呪術の弟子トリア 〜太陽〜
この村では、夏の間は、海に出て漁を行う慣しだった。ところが、ここの海は天候によっては、荒くなり、また、冬の間の荒波が削った岩場に舟が打ち付けられてしまうことが多かった。
「なぜ、あなたの漁がうまくいかないのか、考えてみたことはありますか?」
トリアは、神殿の下に開かれている市場で、人々に向かって声をかけた。
「それは、舟の形にシンボルがないからです。舟が、必ず戻ってこられるように、水面を泳ぐのが得意で魚を取るのも得意な、シャチのマークがいいでしょう。」
必ず戻ってこられる、と聞いて、神殿帰りの人々は足を止めた。
「シンボルがない舟は、神の御加護を十分に受け取ることができません。祈祷を行うのももちろんよいですが、そのご祈祷をより活かすには、舟にシンボルを彫ると効果があります。私の叔父は、シャチのシンボルを船尾に彫ってから、大漁になり、一家を十分に養うことができるようになりました。もうすぐ3艇目の舟を持つことになりました!」
おおお・・・聞いていた観衆からどよめきが沸いた。2艇目の舟を持つことができるのは、この村ではかなりの裕福な証だ。さらに集まった人々に向けて、トリアは続ける。
「シンボルは、神官達が行った御祈祷の内容に基づいて、決めていきます。あなただけのぴったりのシンボルです。」
ご祈祷に集まった人々は、トリアの話を聞いて、すっかり、自分の新しい舟にも自分だけのシンボルを彫ってもらおうと、隣で受付をしている弟のアシパの元に列をなした。ここで前金を受け取って、後から家に来てもらって、ご祈祷の内容を聞いてデザインを考えるのだ。
トリパの考えるデザインは、噂では、村で一番の知恵を持った先生と呼ばれる人から教えを受けているとも言われている。そして、その先生には、さらに村人が決して会ったことのない、どこか遠い地にいる師匠がいるらしい。そのためか、なかなかに造詣の深い紋様となり、彫ってもらった人たちはなかなか満足しているということであった。
太陽 双子座16度 熱弁する女性参政権運動家 5ハウス
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