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王さまの本棚 34冊目

『家なき子』

エクトール=マロー作/二宮フサ訳/エミール・アントワーヌ・バイヤール挿絵/佐竹美保地図/偕成社刊

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おおーーーー『ハウルの動く城』挿絵の佐竹美保さんが地図!と思ってみてみたら、たいへん丁寧だけれども、とても地味なお仕事だった。し、下積み時代の貴重な作品と言えるのかな……?

岩波少年文庫は表紙や背表紙の形式がしっかり決まっていて、それはそれで蒐集欲をたいへん満足させてくれるのですが、偕成社文庫は偕成社文庫で、背表紙のデザインは揃えつつ、その作品それぞれのうつくしい表紙をデザインしてくれている……のかな?ちょっと、『地底旅行』と『家なき子』で、購入した時期が四半世紀くらい離れているので、どうだろう?としか言えないのだけど、これはこれでうれしい。

この本には随分影響されました。
子どもと犬だけで稼ぐ当てもなく、全財産がおそらく500円程度だったりする、お金のない恐ろしさ。まあ、お話なので何とかなるわけですが。(もちろん通貨はフランとスーです)(フランとスー、好きな単位でした……ユーロって。ユーロて。情緒とは)(あるのかな、ユーロにも情緒)(ちょっとまだわからないでいるよ)
これは本当に怖くて、おとなになってから『居酒屋』を読んで、仏文学=お金がないことの恐ろしさを描く文学という印象になってしまった……。働かざるもの食うべからずの精神を、子どもにも容赦なくたたきつける社会、それがフランス。怖い。

おとなになってからわかったことではあるのだけど、ヴィタリスおじいさんの愛と葛藤。これがまた良いのです。かつての自分への葛藤やレミや動物たちへの愛。不器用な老人の愛の形だったのだなあと今ならわかります。あと、石切り場へのトラウマが今でも。石切り場って、子どものころはなにをする場所か分かっていなかったなあ。それでもトラウマを感じるのだから、この作品凄い。

そう、ここまで書いてきたのって、たぶん物語の半分くらいしか訳されていない、講談社世界名作全集に載っている抄訳の感想なんです。
おとなになってから完訳版(いま書いている、偕成社文庫の)を読んで、びっくりしました。レミが幸せになるためにはさらなる紆余曲折があって、炭鉱編なんて全然知らなかったという。もう、実のところ、フランスの子どもが体験しうる児童労働とと劣悪な環境の詰め合わせみたいな本でした。マローは警鐘を鳴らしたかった、あるいは歴史にこういう面があったとのこしたかったのかもしれません。知らんけど。もっと勉強したらしただけ、実りのありそうな本です。ホビットとか指輪物語よりも実社会に即している分勉強しやすそう……なんて思ってしまう、英文学科卒です。仏文学もおもしろそうだなあ、なんて今更。

この作品を語るには、もっと勉強が必要ということです。

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