2023 双子座の言葉 ケン・ローチ┃答えを求めるのではなく、世界に好奇心を持ち、小さな疑問を拾い、問い続けていく
双子座の言葉
この連載を順序だてて書き進めてみると、本当に視点が変わるものなのだと改めて理解した。牡羊座と牡牛座の段階では、自分と自分を取り巻く環境(人や社会)との境界線があいまいな中で、自分をどう取り戻していくのかが死活問題のようなテーマだったわけだが、双子座になると急に視点が変わる。牡羊座、牡牛座である程度、自己存在というものを確立した後、今度は自分を取り巻く環境に俄然興味がわいてくるのだ。
双子座は、何はともあれ、まず「知りたい」というサインなのだ。理解したいのだ。市井の人々の生き様を通して、生きる力を、生き抜く方法を知りたいのだ。また家族、仕事、政治、社会を構成する要素、その在り方を理解したいのだ。外に広がる世界を知ることで、より自分を理解できるし、「なぜ」と問うことなく疑問をあいまいなままにしておくと、自分自身がおぼつかなくなってしまうのだ。
知る努力をしなければ、自分は存在していないのと同じことなのではないか。
双子座は、よく若者のサインと言われている。年齢でいうと小学生から中学生くらいの義務教育の段階。好奇心旺盛に世界を体験する年齢域が双子座にあたる。
「なぜ雲は白いの?」という子供のような単純な視点で社会を眺めたとき、あまりにも疑問符がつくものが多いことに驚くだろう。
なぜ生きるのか。
なぜ働くのか。
なぜ男女は不平等なままなのか。
なぜ格差はなくならないのか。
ケン・ローチは82歳の時に撮影した映画「家族を想うとき」についてこのように述べている。
82歳になっても、こうまで繊細に、こうまで新鮮に世界をとらえ、まるで当事者のように憤慨できるのは驚くべきことだ。
年を取ると、大抵は「まあ、そんなこともあるだろう」と諦めと惰性によって物事が見過ごされてしまうところ、ケン・ローチは労働者階級の小さな家族のささやかな日常を追いかけ、苦しいまでの現実を世に問おうとしたのだ。しかも、昨今、日本においても同じ問題(物流の2024年問題)が取りざたされているではないか。
最後に、対談相手の同じく双子座の是枝裕和の言葉を考えてみたい。
映画「家族を想うとき」のラストは、そういった意味で必見だ。映画のレビューに「竜頭蛇尾だ!」と書いている人もいたが、私はラストに非常に納得がいった。
実際、問題の解決などどこにもないのだ。労働も続くし、人生も続く。ただそれだけなのだ。そこにどのような納得のいく答えなどあるというのか。
双子座の目標は答えを求めるのではなく、社会を生きる人々に好奇心を持ち、小さな疑問を拾い上げ、それを問い続けることなのだろう。
私も自分の中の双子座と向き合いながら、世界に問いを投げかけ、自分なりの考えを持ち続けたいと思う。世界は「誰も知らない」で満ちている。私は、まだまだ何も知らないのだ。だからこそ、知りたいという熱意をもって、もう一度社会としっかり向き合ってみたいと思う。
ケン・ローチ(Ken Loach)
1936年6月17日生まれ。太陽、月、水星、金星、火星を双子座に持つ。
イギリスの映画監督・脚本家。
政治活動に熱心で、労働者階級や移民、貧困などの社会問題に焦点を当てた作品を製作している。『ケス』(1969年)は英国アカデミー賞作品賞と監督賞にノミネートされた。『麦の穂をゆらす風』『わたしは、ダニエル・ブレイク』パルムドール受賞。俳優の自然な演技を引き出し、リアルな状況を作り出すことを重視している。そのため、シーンは最初から順番に撮影し、時には即興演技に委ねたり、脚本製作時に結末を意図的に執筆しないことももある。– wikipedia より
是枝 裕和(これえだ・ひろかず)
1962年6月6日生まれ。太陽、水星を双子座に持つ。
日本の映画監督、脚本家。ドキュメンタリー出身の映画監督として知られ、国内外で高い評価を受ける日本人監督の一人である。実際の事件から着想を得た『万引き家族』で第71回カンヌ国際映画祭で最高賞となるパルム・ドールを受賞。テレビのドキュメンタリーディレクター時代から映画監督になった今も企画、脚本、監督、編集、すべて自らが行うスタイルを貫き、日頃から常に手帳を持っていてアイデアが思いついたら手帳に記している。撮影現場で発見した事を大事にし、役者のリアクションによってはその場で脚本を書き換え、役者同士の会話に耳を傾け、そのやりとりを脚本に加えることもある。– wikipedia より
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