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【スタッフインタビュー:後編】nide Inc.が考える「街に溶け込む店舗デザイン」とは?
こんにちは。anata広報室です。
今回は、前回に続きスタッフインタビューの後編をお届けします。
nide Inc.(株式会社ニード)が考える「街に溶け込む店舗デザイン」とは?を軸に、店舗デザインが具体化するまでの道のりや、anataの今後の展望について迫ります。
前編はこちらから
オープンから3ヶ月。想定したよりも温かかった、地域の方の反応
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2024年8月某日、「anata」併設のnideオフィスエリアにて
――6月にオープンしてから3ヶ月が経ちましたが、いかがですか?
山岸:
思ったよりも地元の方に来ていただけていて、嬉しいです。昔から住んでいる方も多いエリアなので、オープン前は、地元に受け入れられるかどうか心配していたんです。「うるさい」とか「こんなところでお酒売って」とか言われるだろうなぁと覚悟していたんですが、今のところほとんどないですね。
むしろ悪い反応が少なくて、逆にびっくりしてます。お客さんからは、「よくこの街でチャレンジしましたね」みたいなリアクションが多いですね。
お店としてどう評価されているか、口コミなどで可視化されるのはこれからかもしれません。でも今のところ、地元の方には受け入れてもらえてるんじゃないかなって感じています。
飯島:
毎日チラチラ見てるけど入ってこない人もいるよね。
山岸:
「2ヶ月間、毎日店の前を通ってたけど、今日初めて入りました」というお客さんが来たりとか、ずっと気にかけてくれてて、やっと入ってくれたなって方も結構多いです。
あとはファミリーが多い街なので、親子連れで来てくださるお客さんが意外に多くて。もともと親子で来てくれるお店にしたいなと思っていたんですが、全然来ない可能性も想定してたので嬉しいです。私の顔を覚えてくれている子とかも居て、道で声かけてくれたりするんですよ。めっちゃ嬉しいですし、そういうことが自然にできちゃうこの街の雰囲気がとてもいいなー!って思いますね。
飯島:
街に馴染む店でありたい、というのが根幹にあるので、それは嬉しいね。
――「街に溶け込む」が店舗デザインにも反映されていると聞きました。
飯島:
そう。街に溶け込むことが大前提で、かつ月島・佃東(つくだむかい)というこの地域が積み重ねてきた歴史を否定しないデザインであること。
例えば、細かいことですが、anataの外壁のピッチ(縦横サイズ)は店舗が入っている建物の外壁のタイルと同じピッチで作った木のタイルなんです。これは内装チームの案で、「街に溶け込む」っていうコンセプトを伝えたら、初期イメージとして出てきたもの。「これいいね」となって、このタイルは内装にも、店内中央の畳ベンチにも採用しています。完成した店舗を見てみると、外の道路から外装、店舗内部への視覚的なつながりが自然とできているなと思いますね。
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――渡邉さんもデザイナーですが、役割分担はどのように行われたのでしょうか?
渡邉:
僕は前職で店舗デザインの経験があったので、飯島の考えたコンセプトをもとに、欄間など内装のパーツやノベルティ、メニューや広報に使う紙もの(ショップカード、ちらし)、デジタルではサイトやバナーなどあらゆるものを制作しました。
といっても、初期の段階では、飯島のなかでも方向性は決まっているのに細部が固まっていない…的なところもあったので、一緒に手を動かしていくなかでanataのトンマナというか、デザインルールを組んでいった感じですね。
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紫の部分にも実は文字が隠されています
――苦労されたこともありましたか?
渡邉:
いわゆる普通の店舗デザインとは違うものが求められるので、その感覚をつかむまでが大変でした。
例えば、飲食店の看板って、シズル感ある料理の写真を大きく出して、とにかく目立たせるデザインが王道なんです。でも、anataの場合は、料理の名前も写真も出さずに店の魅力を伝えるというお題があり、その制約のなかでデザインとして成立させることが求められます。
通常のセオリーでは「足す」前提で作っていくところを、anataでは要素をどんどん削っていく……そのすり合わせというか、ちょうどいい塩梅を見つけるのに苦労しました。
例えば、この辺はまだ試行錯誤していた頃のデザインですね。
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この後から、どんどん白く、どんどん要素を省いて、シンプルな方向にシフトしていきました。
デザインするものが増えるごとに、新しいパーツや要素が必要になるので、その度に新しいルールを作って定義を作っていかなければいけない。そのたびに飯島と話し合って、飯島の言っていることを拾って…を繰り返して。結構バチバチにやりましたねぇ(笑)。
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特に、店舗の外装や内装とのバランスについては気をつけてデザインしていました。最近は自分のなかでかなり最適化したーー僕は「アナタナイズ」って言ってるんですが、そんなものが出せるようになってきたと思います。
オープンしてからは、イベントの告知物やweb掲載用の写真のレタッチが多いですね。
飯島:
彼のレタッチはすごいよ。勝てないもん。
山岸:
私たちがスマホで何気なく撮った写真でも、対外的に通用するクオリティに修正してくれるんです。通常の営業のなかでカメラマンを手配することはなかなか難しいので、彼のような技術を持ったデザイナーさんは本当にありがたいんです。
店舗デザインも一切の妥協をしたくないーークリエイティブエージェンシーゆえに抱えるジレンマ
――欄間しかり照明しかり、かなりの手間と費用をかけていますが、ひとつの飲食店にそこまで力を入れる理由は何でしょうか?
飯島:
我々はやっぱりやりたがりなんです。これに尽きるかもしれない。
信頼関係がある内装チームに依頼したので、仕事であってもお互いが楽しんで店づくりをすることができました。彼らは、通常は限られた予算で業務をするプロではありますが、気心知れた我々とは、「普段はできないアイデアを具現化したい」と思ってくれてるんですよ。我々が知らない知識をたくさん持ってるから、「これやりましょうよ」っていう提案がどれも魅力的なんだよね。
山岸:
うちのメンバーが好きそうなものや、予算感も分かってくれてるから、話が早いよね。
飯島:
ただ、ちょっと格好よくしすぎたかも(笑)。敷居が高い店構えになっちゃってない?
でも、これはもうしょうがなくて、デザイナーという職業の宿命だと思う。そもそもデザインは皆が幸せになるためにあるものだから、どうしても人間中心主義的な考え方になってしまうし、意味のないものは作れない。だから「街に溶け込むデザインとは?」を突き詰めてしまうし、尖ったものを作りたくなってしまう。
もう少し具体的にいうと、例えば焼き鳥屋さんから店舗デザインを依頼されたら、僕らは練りに練って尖ったクリエイティブを提案したくなると思う。それで焼き鳥屋のオーナーは喜んでくれても、その店に食べに来る一般のお客さんは「このお店、ちょっと敷居が高いかも」と思ってしまうかもしれない。攻めたアウトプットを世の中に投げかけたい一方で、わかりやすい見せ方をする必要もある……。toBとtoCでの最適解に微妙にズレがあるから、ジレンマは感じるよね。
山岸:
ただ、anataは興味を持ってもらえる外観にはなっているんで。何の店だろう?とか、中どうなってるのかな、という人も入ってきてもらえるのは、デザインチームや内装チームががんばってくれたおかげですね。
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――今後の展望について、教えてください。
山岸:
課題はフードのことですね。内装が完成したのが5月末で、急ピッチで6月6日にオープンしてしまったので、フードメニューを充実させたほうがよかったな、とか、もっとお客さん目線で使い勝手を想像してあげることが大事だったなと思っています。
フードが少ない店としてスタートしましたが、やっぱりお客さんの「欲しい」っていうニーズがあると実感していて。営業しながらいろいろな面をチューニングしている段階ですが、フードメニューの充実についてはスピード感をもって改善したいですね。
飯島:
ただ本格的にフードをやるとなると、当初のコンセプトとはずれてしまうからね。
山岸:
そうなんです。やっぱり、特定のスタッフに依存しない形にしたいなとは思っています。先日までは木谷さん(ホールスタッフ)がカレーを出してくれたり、私が時々「スナックれいな」としてカウンターに立ったり、スタッフが旅先で買ってきたおいしいものを「旅みやげコーナー」として販売したりとか……。いろんなコンテンツが店の中にあって、そこにフードもあるっていう形がちょうどいいかな、と思ってますね。
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9月2週目のメニューは「生キクラゲとキャベツたっぷりイエローポークカレー」でした
――今後も、あくまでフードでは勝負しないということですね。
飯島:
好きな店がたくさんあるんですよ、月島にも他の街にも。彼らがプロとして飲食をやっているところに、僕らがここで美味しいものを出してしまうのは違うんじゃないかと思うんです。
山岸:
私たちは競合になりたいわけじゃないので、その方たちがカバーできていないところで勝負しようってことですね。例えば月島の居酒屋さんではなかなか置いていないドリンクメニューも扱うような方向性を上手くアピールしていきたいですね。「フードは最小限だけどドリンクはたくさんある」とか「お通しがないから1杯で帰ってもいいんだよ」みたいな、このスタイルならではの気軽さとか。
飯島:
うちはそれでやっていこうってことだね。それが街に馴染むってことだと思うので、それはこれからも変わらないですね。
――長期的なビジョンがあれば、聞かせてください。
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山岸:
そうだな〜、20年後もanataがあればいいなって思いますね。
飯島:
営業を続ける限り課題がどんどん出てくるから、それに対応していけば「いい形」になっていくんじゃないかな。うん、なるようになる。
山岸:
今、「スナックれいな」や「ぷるめし」、「木谷食堂」などというかたちで、コンテンツ的にフードを提供しているように、いろんな人がやりたいことを試せる場にしたいですね。それで、長くストレスなく続けられるのが理想かな。
クラフトビールは今が過渡期で、醸造所がすごく増えていますが、10年後にはもう下火になってて「ビールなんて飲まない」なんて人のが多くなっているかもしれない。10年後は冷蔵ケースが半分ノンアルになってる可能性も全然あるわけで……
渡邉:
業態すら変わってるかもしれない。中華料理屋とかね(笑)。
飯島:
我々ももう年老いて、将棋クラブやってるかもしれない(笑)。
山岸:
最初のイメージとして、レストランとか居酒屋みたいなカッチリした飲食店ではないーーお客さんの側からしても、もてなされるのが目的ではない店だっていうのが大前提なんです。サービス面でも、ビールのおすすめはするけど、押し付けはしない。「私はこれがおすすめですが、違うものを選んでもいいと思いますよ〜」とか。このビールは酸っぱいとか甘いとか、事実はきちんと伝えますが、お好みでしたらどうぞ。というスタンスがanataのスタイルです。月島の地に溶け込みつつ、ほどよい距離感で長く愛される店でありたい。
駄菓子屋のように子供が気軽に立ち寄れるようにしたりするのも、その一環かな。ちょうど今は夏休みなので、地元のお祭りに合わせてかき氷を提供したり、オフィスエリアを開放したり、子供向けの工作イベントをやったりと、地域の方にとって「あるとうれしい」ことを自然にやっていきたいな、と。
飯島:
地元の人の憩いの場所であってほしいってのはきっと変わらないだろうな。店の確固たる意思として「街に溶け込む」ってのがあるから、それはそれでいいんじゃないかな。属人化せず、街の中の一つの「場」になっていたいね。
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ーーanataはすでに、地域に求められる一つの場として機能しているのではないかと感じました。
今回のスタッフインタビューでは、anataが生まれた経緯や本業とは別に飲食店経営を行うことの意義やメリット、nide Inc.が考える「街に溶け込む店舗デザインとは?」など、2回にわたり紐解いてきました。
実は、anataらしさを演出してくれている内装や照明、タンスなども、「街に溶け込むデザイン」のコンセプトのもとオリジナルで製作されたものたち。それらの製作秘話やこだわりについても、後日お伝えしていきます。ご期待ください!