックスダウン・エンジニア Al Schmitt
ミキシング・スタジオ Capitol Record Studio
アート・ディレクション Roland Young (以上US版)
使用楽器 ARP Odyssey / Fender Bass / Fender RHODES
KORG PS-3100 Polyphonic / KORG VC-10 Vocoder
Marimba / Moog Minimoog /Moog Polymoog
Moog ⅢC / Oberheim Eight Voice w.Digital programmer
Roland MC-8 Micro Composer
Steinway Acoustic Piano / YAMAHA Drums
US版スーパーバイザーのトミー・リピューマはジョージ・ベンソンなどのフュージョン系ポップスの仕事で有名で、グラミー賞なども獲っています。ミックスを担当したのは、そのリピューマとコンビを組むことが多かったアル・シュミットというエンジニア。ジョージ・ベンソンのほか、スティーリー・ダンの『彩(エイジャ)』やTOTOの『Ⅳ』も手がけています。
日本版のエンジニアはアルファレコードの吉沢則夫さん。
日本版のほうがシーケンスが大きかったり、細かいシンセのバランスや音色では日米で違いがあります。
トミー・リピューマは当時、日本版のミックスはとにかくリバーブがダメだって言ったらしいですよ。これではアメリカでヒットしないと。
キャピトル・レコードのスタジオには水が流れている有名なエコー・ルームがあるらしくて、その水に響かせるリバーブじゃないとダメだ、と。そしてUS版は全体にハイ上がりになっていて、音のアタックが早く感じます。それと、ドラムとメイン。メロディがでかくてコードが小さいというのが、US版ミックスの特徴ではないでしょうか。
日本版とUS版のミックスの違いは、今聞くと大きな問題を示していると思います。日本人のミックスは音がくすんでいることと。コード感がすごく出ていて、メイン・メロディとリズムが小さい。コード感というか、背景の多彩さが大きな魅力。音のくすみというか、クリアさの違いは、日米の空の色や湿度の違いじゃないかと思っています。
(YMOのONGAKU / 藤井丈司)
ファースト発売直後に紀伊國屋ホールでYMOを見た当時A &M副社長のトミー・リピューマの判断により、傘下のホライズンから全米デビューが決定するが、アメリカ市場向けにリミックスが施されることになる。それが名エンジニアである、アル・シュミットがキャピトル・レコード・スタジオでリミックスしたUS版だ。「東風」には吉田美奈子のヴォーカルがダビングされたのを初め、ベースやドラムのキック等が全体的に強調され、リズムの抜けが幾分スッキリとした印象を受ける。
ウェザー・リポート『ヘヴィー・ウェザー』の巨大な帽子の絵で知られるルー・ビーチが書いた電脳芸者のイラストがスリーヴを飾っていることからも、トミー・リピューマはシンセで埋め尽くされたYMOサウンドにジョー・ザビヌルと相似形のものを見出していたことが察せられる。つまり「アル・シュミットのやったものはイエローの可能性を示すとともに、ディスコ・バンド、ポップス・バンドとしての可能性のあり方みたいなものを提示してたみたいだった」(小倉エージ/ミュージックマガジン)
このリミックスに対し、YMOのメンバー達は「テクノのコンセプトが彼らには理解できなかった」という主旨の否定的なコメントを残している。しかし今またYMO再評価の機運が高まっているのには、彼らが テクノの始祖 であることよりは寧ろ、フュージョン的な側面を根幹に持っていたことの方が大きく関わっている。