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少し寂しいクリスマス

大学一年生のクリスマスのことを、今でも時々思い出します。特別なイベントがあったわけでも、映画のようなロマンチックな出来事があったわけでもありません。でも、それが私にとっては大切な思い出のひとつなんです。

大学に入って初めて迎えた冬。授業もサークルも新しい生活にも慣れ始めた頃でした。でも、クリスマスが近づいてくると、周りの友達はみんな楽しそうに予定を立てていて、何となくその輪の外にいるような気持ちになったんです。

「今年はどうしよう?」と思いながらも、結局予定が決まらないまま24日を迎えました。その日、ふと思い立って夜の街を一人で歩いてみることにしました。駅前のイルミネーションが眩しくて、人混みが少しだけ冷たい空気を和らげてくれるようでした。

歩きながら、友達や家族のこと、将来のことをなんとなく考えていました。大学生活に馴染んだと思っていたけれど、本当は少し孤独を感じていたのかもしれません。目の前のカップルや笑顔の家族を見て、心の中で「羨ましいな」なんて思ったりして。

そんな私の足を止めたのは、ふと目に入った小さなカフェでした。クリスマス特別メニューと書かれた黒板に惹かれて入ってみると、中にはほんの数組のお客さんだけ。窓際の席に座って、ホットチョコレートを注文しました。

飲み物を待ちながらぼんやり窓の外を眺めていると、何となく落ち着いた気分になりました。クリスマスの賑やかさに対して、自分の時間が少しだけゆっくり流れている感じ。それが心地よかったんです。

やがて運ばれてきたホットチョコレートの甘さが、冷えた体と心をじんわりと温めてくれました。その瞬間、「特別なことがなくても、こんな静かなクリスマスも悪くないかも」と思いました。

その後、家に帰って部屋で一人過ごしましたが、不思議と寂しさは消えていました。翌日、友達に「昨日、何してたの?」と聞かれて「ちょっと一人でカフェに行ったよ」と答えたとき、なんとなく胸を張っている自分がいました。一人で過ごした時間が、少しだけ自分を強くしてくれたような気がしたんです。

それ以来、クリスマスは必ずしも華やかでなくてもいいと思うようになりました。自分なりの過ごし方を見つけて、その瞬間を大切にすることが一番大事なんだなって。

あの時のカフェでの時間は、今でも心の中に小さな灯りのように残っています。きっとこれから先も、ふと思い出しては私を温めてくれるのだと思います。

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Risa
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