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VS 塚田恵梨花女流二段
ウォーズ指導対局の第2回は塚田恵梨花女流二段。
ご両親はともに将棋棋士(父:塚田泰明九段、母:高群佐知子女流四段)で、ご家族全員が居飛車党です。
また昨年より始まった女流順位戦ではぶっちぎりの好成績でA級に昇級され、現在もっとも勢いのある女流棋士の一人でもいらっしゃいます。
さて、本局は僕の石田流宣言に、メジャーな4手目△4二玉。
以下▲6六歩なら穏便ですが▲7八飛が早くも波乱を含んだ手で、
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△8八角成~△4五角の乱戦は「わずかに後手良し」ながら、ガチガチに事前研究して「実戦的には先手も指せる」局面に誘導する用意が僕にはありました。ソフトの評価値を超えた人間くさい駆け引きですね。
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果たして塚田先生は、角交換後に△2二銀という少しひねった順で来られました。
以下▲4八玉には今度こそ△4五角が厳しいので▲5八金左・▲6八金・▲3八金のいずれかで角打ちを防ぎますが、どれを選んでも真っ直ぐなルートで升田式石田流に組めなくなっています。
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こうした事情で、三間のままでは良い展望が描けない先手は「向かい飛車転換型」に移行するのがベターになります↓↓。
ただ、noteにはいちおう研究記事を載せているものの、あまりに実戦例が少ないため自著『振り飛車2.0』では収録をカットしたくらいで、今となっては書いた本人も手順がうろ覚えなんですよね(汗)。
自分の得意形に持ち込もうとして、逆に不得手な形に誘い込まれてしまう「ミイラ取りがミイラになる」状態に/(^o^)\
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(たしか7筋の位を保つために▲6六銀は危なくて、▲7六銀+6六歩型が先手の最善形だったような…?)
などと、記憶の糸を手繰り寄せながらたどり着いた上図。
△7三桂で8五歩を守られる前に▲8五銀と食いつきたくなりますが、△3三角▲6七金△6五歩で後手の罠にまんまとハマります(参考図)。
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よって本譜はあせらずじっくり駒組みに。
高美濃と比べて硬さではやや劣るものの、木村美濃は陣形のバランスが良く角の打ち込みに強いので角交換系の振り飛車では愛用しています。
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▲8九飛が何気ないですが狙いを秘めた飛車引き。
仮に後手が一手パスすれば▲8五桂!△同桂▲同銀△同飛▲7六角(参考図)の王手飛車の筋があります。
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本譜は前述の筋を避けて△2二玉と寄りましたが…。
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▲4五歩△同歩▲同桂が一瞬の隙をついた仕掛け。
通常この手は△4二銀~△4四歩で歩の餌食になる運命なのですが4二金型なので銀引きできないんですね。
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よって△4四銀の一手ですが▲4六歩で、後手玉周辺の金銀がバラバラになり囲いを弱体化させることに成功しました。この辺りは我ながらうまく指せたなと思いました。
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数手進んだ中盤戦。
とりあえず利かし得だろうと、あまり深く考えずに▲2六桂と据えましたが、▲5一角の飛金両取りで決まってましたね。
桂打ちの直後に気づいたものの後の祭りで、手順に△4三金と目標をかわされてしまいました。トホホ…。
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過去を嘆いても仕方がないとピシャリと頬を叩き、気を取り直して下図。
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こちらがずっと攻め続けて、形勢もこちらがまだ良いはずなんですけど、△2四玉とするする上がられた形が意外とつかまえにくい格好です。
そういや「桂頭の玉、寄せにくし」って格言あったなー、などと考えている間にも刻々と持ち時間はすり減っていき…。
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図は最終盤に▲6一飛成と角を取った局面。
この手は▲3三角以下の詰めろになっていて、自玉は王手は続くもののギリギリ詰まない形。これは勝ったか?!(フラグ)
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△3六銀が後手玉の上部を開拓しつつ、先手玉にプレッシャーをかけた詰めろ逃れの詰めろ。う~ん、お強い!参りました!!
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序盤は不慣れな形にされたものの、わりとうまく指せたかなと思います。
中盤で▲5一角を見逃したのは痛かったですが、これも百歩譲って仕方ないとして、やはり終盤力の差がいかんともしがたいですね。
対局後に塚田先生からいただいたコメントを掲載させていただきますと、
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実戦では▲3一銀△1三玉とみすみす上部へ逃がしてしまいましたが、ここでは▲6五飛!△同歩▲3七桂(参考図)が明快ということですね。
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なるほど、美しい決め方ですねー。しかし、僕の実力ではまるまる10分あっても思いつきそうにない(汗)。
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飛車切りが見えなくても、どこかで▲5八金と引ける落ち着きはほしかったっすね。
正確に読み切る終盤力もないのに一直線の斬り合いをめざすのは愚の骨頂で、実戦から遠ざかるとそのあたりの攻守の判断が真っ先に落ちてきます。
次戦までの宿題は、衰えた終盤力を少しでも取り戻すことで、毎日詰めチャレと「羽生善治の終盤術」を繰り返し読んで特訓します!
塚田恵梨花先生、対局ありがとうございましたm(_ _)m