逃げ水
夏木志朋さんの「二木先生」という小説を読んだ。 感動したのは、内容というより、ひと文字も無駄にしないという『ものづくりへの気概』のようなものへかもしれない。 届…
この街は穏やかすぎる。 ひんやりとした木の上に寝そべる。俺に合わせて作られたかのようにぴったりと体に合う木のくぼみ。生まれたときからこの場所が決まっていたみ…
夏は、死の匂いがする。 噎せ返るようなあつい酸素で肺を満たす時、 冷房の効きすぎた小さな箱に揺られて窓の外を見ている時、 最終バスを降りた素足を舐め上げる生温い風…
2023年9月13日 18:32
夏木志朋さんの「二木先生」という小説を読んだ。感動したのは、内容というより、ひと文字も無駄にしないという『ものづくりへの気概』のようなものへかもしれない。届けるために、伝えるために、読む手を止めないために、どの層も置いていかないために、細部まで真剣に推敲され練られたものが面白くないわけがない。ただ、技巧の『凄い』が先行しすぎてしまって逆に芯から心を揺さぶられなかったのは、多分私自身の問題
2023年9月13日 18:00
この街は穏やかすぎる。 ひんやりとした木の上に寝そべる。俺に合わせて作られたかのようにぴったりと体に合う木のくぼみ。生まれたときからこの場所が決まっていたみたいに。でもこの大樹が刻んできた時間は、俺の生きている期間と比べたら永遠のように長い。そして俺がこの世界から去ったあとに紡ぐ時間も。もし俺がよぼよぼのじいさんになるまで生きて、寿命を全うして死んだとしても、こいつにとって俺といた時間は米粒
2018年7月31日 17:37
夏は、死の匂いがする。 噎せ返るようなあつい酸素で肺を満たす時、 冷房の効きすぎた小さな箱に揺られて窓の外を見ている時、 最終バスを降りた素足を舐め上げる生温い風とじゃれる熱帯夜、 今も、 誰かがどこかで死んでいる。ピンクと水色の夕焼け。宇宙が近くなる。真夏の風景はいつも死の気配をスパイスのように孕んで、私を不安にさせて期待させて焦燥させる。 思念みたいなものってないと思う。 そうしたら地