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常識を破る芸術

 「芸術は終わった」と言われたことがある。カメラがなかった時代、人々は絵画を通して「後世に残したい風景」を切り取り、表現してきた。絵画の歴史は、聖書の場面を想像して描かれた宗教画から始まり、人々は自分の目で見たものや、聖書から想像した美しい、あるいは残酷でありながらも心を揺さぶる風景を、永遠のものにしようとしたのだ。しかし、現代においてはカメラが存在する。カメラの登場により、「芸術は終わった」と言われた時代があった。

 だが、芸術は終わらなかった。ゴッホが芸術を再構築したのだ。ゴッホは「ただ目で見たままを描くだけでは、その対象を完全には説明できない! 横から見た姿や、後ろから見た姿も描いてこそ、初めてその全体像を説明できる」と考えた。彼は、目で見たものをそのまま描くことが美しいとされていた従来の常識をぶっ壊したのである。

 さて、今日は佐賀県立美術館で開催された「ジパング展」に行ってきた。展覧会のコンセプトは「日本の現代アートを再発見する」というものだった。では、日本の現代アーティストたちは一体どのような「常識」をぶっ壊しているのか? その答えを見定めようと意気込んでいた(何様!?)。

 美術館は三つの部屋に分かれていた。最初の部屋には、あの村上隆の有名な「お花」のアートが展示されていた。まず驚いたのは、その村上隆の作品を実際に目の前で見ることができたことだ。「あの村上隆の作品を直に見られるなんて!」と興奮した。事前に展示されることを知らなかったので、喜びもひとしおだった。さらに、写真撮影も許可されており、佐賀県立美術館の本気度を感じた。佐賀県が文化の地位向上に力を入れていることが伝わってきた。

 村上隆は、資本主義に媚びて成功した芸術家だと批判されることがある。様々な意見があって当然だとは思う。ただ、私は現代芸術を資本主義と切り離して考えるのは難しいと感じている。なぜなら、現代を語る際に、私たちの生活の根幹にある資本主義を無視することは、現代そのものを正しく捉えられていないからだ。

 この絵画もお気に入りだ。まず、一目で色彩の美しさに惹かれる。純粋にその鮮やかさを楽しむことができる。緑と黒の色合いが見事だ。そして、次に目に飛び込んでくるのは、原子爆弾のきのこ雲がプリントされた大きな写真だ。この瞬間、この絵が何を訴えようとしているのかがはっきりとわかる。きのこ雲の背後には原爆ドームがあり、ここで確信する。

 さらに細部に目を向けてみよう。黒色で描かれた部分は倒れた人々を表している。そして、緑の部分には赤ん坊がいる。もはや、これ以上の説明は不要だろう。ちなみに、村上隆もあの花のアートで、敗戦国・日本の叫びを表現していると明言している。

 そして今、AIの誕生によって「芸術は終わった」と再び言われている。次にこの常識を打ち破るのは誰だろうか。「芸術は爆発だ」。常識をぶっ壊すその爆発力は、核の力を超える力さえも秘めていることだろう。

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