【スタッフインタビュー:前編】なぜ、クリエイティブエージェンシーが飲食店を経営するのか?
こんにちは、anata広報室です。
このnoteではnide Inc.(株式会社ニード)が月島・佃エリアで運営する「喫茶と居酒 anata」のオープンまでの道のりや、営業の様子をお伝えしてきました。
ただ、そもそも「なぜ、クリエイティブエージェンシーであるnideが(ちょっと変わった)飲食店を運営することになったのか?」について、あまりお伝えできていなかったように思います。
そこで今回は、anataを運営する主要スタッフに、インタビューを実施しました。
前編となる本記事では、anataが生まれた経緯や、本業とは別に飲食店を経営することの意義や意外なメリットなどについてお伝えしていきます。
もう飲食はやらないと思っていた
――そもそもの話なのですが、東京・月島エリアで飲食店をやろうと思ったきっかけは、何だったんでしょうか?
山岸:
実はnideはこれまで4店舗ほど、飲食店を運営していたんです。渋谷や浜松町などでビアバー等をやっていたので、飲食でのそもそもの経験値はありました。
直接のきっかけ…というとか、2022年5月に渋谷からここ月島に本社を移転したことが全ての始まりですね。私たちはデザインやブランディング事業を行っているのですが、仕事柄、業務が終わるのが夜遅くなりがちで。やっぱり、「仕事上がりにちょっと一杯飲みたいな」とか「夕方とかちょっと変な時間に小腹を満たしたいな」といったニーズを埋めてくれるお店が近場にあると嬉しいじゃないですか。
月島は下町で住民もオフィスも多く、もんじゃストリートもある。でも、そういった「ちょうどいい店」は少ないように感じていました。だったら「自分たちで作っちゃえばいいんじゃない?」というのが始まりです。
飯島:
ニーズはありそうだし、そもそも我々が必要としているので、やってもいいんじゃないか、と。我々にはこれまでの経験があるので、やるかやらないか。やるとしたら、どこで誰がやるのか。という判断でしたね。
山岸:
といっても、2022年4月にKITTE博多のお店(Goodbeer STAND)を契約終了までやりきったので、「しばらく飲食はいいかな」という空気感がメンバーのなかにもあったんです。「月島で飲食をやってみようかな」という雰囲気になりだしたのは2023年の春くらい。そこから実際に物件探しを経て、この場所に決まるまでは半年ほどかかりましたね。
――「anata」のコンセプトはどのようにして決まりましたか?
山岸:
自社のECサイトでクラフトビールを販売しているので、クラフトビールを出すことは最初に決まりました。かけ離れたものを出すよりも、事業体的にも親和性があった方がリスクが少ないということで、それは自然と決まりましたね。
飯島:
物件は、月島オフィスの拡張と飲食店運営をセットでできる物件を月島エリアで探しました。オフィスも手狭になっていたので、オフィスとしても使え、かつ自分たちの飲食ニーズを満たすことが目的。となると、事業体としてはミニマムな、一番楽な運営で回していけるスタイルがいいとなりました。
――事業体として楽というのは、どういうことでしょうか?
飯島:
これまで4店舗運営してきたなかで、常につきまとっていたのが人材の問題です。今、飲食店をやられている方はどこもそうだと思いますが、真っ当なフードを出そうと思うとレシピやマニュアルをしっかり整備しなくてはならない。シェフ1人の腕に任せようとすると、もしその方が欠けた場合に運営が崩壊してしまうリスクがあります。
確かに、飲食でビジネスとしてしっかりしたものをやろうと思うと、真っ当なフードがあることは重要で、それが価値につながりもするのですが、今回の我々の店舗はそれが目的ではない。長く続けるために、いかにライトに運営できるかが重要だと考えました。
山岸:
これまで運営してきた飲食店では、キッチンのスタッフが1人辞めるだけで立ち行かなくなってしまうようなことも、過去に何度もありました。一番大変なのは現場のスタッフなんですよね。今は人手不足なので、そういった事態を避ける運営をしたほうが、リスクが少ない。
だから、今回の店舗はこだわりがあったり、手の込んだフードがメインではないですよ、と、良い意味でライトな店という立ち位置でいくことになりました。
地域に気に入ってもらえる店
――実際の店舗づくりはどのように進んだのでしょうか。
山岸:
物件を借りたのが2023年の12月頭。物件が借りれてほっとしたんで、いったん寝かせておいて(笑)、2024年1月末くらいに「そろそろやろっか」って動き出しました。1月に飯島が店内イメージを作ってくれたんですが、今見返すと、すでに和のイメージはありましたね。
飯島:
内装チームは昔から信頼しているところとやろうと決めていたので、直接お声がけしました。
山岸:
役割分担としては、飯島がプロデューサーで、私がマネージャー。私はnideが以前運営していた店舗もオープンから関わっていたので、もう強制的というか、「飲食やるならやるよ〜」という感じ。私と飯島だと他の仕事に忙殺されて何も進まないだろうなってのが目に見えていたので、お目付け役兼プロジェクトマネージャーとして東をアサインして。
あと、渡邉は前職で店舗デザインの経験があったので、デザインまわりを担当してもらうことにしました。
渡邉:
僕が本格的に関わり出したのは3月くらいからで、その頃には工事はかなり進んでましたね。最初は欄間のデザインから始めた記憶があります。
――お店を作るにあたり、こだわったことはありますか?
飯島:
僕たちはこの街が気に入っているので、店をやるにしても、異質であったり、好き勝手やったクリエイティブをこの街にぶち込む行為にはすごく嫌悪感があったんですよ。
一方で、何か新しいものは取り入れたいとも思っていて。じゃあこの街に融合するものはどんな形なんだろう?というポイントを、内装チームと一緒に探っていきました。
結論は、地元の人が気に入ってくれて、お客さんとして来てもらえたら嬉しいよね、と。そういうスタンスに辿り着きました。
anataは課題製造機であり、失敗できる場所
――今日一番聞きたかったことなのですが、デザインエージェンシーが飲食店を経営する、その意義は何でしょうか?
飯島:
本業があるからこそ、肩の力を抜いてできる、というのはありますよ。
本業が飲食業で、事業単体での経営が必要な状況なら、オペレーションの最適化や、内装へのこだわりを捨てて利益を追求する必要がある。「anata」を本気の飲食店としてやっていくならば、キッチンと客席だけにして、初期コストも半分以下に抑えるでしょうね。
でも、その選択肢をとらなくてもいいというのが、本業があることの強みだと。
それと、今nideで働いているスタッフたちに経験と学びの場を与えることも、機能としてありますね。店をやるという経験は後から必ず生きてくるので。状況を打破する力や、思考の仕方など、今後発生するあらゆる課題に対して、「あの時できたから」という自信がもてたり、見方を変えて取り組むことができるようになると思っています。
anataはnideにとって本業ではないからこそ、失敗できる環境なんです。むしろ、失敗なんてないのかもしれない。課題しかない。課題製造機です。
山岸:
クライアントワークが本業なので、自分たちで何か事業をやっているというのは結構大事じゃないかと思います。自社でECサイトも運営していますが、ECサイトも課題だらけなので。というか、実はECサイトの課題を解決するためにanataを作ったと言っても過言ではないかもしれないですね。在庫を回すことができるし、人材も共有できるし、静岡の倉庫を解約してこちらで在庫を保管することにしたので、経費節減もできました。
飯島:
まあ課題製造機とか言いながら、俺はメンバーになんも振らないんだけどね(笑)。みんな「もっとこうしたらいいんじゃないか」ってのを出し合って勝手に動いてる。すごくいいことだと思うよ。
ーーanata談義はまだまだ続きます。後編では、nide Inc.が考える「街に馴染むデザイン」とは?を軸に、店舗デザインが具体化するまでの道のり、また、anataの今後の展望について迫ります。
(後編へ続く)