第33回: シリア難民のために"島"を買った。 国連、難民支援協会は問題を解決する気はあるのか。
帰りた〜い 帰りた〜い あったかい我が家が待っている〜♪♪
積水ハウスのCMソングはどこか耳に残る。しかし、我々は帰るべき我が家がない人々も世界には多くいることを忘却してはならない。地球上の97人に1人が故郷を追われ、不自由な暮らしを余儀なくされている。いわゆる「難民」である。
⬛ シリア難民の苦境
"21世紀最大の人道危機"とまで形容されるシリア危機。元来は独裁体制を取るアサド政権への反乱だったが、それぞれに"東西"の国が後方支援として実質的に抗争に参加した。シリアは今や、世界を二分する巨大な台風の「目」なのである。
内戦の収束の目処は未だに立っておらず、人口の半数以上が国外へ避難、難民として生活を余儀なくされた。食糧支援や働き口を確保する自立支援など、関係各国やNGO・NPOは多くの人道的支援をシリア難民に施してはいるが、根本的な地位および環境改善には至っていない。
(写真: 難民キャンプ)
⬛ シリア難民のために島を買う
地球の宝石・地中海には多くの美しき島々がある。その中には無人島もかなり数が含まれており、手付かずの自然が観測できることは言うまでもない。
そのような状況を難民のために活用しよう、と提言したとあるエジプト人の富豪がいた。彼の名はナギーブ・サウィーリス氏。エジプトの巨大通信会社・オラスコム・テレコム(現: グローバル・テレコム)の元会長であり、同国最大の民間企業の長として、様々な活動を行なっている。
(写真: ナギーブ・サウィーリス氏)
同氏は地中海の無人島を購入し、そこで難民たちに新たな生活共同体を築いてもらう、という計画を打ち立てた。彼の見立てでは、イタリアやギリシャ領の無人島を活用すれば10万〜20万人の難民を受け入れる余地があるとしている。
最初期には一時避難所を建設、のちに学校や病院など、最低限度の文化的生活を営めるインフラ環境を整備するという。また、巨大企業グループを手中に収めるナギーブ氏はそこでの働き口も用意する準備があると語っている。
この難民国構想の実現の日は未だ訪れていない。その突飛さから多くの障壁があるだろうことは想像に容易い。かつてデンマークが受け入れ拒否された難民を一時的に匿う施設を無人島に建設しようとした際には、外国人を「隔離」するのか、と多くの批判が寄せられた。均すべき価値観はかなり堅固なように見受けられる。
(写真: 地中海の島々)
⬛ 支援団体に本構想の実現可能性と障壁を直接取材
日本にも多くの難民支援団体が存在する。そこで今回は、とあるNPOに直接取材を申し込み、ナギーブ氏の計画の実現可能性と、その道中に立ちはだかるであろう障壁について尋ねた。
すると、次のような回答が得られた(先方の要望により、団体名および担当者名は伏せて掲載する。)
仁大 噺志様
このたびは、○○○(団体名)にお問い合わせをいただき、
誠にありがとうございます。広報・支援者担当の○○(担当者名)と申します。
私個人の意見になりますが、無人島での難民の受け入れ、とても斬新なアイデアだと思います。
どのような生活環境を整えていく計画か、詳細がわかりかねますが、
難民の方々が安心して暮らせるようにするためには、多くの課題とそれを解消するための多大な時間を要するのではと思います。
シリアから無人島への移動手段、学校や病院の整備、働き先の確保や収入面等、さまざまな課題が挙げられると思います。
もし、これらの制度が整ったとしても、難民の方々はどう感じるでしょうか。
難民といっても、私たちと変わらない日常を過ごしている方々です。
お一人お一人、抱える状況や望む未来が異なります。
例えば、紛争から一刻も早く逃れたいという方であれば、
無人島での暮らしに魅力を感じるかもしれません。
一方で、子どもを学校に通わせ、安定した職に就かせたいと考えていたら、
無人島ではないほかの国への移住を望まれるかもしれません。
難民の方々にとって、無人島での生活を望む環境が整えられるのであれば、
難民支援のひとつになりうるのではと感じました。
○○○(団体名)としては、支援する側の実施したいことではなく、
難民の方が必要としていることを把握し、それに対して支援することを忘れずに活動をしております。
これまでも多くの難民支援を行ってきた団体の意見は、我々に想像以上の重みを感じさせる。特に末文の「支援する側の実施したいことではなく」という箇所は難民支援の重要な方針となるだろう。
支援を行うのは、決して裕福な者たちが自己満足するためでなく、あくまで望んでも祖国にいることのできない難民のためなのである。そこを履き違えてしまえば「お節介」ということになろう。
我々にとっても難民問題は対岸の火事ではない。支援や募金などは強制するものではないが、少なくとも彼らの現状を理解し、他者の支援の足を引っ張らないというのは同じく地球に生きる者の責務ではないだろうか。
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「シリア」難民のために「無人島」を購入しようと奔走する男の物語でございました。また、取材に協力してくださった団体様および担当者様、誠に有難うございました。
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参考文献
- gooddo: 『シリア難民の現状や生活は?内戦による被害や私たちができる支援を考えよう』, 2020年9月10日, https://gooddo.jp/magazine/peace-justice/refugees/895/
- SankeiBiz: 『エジプト富豪「難民国」構想 無人島購入、ギリシャなどに提案へ』, 2015年9月6日, https://www.sankeibiz.jp/express/news/150906/exd1509060001001-n1.htm
- 関根和弘: 『デンマークが無人島に移民収容施設を建設へ』, HUFFPOST, 2018年12月7日, https://www.huffingtonpost.jp/2018/12/07/denmark-migrants-remote-island_a_23611428/