高低差ありすぎて耳キーンなった異動の話からニコ☆プチの画期的事業について
サラリーマンにとって異動は避けては通れぬもの。ドラマ「半沢直樹」でも主人公・半沢が東京セントラル証券に異動(出向)しましたよね。
新潮社に入社して11年目の春、週刊新潮編集部でカラー写真ページのデスクを務めていた私、S木(エスキー)も異動を告げられました。
≪異動先 広告部(ニコ☆プチ担当)≫
長い人生、上り坂、下り坂があるのは知っていましたが、不惑まであと5年の年齢で直面した、もう一つの坂、“まさか”。
約8年間の在籍した週刊新潮の熱心な読者は50代~70代のシニア層。それが一転して、担当するニコ☆プチのメインターゲットは女子小学生です。この大きな変化の差に、
『いや、読者層に高低差ありすぎて耳キーンなるわ!』と、心の中で、後藤輝基さんがツッコミをいれました。
異端者?「ニコ☆プチ」
そんな異動の内示から約半年。「倍返し」をするよりも、気圧の変化と新部署にも慣れようと努めているS木が思うのは、ニコ☆プチという雑誌がとてもとても興味深い雑誌だということです。
私が敬愛するノンフィクション作家・清武英利さんの近著『サラリーマン球団社長』にこんなくだりがあります。
“どん底の会社や組織をひっくり返すような改革は、主流の人々よりも異端者や、冒険心に溢れた傍流の者によって成し遂げられることが多い”
まだ(たぶん)どん底には陥っていない弊社は世間的には文芸に強いお堅い出版社として知られています。
初代社長の佐藤義亮が秀英舎(現・大日本印刷)で働きながら出版事業を起こしたのが社の始まり。嘘か誠か定かではないですが、有吉佐和子の『恍惚の人』が大ヒットした資金で別館(㊦画像右の建物)を建てたなんて噂も。文芸系出版社ならではの逸話が社内のそこかしこに落ちています。
まだピチピチの新入社員時分、ある役員がこう語ったのも無理はないのです。「ウチの経営の軸は、新潮文庫と週刊新潮だ」
そんな歴史と伝統を殊に重んじる保守本流の新潮社ですから、ニコ☆プチ編集部は異端もしくは傍流の存在に見られることがあります。
つい最近まで会社近くのビルに編集部があったという物理的な距離もさることながら、ファッション誌を作っている編集部員がキラキラしていて、なんだか心理的距離を感じているおじさんも多々。
コロナ禍前から、ソーシャルディスタンスをとられていた雰囲気があるニコ☆プチ編集部ですが、行ってきた取り組みは、弊社にとって既存の枠組みから大いに逸脱したものが多いのです。
それを知った時、冗談でなく「これが新潮社にある編集部の仕事なのか!」とひっくり返りました。元寇の際に、モンゴル軍が使用した「てつはう」をくらった鎌倉武士くらい驚きました。
・・・とにかく、こう思いました。
社の中では傍流かもしれないが、時代の流れを考えれば、ニコ☆プチの方が主流を走っているのかもしれない
以下、社をひっくり返した(かもしれない)事業をご紹介します。
ニコ☆プチの画期的な事業展開
その① ニコ☆プチ ガールズコレクション、『プチ☆コレ』
本来ならば今年10回目の開催を迎えていたはずの、世界初(おそらく)の女子小学生によるガールズコレクションです。2019年開催時は、応募総数10833人から選ばれた、3283人がランウェイを歩きました。
潤沢な宣伝費を持たない編集部が、なぜ大規模なイベントを開催し続けられたのか。その詳細は、追々noteで話していこうかと思います。
その② 日本初の女子小学生向けフリーペーパ―、「ニコ☆プチPLUS」の創刊。
2019年11月から配布しているニコ☆プチPLUSは、未だデジタルに浸っていない小学生に刺さる誌面作りを行っています。
実際に読者アンケートをみても、自分専用の携帯を持っている読者は僅か25%ほど。デジタル時代の今日、最後の紙依存世代は小学生なのです。
TSUTAYAの一部店舗や各アパレルメーカー様店舗のほか、9月中は神奈川県下のすかいらーくグループでも設置していますので、ぜひ手に取ってみてください。雑誌並みのクオリティでビックリしますよ。
他にも、ライセンスビジネス事業、中国進出事業、マクドナルドのハッピーセット、ミニストップでのスイーツ開発など。社としては異例の取り組みを行ってきています。雑誌のみならず、様々な事業で収益化を狙っているのです。どうでしょう、カチカチの新潮社にしては、面白い編集部だとは思いませんか。
こうした事業を表で回すのが編集部。裏で動かしているのが広告部なのです。
あれ? 広告部の仕事って誌面のページに広告を入れてもらうことなのでは? と思う方も多いはず。そうなんです。私も耳キーンの時にはそう思っていました。
「確かにそれも大事な仕事の一つである」
とバリトンボイスで語るのは、私の横に座るニコ☆プチを担当して10年超の広告部員・K田です。
「広告部ニコ☆プチ担当の仕事とは、世に存在しなかった『ジュニア市場』を一から生み出し、開拓し、懸命に盛り上げてきた男の歴史なのである……」(K田)
中島みゆきさんの「地上の星」が流れそうな台詞ですが、今後、S木が約15年に亘るプロジェクトXならぬ、プロジェクトn☆pについて紹介していきたいと思います。どうぞよろしくお付き合い頂ければと存じます。
編集部制作のドラマ「カバーガール」
ちなみに、最近の編集部における取り組みで、S木の最大の驚きはドラマです。
なんと、オフィシャルYouTubeチャンネル「ニコ☆プチTV」で、ドラマ「カバーガール」が毎週金曜17時(キンゴ)に配信されているんです。編集部が一からドラマを作るなんて!
週刊誌にどっぷりつかっり時代に取り残されていた私からすれば、腰を抜かすほど先進的。出来も非常に良いので、是非一度ご視聴ください。
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