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令和世代に語り継ぎたい映画100選「太陽がいっぱい」

2024年8月18日 アラン・ドロン死去
御冥福を祈ります

1960年公開のアラン・ドロンの出世作(フランス・イタリア制作)
監督:ルネ・クレマン
音楽:ニーノ・ロータ

この映画は何をおいてもアラン・ドロンのイケメンっぷりと、それとは対象的なニーノ・ロータのせつないテーマ曲が最高という名作です
Wikipediaによると映画のジャンルはクライム・サスペンス
ただ若さゆえの過ち、無謀な行動という青春もの、主人公リプリーのその後も考えるとピカレスクロマンなんていうジャンルも当てはまりそう

あらすじは
ローマの街角のオープンカフェで話をする2人の青年。アメリカから来た大富豪の息子フィリップ(モーリス・ロネ)貧しく孤独な青年トム・リプリー(アラン・ドロン)
リプリーは、フィリップの父から放蕩生活中のフィリップをアメリカに帰国させたら大金(5000ドル)を貰えるということでイタリアへと訪れていたのだが、引き戻す所か彼の遊びに付き合わされる始末
今日も夜の繁華街で視覚障害者の持つ杖に興味を持ち「その杖を俺に売れ。帰りのタクシー代があれば杖はいらないだろう。」などと傲慢なことを言って、2万リラも払ってそれを買い取ってしまったり、その後は視覚障害者を装ってナンパしたりと、一見すると悪友仲間のような二人
しかし、裏を返せばフィリップに召使いのように扱われ、貧富の差をまざまざと見せつけられる生活
実際、リプリーのローマでの生活費はすべてフィリップから貰う小遣いのみなのだ

ある日、フィリップその恋人のマルジェ(マリー・ラフォレ)、3人でタオルミーナへとクルージングへ出る
その船上、フィリップのイタズラ心からリプリーを上陸用小ボートに乗せ海に流す、ヨットとロープで繋がれているとはいえ、小ボートの上では日差しを遮るすべは無く、炎天下いじめまがいの仕打ちを受けるリプリー
しかもフィリップとマルジェが船内で情を交わしている間にロープがはずれてしまい、沖に流されてしまうリプリーの小ボート
なんとか発見し救出されるが、フィリップに対し怒りと嫉妬を募らせるリプリー
その後フィリップとマルジェが喧嘩し、マルジェが船を降りてしまう
2人きりの船上、交わされる危険な会話
フィリップ「救出された時、俺を殺したいと思ったろう」
リプリー「もっと前から思っていたさ」

そしてそのチャンスは意外な形でやってくる…

※以下はストーリーの重要ポイントについてネタバレが多々ありますので、読みたくない方はここで終了して下さい

上記あらすじって、実は開始40分くらいまでの展開をまとめたものなのです。フィリップを殺してしまうのは意外と早い!
それは、この物語はリプリーの犯罪、クライム・ストーリーであり、
この作品世界(「太陽がいっぱい」)以後も続く原作者・パトリシアハイスミスによるリプリーの犯罪物語の序章を描いた映画だからです

冒頭のサインの練習、フィリップの父から貰った時計、友人とのなにげない会話…
最初の数分間にありとあらゆる伏線と若さゆえの自由奔放さ(現代でいえばバカッター的な行動か?)を描ききっている素晴らしい脚本
この作品の魅力のひとつはそんな脚本の緻密さでしょう
冒頭から張り巡らされる伏線が、単なる伏線にとどまらず
見ている人に伏線なんだろうなと予感させることでサスペンス・緊張を引き起こす
まんまと監督の術中にハマっていく快感を味わえるはずです

そしてそれと相反するような最初の殺人、フィリップを殺してしまった後のトムリプリー(ドロン)の演技も素晴らしい
セリフも無く、波の音、ヨットの風を切る音だけがする船上
死体を海へと流すシーン
リプリーの焦り、動揺、後悔などが凝縮された名シーンです

そして物語は後半戦へ
トムリプリーのクライム・ストーリーの幕開けです
この映画の原作は、リプリーが登場する5つの小説の1番目に位置する物語で、いわば最初の殺人から始まる犯罪者リプリー誕生の物語

フィリップのサインを真似る練習
ホテルで偽サインが通用するかテスト
フィリップの声色を真似るリプリー
恋人マルジェへの手紙を偽造し、マルジェへも通用するか試す
…いろいろな経験をしつつ、フィリップへと同化していくリプリー

フィリップになりすまし、大金を手に入れるリプリー
しかしそんな物語に破綻の影がちらつき始める

ここまで来る中で観ている人の大半はリプリーの魅力に引き込まれ、リプリーへの思い入れが強くなり、リプリーとともに犯罪がバレるのではないかという緊張感を味わうでしょう

間一髪のところで危機を回避したリプリー
ビーチで美酒に酔いしれる
そして太陽が輝き、美しい海が広がる中、響く声…
「シニョール・リプレー。テレーフォノ!」
 (リプレーさん、お電話ですよ!)

ニーノ・ロータの名曲が鳴り響くラストシーンは
映画史に残る名場面だと思います


【ちょっと豆知識】
1999年に公開された「リプリー」(主演・マットデイモン)は同じ原作のリメイク作品ですが、「太陽がいっぱい」では描かれなかったフィリップを迎えに行く前のくだりなど、より原作に忠実な映画化作品といわれています

またトムリプリーが出演する映画としては上記リメイクのほか
「アメリカの友人」(原作:Ripley's Game, 1974.)監督:ヴィムヴェンダースなどが有名です
その他日本未公開のリプリーの作品は多数あります

原作者のパトリシア・ハイスミス
映画好きな人なら知っているであろうヒッチコックの名作「見知らぬ乗客」(1951年)の原作者でもあります(この「見知らぬ乗客」が長編処女作)
今では珍しくなくなってしまっていますが”交換殺人”の最初ともいえる名作で、映画、小説ともども必見に値する作品です

音楽のニーノ・ロータ
この作品の音楽も有名ですが、もっと有名かと思われるのが映画「ゴッドファーザー」で流れる「愛のテーマ」
また映画監督:フェデリコ・フェリーニの主要作品はほとんど手掛けていることも有名な逸話です


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