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1人短編朗読「110番」

通話をしている女 会話は楽し気な様子
※電話先の台詞なし。主人公のセリフのみ。

「もしもし?もしもーし。あぁごめん。電波悪かったみたいで。今私の声聞こえてるー?」

「あぁ良かった。で?どこまで話したっけ。」

「あぁはいはい。」

「で?どうなの?」

「今の状況だよー。」

「濁してないでちゃんと答えてよ~。」

「はっきりしないなぁ。ってことはさっきと同じ状況ね。おっけー了解。」

「まあいいよ。私から話したいって電話かけちゃってたわけだしさ。とりあえず聞いて。」

「うちの彼がね。ドライブ連れてってくれたんだけど行き先教えてくれなくてさ?意味わかんないよねほんと。まぁサプライズしたいのかなぁって思ってさ。」

「まぁしょうがないから行き先わかんないまま車に揺られてたんだけど。」

「結局どこに向かうでもなくただグルグル回って家帰って来ちゃってんのよ。・・・は?なにしてんの?って」

「どういうこと?タイムラップ測ってんのかよ!」

「うんアイテムとかね、落ちてるからね。ちゃんと拾わないと一発逆転狙えないからね。」

「いやじゃなくて。某レースゲームか。」

「せっかく二人で出かけるんだったら、やっぱどっか遠出したりしたいじゃん。美味しいもの食べたりさ。」

「そうそうご当地の美味しいものね。バナナとかキノコとか。(だ)いいんだよゲームは!ゴホン・・・話戻していい?」

「まぁそんなことがあってさ、急に冷めちゃったというかさ。今でいうところのさ。なんだっけほら・・。」

「あのーほら、何化現象って言うの?」

「あぁそうそう。シャネル化現象ね。いい服買って、香水つけて、カバン下げて、じゃないね。シャネルじゃないね。そんなおしゃな感じじゃないわ。」

「そうそう蛙化現象。それだ。」

「まぁそんなわけで、急に冷めちゃってさ。このままじゃやばいなぁと思って彼との会話を楽しもうと思ったのね。これおすすめだから是非今すぐやって欲しいんだけど。」

「はいといいえを別の言葉に言い換えるんだよね。」

「うーんとたとえば~、さっき出たきのことバナナとかさ。きのこがはいでバナナがいいえだとしてね。」

(彼)「お腹空いてきた?」

「・・・きのこ。」

(彼)「は?きのこ食べたいの?」

「・・・バナナ。」

(彼)「え、バナナ?バナナ食べたいの?」

「いや、バナナは今朝食べたからなー。」

(彼)「え?じゃあきのこ食べたいの?」

「バナナ」

(彼)「・・・なんだおまえ!」

「・・・・・・って言って結果別れちゃったんだけどね。」

「いやいやいや、いいのいいの!どうせいつか終わる恋だったんだから。」

「バナナで終わる恋なんて、どうせ、向いて(剥いて)なかったんだからさ。お後がよろしいようで。」

「・・・もしもし?もしもし??もーしもーし!!」

「あぁもしもし?やっと繋がった。びっくりしたよ無視されたかと思って。」

「え?彼がタバコを買いに車降りた?・・・じゃあ今この会話は?」

「聞かれてな、い・・・・・・。分かった。」

「じゃあ、今の会話の通り、彼が戻ってきたら〝はいはきのこ、いいえはバナナ〟。これで怪しまれる事はないでしょう。」

「シャネルの店舗が見えてからまだ数分だから、犯人の車両はまだ新宿区内のどこかね・・・。」

「彼が戻ったらまた私も友達のフリをするから、あなたも怪しまれないように気をつけて。よく怪しまれずに通報してくれたわね。心細いでしょうけど、どうか頑張って。」

「絶対にあなたを見つけて救って見せるわ。」

[完]

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