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2024年度 心電図検定1級受験への道~④~意味不明な心房粗動たち~
前回の記事でblocked PAC問題を紹介したが
紛らわしい心電図はまだある。
今回のテーマは心房粗動の野郎である。
こいつも紛らわしい事この上ない。
論よりさっさと実例を記す。
まず基本的な事項からおさらいである。
心房粗動には大きく分けて
通常型心房粗動(反時計回転型)
通常型心房粗動(時計回転型)
非通常型心房粗動の3パターンが存在する。
基本的にはほぼ通常型で
心臓手術歴があるようなケースでは非通常型の可能性があがる。
そして、通常型、非通常型の分類もシンプルで
Ⅱ誘導でノコギリの様な鋸歯状波があり
V1で+、V6で-であれば、反時計回転型
Ⅱ誘導で山の様な鋸歯状波があり
V1で-、V6で+であれば時計回転型である。
そしてそれ以外の心房粗動はすべて非通常型心房粗動となる。
胃腸炎の如き除外診断枠である。
さて、その前提を踏まえてまずは実際の例である。
反時計回転型の心房粗動の典型例がこちら
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そしてこっちが時計回転型の心房粗動である。
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典型的なものは比較的わかりやすいと思う。
1枚目はちゃんとⅡ誘導でノコギリ感があるし
ちゃんとV1での+、V6での-も確認できる。
自信をもって心房粗動反時計型と回答できる1問である。
2枚目も完全に典型的かというとちょいノイズが乗った感があるが
Ⅱ誘導のなんとなく山感は伝わると思う。
時計型回転のものはV1の-とV6の+が若干わかりにくい感があるが
ま~それかなァという目で見れば何となくわかる。
ここまではひとまずは飲み込める。
さて問題はここからでどーみても鋸歯状波がない心房粗動や
V1やV6の+-がちっともわからない心房粗動波形の実例である。
選択肢として
①時計回転型
②反時計回転型
③非通常型
④心房粗動じゃない
の4パターンを思い浮かべて解いてみてほしい。
まずはこちらである。
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心房細動に対してアブレーション術後の患者である。
解答は③の非通常型心房粗動である。
まずこれ、心房粗動かな??感はあると思うのだが
どれだ???ってなりませんか???
まず率直にⅡ誘導を見ると、なんか山っぽいな、、と思ってしまう。
そんな目でV1の-とV6の+を探してみるのだが
V1などお前極性どっちやねんってなる。
V6もしかりである。よーーく目を凝らしたら-っぽいな、、となり
じゃあ反時計ではないか、、となりV1は+、、かなぁ
でもノコギリっぽくはないよなぁ、、となり
アブレーション後だし、試験的には非通常型かなァ、、なんて考えながら
の回答になる。
なんとも足元がおぼつかない回答である。
が、現状これ以上はわからんのである。
不整脈専門医となれば自信をもって見分けがつくのだろうか??
実際試験に似た問題が出て、回答が通常時計回転型心房粗動だったら、
クソデカため息不可避である。
自分の実力不足が明らかで間違えた問題には後悔の念も沸くのだが
この心房粗動問題に関しては間違えて悔しいというよりは
はぁ~~????という感想が先に立ってしまう。
続いてこちら
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先にいうと答えは④の心房粗動じゃないである。
これも困るんだよね。
私がこの問題を見た時の思考だが
Ⅱ誘導を見てまず山っぽいなと思ってしまう。
従って例のごとく、反時計型を考え
V1の-、V6の+を探しにかかるが
V1はお前どっちやねんってなる。
その2相性な感じなんなん???となった後で
とりあえず、V6に目をやるとまあこちらは+といって差し支えないだろうとなり、とりあえずV1は匂うが、まあ心房粗動反時計型と考えるのが妥当だろうと解答に至るだろう。
そして間違いを知り憤死するまでがルーティンである。
公式回答は心房頻拍である。というのも
心房のレートが200前後だから粗動ではなく、
頻拍という定義になるそうである。
ここがまた意味わからんのですよ。
理解を深められていない所なのだが
心房粗動と頻拍はどーもクリアカットに分けられない
概念の様で、時々オーバーラップして使われる場面を散見する。
ざっくり見ることの多い定義としては
P波が大体250bpmまでは心房頻拍で、それ以上が心房粗動というものだが
この定義すらもテキストによってはまちまちだったりして現時点で何が
絶対の正解なのかわからんのである。
例えばこの問題などは
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V1でP波が目立っており、QRSとの間隔からLong RP´の鑑別になるため
心房粗動、頻拍、房室リエントリー性頻拍や
稀有型房室結節リエントリー性頻拍が候補になるが
途中伝導が途絶している場面があり、房室リエントリー性頻拍は考えにくく
稀有型房室結節リエントリー性頻拍で、2:1伝導が起こる事は
なくはないが稀である事から、心房粗動ないしは頻拍で考えるのが無難という結論になる。
さて、じゃあどっちなのという事だが、
まずP波の間隔を見る限り、260bpm前後ありそうで
250bpm前後を境に判定するという定義に則るなら
これはもう心房粗動という話になる。
が、この問題の答えは心房頻拍で、理由としては
粗動波がないからという事である。
これがもうわからんのである。
判読ER心電図の問題は粗動波っぽいのはあるけど
脈が遅いから心房頻拍で
基礎力Grade upの問題は
脈は速いけど、粗動波っぽいのはないから
心房頻拍なのである。
研修医時代、救急の指導医の指示通りに動いたら主治医にキレ散らかされて、それを救急の指導医に伝えたら、救急の指導医にもキレ散らかされた時のハゲ上がりそうな時の事を思い出す。
この手の問題はとりあえずどちらにもよるのではなく
折衷案で済ますに限るという処世術をその時学んだので
本番似たような問題が出た時には、その時の風の流れに任せて乗り越えたいものである。
さて、大体心房粗動について思うことは記したので
ここからはダイジェスト版である。
紛らわしい心房粗動たち集である。
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答え
心房粗動(多分通常型反時計回転)
色々思う所はあるが、これはもうテキストの色かもしれない。
まず私の認知機能ではこれは粗動波があるとは到底思えない。
Ⅱ誘導にありますか????ギザギザ
V1にP波の頻拍は認識できるため、心房頻拍か、というのが
真っ先に浮かぶ回答である。
が、P波レートは280回くらいはありそうなので、
心房粗動という事になるらしい。
傾向として、このER心電図のテキストでは
粗動波の有無というよりは、
P波のレートで心房粗動or心房頻拍を分けているようで、
一方で心電図マイスターを目指すgrade up講座はレートの速さよりも
粗動波の有無を重視するようである。
心電図検定はどっち派閥や???
それ如何で、本番当日の解答の仕方が変わる。
まあ心電図検定を見据えて上梓されている
マイスターgrade upの方針に基づく方が無難だろう。
従って、P波に頻拍波形があり、粗動波があれば
心房粗動で、粗動波がなければ心房頻拍である。
こちらの心電図も判読ER心電図 基本編からとってきたが
これはもう少し見やすいかもしれない。
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答えは反時計型心房粗動である。
これはまだ鋸歯状波も見えるし、V1+、V6-もちゃんと確認できるため
心房粗動の診断は妥当だろう。
続いてこちら。
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非通常型心房粗動である(多分)
多分というのは答えは心房粗動としか書いておらず、どの分類かまでは不明な為である。
ちょっとわかりづらいが、V1では-、V6では+誘導と考えると
鑑別は
心房粗動の時計回転型か(Ⅱ誘導の鋸歯状波が山になるやつ)
どれにも分類されない非通常型かになるが
Ⅱ誘導の解釈がまー難しい。
山、、といえば山にもみえなくもないし、極性は+にも思えるのだが
うーんという感じで、無難に非通常型にしといてもいいんじゃないという感じの結論である。自信はあまりない。
ちなみにこの心電図はER心電図からの問題なので
P波が250回を超えている段階で粗動波があろうがなかろうが自動的に
答えは心房粗動になるのだが
これ粗動波の有無で粗動か頻拍かを分ける問題とすると結構難しい。
Ⅱ誘導の波のような波形はまあ粗動波と解釈するのが妥当に思えるが
微妙と言えば微妙な所である。
本番に選択肢で
①心房頻拍、②時計回転型心房粗動、③非通常型心房粗動
と選択肢が並んでいたらクソ悩む問題である。
おそらく③を選ぶとは思う。
続いてこちら
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答えは心房頻拍である。
おそらくER心電図なら心房粗動になっていたと思われる。
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答えは非通常型心房粗動
が、これもまた心房頻拍との鑑別が難しい。
Ⅱ誘導はあまりはっきりしないが、少なくともⅢ誘導では鋸歯状波らしい波形はあるため、心房粗動と断定するところまではまだ可能としても
じゃあこの鋸歯状波が通常型か非通常型かがまた悩ましい。
V1は+でV6は-っぽく見える為、通常型としたら反時計回転型の
可能性を念頭に置くが、じゃあⅡ誘導でそれっぽいかと言われたら
こじつければそう見えなくもない気がするが、、といった所である。
疑わしきは非通常型である。
が、本番でその決断に自信を持てるかと言われたら中々難しいと思う。
以上心房粗動の悩ましさについてまとめてみた。
次回はいよいよザ・鑑別紛らわしい界の王者である
SVTとVTの鑑別編である。
+αで紛らわしい心電図達をちらっと纏めて
検定前の最終調整としたい。